複雑・ファジー小説
- Re: インビジブル 【オリキャラ募集中】 ( No.10 )
- 日時: 2015/03/29 04:36
- 名前: 雛 ◆iHzSirMTQE (ID: Bj/lm3Yj)
近くを通っていた何人かが異変に気づき、路地裏に様子を見に来ると悲鳴を上げその内の一人が慌てて警察と救急車を呼んだ。
良助は、その悲鳴で我に返り倒れた死体へ駆け寄る。
死体は首から上がなくなっており、溢れ出た血が路地裏から道路へと流れている。
遠くからサイレンの音が聞こえ、徐々にこちらへ近づいてきていた。
男は良助に近づくと、彼の手を掴み走り出した。
「うわっ!?」
良助は驚きながらも、抵抗できず引っ張られるがままに男についていった。
しばらく走り、人気のない路地に出ると男は走るのを止めて歩き出す。
「あ、あの……」
走って荒くなった息を整えながら、良助は恐る恐る男を見る。
男は黒いコートを着て、フードを目深に被っており顔は見えない。
彼は良助の声を聞き足を止める。
そして振り返ると男は良助の手を離し、彼を見据えて口を開いた。
「ごめんね、無理矢理引っ張ったりして。少し君と話がしたかったんだ」
男は優しい声でそういい、懐から黒いブレスレットを出す。
それは飾りの全くついていないシンプルなものだった。
良助はそれを見て不思議そうにすると、ブレスレットから男へ目を移す。
「君に、インビジブルを再開させてほしいんだ」
「へ……?」
男のその言葉に、良助は驚き目を見開いて固まった。
路地に彼の驚愕を含んだ大きな響き、やがて消え去り再び静寂が訪れる。
「な、何で僕がっ? ひ、人殺しなんて無理ですよ!」
「安心して、僕は君に創始者になってもらいたいだけなんだ。人殺しになってほしいわけじゃない」
良助は戸惑いながらも慌てて断り、後退りする。
男は、その様子に困った顔をしつつも言葉を紡ぐ。
「で、でも……創始者になるってことは、人殺しを雇うってことですよね……?」
「まあ、そうなるね。大丈夫だよ、それと同じブレスレットを持った子が助けになってくれるはずだから」
「えっ……あ、ちょっとっ」
男は良助の問いに頷くと、そう言って去ってしまった。
良助は溜め息をつき、手に持った黒いブレスレットを見詰める。
‘インビジブル’__その名前を知っている者は何人もいるが、実際に彼らを見たことがある者は一人としていない。
大分前からある暗殺屋のような組織で、依頼は何でもこなすらしい。
その組織は、完璧に依頼をこなすのに姿形も見えないことから、いつの間にかインビジブルと呼ばれていた。
しかし数年前に解散したとされ、その存在は月日の流れと共に風化していき、今では最早都市伝説となっている。
そんな都市伝説が今になって再び現れたと噂が広まっており、実際に被害者も出ていた。
勿論、良助もそのことは知っている。というより、彼はインビジブルのことを知ってから執拗に組織について調べていたのでインビジブルについては周りよりかなり詳しく知っていた。
「僕が……暗殺組織の、創始者に……?」
だからこそ受け入れ難く、受け入れることの意味と迫られた選択に悩まされていた。