複雑・ファジー小説
- Re: インビジブル 【オリキャラ募集中】 ( No.15 )
- 日時: 2015/03/29 04:51
- 名前: 雛 ◆iHzSirMTQE (ID: Bj/lm3Yj)
「大丈夫ですよ。あの男の人からは、仲間は皆いい人だと聞いていますから」
千代はそういい、建物の前まで来ると良助の手を離して建物の扉を開ける。
中は外層とは違い、真新しい家具が多くあった。
黒い壁には小さな電灯が幾つか備え付けてあり、黄色い光で室内を照らしている。
壁と同じ黒色をした床には赤いカーペットが敷かれており、その上には白いソファーや黒いテーブルが置かれている。
ソファーは幾つかあり、黒い革製のものや沢山のウレタンチップが使われている柔らかそうなソファーもあった。
「あれ〜、見たことある顔だね〜」
ソファーの近くには木製の黒い椅子が幾つか並べられており、何人かの人間が座っていた。
その内ミルクティー色の髪をした少年が立ち上がり、ゆっくり良助たちに近づいてくる。
見た目は十代後半、良助達より背は高く整った顔立ちをしていた。
「り、淋桐先輩っ!?」
「……? 御知り合いですか?」
「えっ、あ……う、うん」
良助は少年を見て驚き、彼の名前を呼ぶ。
そして千代に問われて戸惑いながらも、苦笑いして曖昧に答える。
「僕は淋桐楓だよ」
「私は瀬野千代と申します。先輩なんですね」
淋桐と呼ばれた少年は、千代を見て微笑み名乗る。
千代は楓に微笑み返し、自分も自己紹介をする。
「あ、うん。でもまあ、気にしなくても良いよ」
「せ、先輩……どうしてここに」
「男の人に勧誘されたんだよー」
良助は戸惑いながら、未だ状況を整理できずに問い掛ける。
楓はさも当然のことのようにそう答え微笑みを返した。
「あの人先輩にまでっ……」
「んー? 貴方が彼の言ってた創始者君?」
「えっ!? あ、あのっ……ちかっ」
一人の女性が、良助の許まで歩いてきて更に顔を近づける。
彼女は目二十代前半で、赤い髪のショートヘアに薄い橙色の瞳を持っていた。
「貴女は……?」
「月瀬梢よ。私も楓君と同じく男の人に誘われて此処に来たの」
梢はそういい、隣にいた楓の頭を優しく撫でる。
その様子を見ていた良助は思い出し、慌てて自分も名乗った。
「良助君ね……。随分と若い子が創始者を任されたのね……」
「そ、それが……僕はたまたま、あの男の人の殺害現場を見ただけで……」
彼は、自分に創始者を務める自信がないことを素直に打ち明ける。
すると梢は微笑み、今度は良助の頭を撫で口を開く。
「良助君……。大丈夫よ、私たちだって素人なんだから」
「でも……」
「自信がねえなら逃げれば良いじゃねえか」
梢が慰める中、奥に居た男はそういい立ち上がって奥の部屋へ歩いていってしまった。
「…………」
良助はそれを見てうつむき、悔しそうに下唇を噛んだ。
* * *
僕は、今まで人の群れに埋もれて生きてきた。
だから今までは、先陣をきって進むことも、代表としてその役割を果たすこともなかった。
責任をとらなければいけなかったのはいつも代表の人で、自分とは全く関係ないと他人事のように目をそらしてきていた。
だから、こんなこと……僕には絶対に出来ない。
今まで活動を停止していた暗殺組織を再開させて、暗殺者を雇って彼らを纏めることなんて……僕には絶対に不可能だと思っていた。
しかし改めて他の人に言われると、かなり心に刺が突き刺さる。
__やっぱり僕には、何も出来ないのか……__