複雑・ファジー小説

Re: 之は日常の延長線に或る【1/26更新】 ( No.39 )
日時: 2015/01/26 13:12
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: 4NhhdgqM)

 少し歩いて思ったのだが……誰かが後ろからついてきているような気がする。二つ、三つか、否二つだな。一体どのような人物だろうか? まさか、変質者ではあるまい。変質者ならそいつはきっと相当の変人か、それとも変態か、兎に角俺を狙う事はありえない。
取り敢えず走る、そして急カーブ。振り返るとそこには——……無表情な少女と気の強そうな少女が立っていた。その少女達は同じ顔を並べてこう言った。

「貴方、零組?」

見事声をそろえて首を傾げるタイミングまでぴったり。あぁ之は俗に言う双子と言うものだろう。なかなか双子と言うのは御目にかかれないもので、拝みたくなるぐらいには珍しい。
暫く、返事の無い俺を訝しげに見ていた双子だが、片割れの気の強そうな少女はしびれを切らし、俺に詰め寄る。

「……ちょっと、返事しなさいよ」

水色……否、アクアマリンの瞳を俺に突き刺しながら批判的な声でそう言う少女、そこで俺はやっと返事を返すことにした。

「あぁ、俺は零組だ。名前は春山 昶。お前達はなにゆえ俺をつけてきた? まさか、用がその質問だけとは限らないだろう?」

質問だけならばもう開放してくれないだろうか。俺は遅刻が怖い。正確に言うとその後の御嶽のパシリが嫌なのだ。面倒事を全て押し付けてくる。奴の性格は蛇の道よりひんまがっていると見た。そいつに名前も顔も覚えられていると来たら、あぁ考えるだけで気だるい。
あぁもしかして、こやつらも零組なのだろうか? そう言えば視界の端にこの様な後姿を見たような…………見なかったような?
首を捻っていると、今度は緑、エメラルドグリーンの瞳の少女が今度は答えた。

「私も零組。私は西条 優奈。こっちは西条 皐月。……いきなり後付けたりしてごめんね。道がわからなかったの」

無愛想な声でそう言う少女は何処か遠慮がちに、否表情は変わらないのだが、何となくその様な感じに思う。こう見えても空気を読む力はあると自分で自負しているのだから、きっと彼女は慎ましやかな性格なのだろう。対象に、水色の君は白黒つけたいそんなパリッとした性格なのだろう。まぁ之は俺の憶測だ。事実は異なるやもしれぬ。

そんな二人の名は優奈と皐月、どちらとも西条だから下の名前で表記させてもらおう。
彼女達はどうやら本気で迷子になっていたらしい。仕方がない、年長者の俺が連れて行ってやろう。けしてロリコンとかそう言うものではない。誤解されてしまっては困るからな。断じて違う。どちらかと言うと同年代〜年上が好みだ、そして胸は大きい豊満とした方が好きだ。——否否、そのような事はどうでもいいのだ。彼女達は困っている。ならば手を差し伸べてやるのが人と言うもの。それが縁と言うものなのだ。

「俺が連れてってやる。どうせ、目的地は同じだろう? 御嶽は煩いからな、さっさと合流した方が身のためと言うものだ」

行くぞ、そう声を掛けると二人は後ろをついてくる。何だかか弱い小動物のように思えた、そしてこれから深く関わる事になるだろうと俺の第六感が告げている。
袖振り合うも多生の縁。
道端で出会う事も前世から決められていた事で、ここで無視してもそれも縁と言う事だ。ならば手を差し伸べてやるぐらい、どうという事も無い。俺に支障も損害も無いのだから。

 そうこうしている間に緑は晴れ、とうとうその場にたどり着いた。フェンス越しに我らが零組の顔ぶれが見える。昨日よりは人数が減っているが、そんなもんだろう。零組だからな、来る方が珍しいと言うものだ。
さて、後ろの二人は……そう振り返ると二人は目を輝かせ、辿り着いた事を静かに喜んでいるようだ。チラリと俺を見上げた二人はそのまま零組の中へと混じっていく。小さな声で「ありがとう」と言っていたのは、しかと聞き届けた。俺も彼女らに続くとしよう。
最後に御嶽がフェンス内へと入り、フェンスは閉じられた。なにやら大量の物資を持っている。一体、ここで何が行われるのだろうか? まぁ後々わかるだろう。