複雑・ファジー小説

Re: 之は日常の延長線に或る【第捌話更新 2/24】 ( No.70 )
日時: 2015/02/24 22:47
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: L1bEpBtf)

 授業も無事終わり、「筋トレ+グラウンドを10周」と言う馬鹿に脳筋な任務をこなした俺達は、解散のため並んでいた。
特に問題を起こそうとする輩も現れず、いつの間にか姿を消したさえを探すわけもなく、平和をただ等身大に迎え入れた事を心から嬉しく思い、いつしか時間は過ぎて行った。
時間が過ぎたと言っても、まだ3時を回るぐらいなのだが……まぁいいとしよう。
解散の後、放課後は久々に外をぶらついてみよう。繁華街など色物の所にはいかず商店街などどうだろうか? 暇つぶしには最適だと俺は思っている。

「……っとまぁ之で今日は解散ッ! くれぐれも問題行動は起こさず、健康的に明日を迎える事。って言ってもお前たちの事だから、聞いちゃいないんだろうが……」

御嶽はそう言って厳めしい顔を歪ませた。般若のような顔をしているが、きっとあれは悩んでいる顔なのだろう。
生徒は適当に笑って、頷いてからそそくさとフェンスから出ていく。人数が少ない分、込み合う事は無いが、御嶽と最後共に出ていくと言うのは遠慮したい為俺もさっさとその流れに紛れ込んだ。

「あぁ、そうだ。春山は出ていく前に報告しろよ。朝生徒は見つかったのか? 特にあの神宮寺 空悟とか言う餓鬼の事が知りたいんだが」

御嶽はそう言ってあの時の怒りを思い出す様に右上に眼球をやった。
やはり面倒な事になってしまった。出来れば怒りに触れたくない。愚痴を聞かされるのもなかなかに厭な事だ。どうにか無難に過ごせないだろうか……。

「報告、桜木 流星と思われる男と朝言葉を交わした程度です。では、これで……」

さっさと外へ出ようと早口にそう言ってフェンスの扉に手をかけたが、その手は御嶽に握られた。肉が引き千切れるのではないかと思うぐらいその力は強い。俺の脆い腕なんぞは瞬間的に青ざめていく。
怒りを孕んでいるであろう御嶽の顔を窺う根性なんぞ一切持ち合わせては居ない俺は、自分の真っ青な腕を見たままに御嶽に問いかけた。

「御嶽教官、少々力が強すぎやしませんか? 見て下さいよ、もう血の気が失せて真っ青ですよ」
「おぉすまん。あまりにも愛想の欠片もない報告で少し頭に血が登ったようだ。どうにも最近苛々することが多くてたまらん。……そうか、桜木がとうとうタワーに来たか」

おどけた口調でそう言った御嶽は反面、全くの笑顔もない顔でそう言った。あぁ相当頭にきているのだろう、先日の事が……そう思わざるを得ない。そう思わせてくれ。
そもそも愛想のある報告とは如何に? 全く以て想像つかない。報告とは事務的なものであり、俺は役割をただ全うしているだけだと言うのに、愛想を求める方がおかしい。
むしろ渋々でも任務をこなしている俺を褒めてほしいぐらいだと言ってやりたいぐらいだ。

「再度申しますが、報告は以上です」

ふざけて敬礼までしてやると、御嶽は恐ろしい笑顔で腕を握る力を強める。流石にポッキリ逝ってしまいそうだ。その力は俺には受け止められない。許容範囲を超えているのだ。

「まだ話しは終わっていない。お前の将来に関わる事だから心して聞けよ」

唐突に神妙な声色で言う御嶽。
将来? 一体何を話そうと言うのだろうか? 耳に痛い話しは聞きたくない。この年になって、これは少々子供っぽいかもしれないが人間なのだから仕方がない。
俺は一切将来の事を考えていないのだから。