複雑・ファジー小説

Re: インビジブル 【オリキャラ募集中】 ( No.11 )
日時: 2015/03/29 04:43
名前: 雛 ◆iHzSirMTQE (ID: Bj/lm3Yj)

 あの後、良助は路地を出て見慣れない商店街に入った。
幸い何人か人が通っており、彼は通行人に声をかけて道を教えてもらい家へ帰る。
もう日は完全に沈んでいて、暗闇の中に街灯の微かな光だけが辺りを照らしていた。
良助はその様子に気付き時計を確認すると、慌てて走って家に向かった。
「……? あれって……」
「あ、今晩は」
しばらくして、前に見覚えのある後ろ姿を見つけて良助は走る速度を落とす。
前を歩いていた少女、千代は髪を揺らして振り返り微笑み挨拶を済ませる。
その長く黒い髪は夜の闇と同化していて、彼女の肌はより一層白く際立っていた。
良助は挨拶を返すと、心配そうに千代を見る。
「瀬野さん、大丈夫? もう暗いし危ないんじゃ……?」
「大丈夫ですよ。……でも、少し怖いですね」
「じゃ、じゃあ僕、家まで送るよっ」
苦笑いして返した千代に、良助は勇気を振り絞ってそう言う。
普段あまり弱音を吐かず、何時も先人をきって皆を助ける側に立つ千代にとってはかなり新鮮なことだったが、彼女は良助を見て微笑み了承した。
二人はそのまま暗い夜道を歩き、他愛もない話をする。
人があまり居ず、静寂に包まれたその場所に二人の声が響いて消える。
良助はふと千代の手首を見て、驚いて彼女に目を移す。
「瀬野さん、それって……」
「ああ……。気づきましたか」
千代はそう言い、手首にあるものを見せる。
彼女の手首に着けられたそれは、街灯の光を浴びて黒光りしていた。
それは間違いなく、良助が先程男から受け取ったブレスレットと同じものだった。
「ま、まさかあの男の人が言ってた、助けになってくれる子って……」
「はい。多分私のことだと思います」
「なっ!? じゃあ……瀬野さんも暗殺者、なの?」
「いいえ、今は違います。ですがこれから、そうなります」
千代は微笑みを絶やさないまま、唖然としている良助にそういう。
彼は未だ千代の言った事を信じられないまま、男と会ってからのことを思い出す。
「瀬野さんも、男の人に頼まれたの……?」
「はい。仲間として、貴方を助けるように言われました」
「な、仲間って……」
良助はずっと冷静でいる千代に苦笑いを返す。
たまたま男の暗殺現場を見て、たまたま勧誘され、たまたま知り合いが仲間だった。
__果たして、そんな偶然が本当にあるのだろうか?__
良助はそんな疑問を抱きながらも、今あるこの状況をなんとか乗りきらなければならなかった。
「宜しくお願いしますね、鈴木君」
「ま、待って、まだ僕はやるって決めたわけじゃ……うわっ!?」
千代は良助が言い終わる前に、彼の手を引いて歩き出した。
夜の冷たい風が吹く中、二人は家とは逆方向へ、人気の少ない道を歩いて行く。
しばらくして、二人の目の前に倉庫のような小さな建物が見えてきた。
「あそこが、これからインビジブルの基地として使っていく場所です」
「えっ!? も、もう基地つくってたのっ?」
千代の言葉を聞いて良助は驚いて言い、目前の建物を見る。
見た目はそこらにあるような黒と灰色の倉庫のようなもので、ひびなどは入っておらずそれほど古くないように見える。
「私達を勧誘した男の人が事前に用意していたみたいです」
良助の言葉を聞いてそう説明し、中に他のメンバーが居ることを伝える。
インビジブルに勧誘された者は二人以外にもいたようで、それを聞いた良助は焦り出す。
「どうかしましたか……?」
「い、いや……。だって、その……瀬野さんは知り合いだったから、良かったけど……知らない人を雇うなんて無理だと思うし……」
彼はうつむいてそういうと、改めて創始者という立場がどれだけの責任を負うかを知らされた。