複雑・ファジー小説

Re: 之は日常の延長線に或る【1/23更新】 ( No.38 )
日時: 2015/01/26 13:01
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: 4NhhdgqM)

 裏庭へ着くと綺麗な一本の銀杏が目に入る。こんな所にも立っていたのかと感心しつつ、我がクラスの顔ぶれを見ようと俺は首を動かした。

「はて……?」

一体どこに我がクラスの顔ぶれがあるのだろうか、寒さも合間って人っ子一人いない。
冷静に考えてみるとこんな寒々しく、なにもない所へどのもの好きが来ようと思うのだろうか。また御嶽は俺を騙したのか、憤慨の思いである。

「……あぁそう言えば、森を抜けろと言っていたな。うーん……あそこだろうか?」

裏庭の銀杏の木の間、丁度獣道のようになっている。その奥は確かフェンスで仕切られていて「Keep out」となっていたはずだ。俺がまだケツの青い時期に、ナキリと探険だと言って一度訪れた覚えがある。あの時は躊躇ったが、今思えば面白そうだったのに何故入らなかったのか、我ながら疑問の気持ちでいっぱいだ。

(きっとそこだろう)

俺はそう推測し足を進めるためそちらへと向き直った。最悪間違っていたとしても裏庭には誰もいなかったのだから、そう御嶽に言えばいい。なんなら迷子になっていたでもなんでもいい。

そう言えばこの様な所は久しぶりに通るのだが、ひっつき虫やらがつかなければいいが……だが今は心配している場合で無い。きっとこの獣道の先には新妻華笑さんがいるのだろう。真面目な彼女の事だから、集合より五分前にはその場にたどり着いているはずだ。風紀委員と言う訳の分らぬ組織に入れられ、昨日は居残りとついていない事が続いている。ここらで運気を上昇しておかなければ後々どうなることやら……。

要するに、彼女の顔を見れば運気が上がるそんな気がするのだ。勝手にそんな事を思いつつ、俺は草をかき分けた。草で多少手を切ったがいたしかたなし。そんな事、覚悟の上だ。痛くも痒くもない。