複雑・ファジー小説

Re: インビジブル 【オリキャラ募集中】 ( No.2 )
日時: 2015/03/29 04:06
名前: 雛 ◆iHzSirMTQE (ID: Bj/lm3Yj)

第一話「噂の拡張」

 春の暖かい日射しを浴びて、桜は綺麗に舞い落ちる。
その沢山の桜達に迎えられながら、幼さを残した学生達が入学を迎える。
「おっと……」
黒髪の少年は新入生達の波にのまれながらも体育館へ辿り着く。
彼はこれからの高校生活に不安と期待を覚えながら、興奮して校長の長話を聞いていた。
 入学式が終わり、各自教室に移動する。
少年は自分の教室が分からず焦っていると、彼に聞き覚えのない澄んだ声がかけられた。
少年が振り返ると、其処には腰までの長い黒髪をした綺麗な女子生徒がいた。
「同じクラスの鈴木君ですよね」
「えっ? あっ、えっと……」
「一緒に行きましょうか」
彼女は鈴木と呼ばれた少年を見て、微笑むと前を歩き出す。
鈴木はそんな少女に少し見惚れ、我に返ると慌てて彼女の後ろを着いて行った。

 教室に着き、二人は其々席に座る。
名簿順の席だったが、少女は丁度鈴木の後ろだった。
鈴木はそんな偶然に少し喜びを覚えながら、騒がしい教室内の様子を観察する。
知り合いの女子と話し盛り上がる者、早速初対面と仲良くなっているムードメーカー的な男子、教室の隅で静かに本を読んでいる者、初対面のクラスメイトに話し掛けようと様子を伺っている者、皆それぞれがしたいことをして己の世界を形成し始めている。
その中で浮いているのは鈴木と、その後ろで観察する彼の様子を観察している少女だけだった。
「そう言えばさ、あのニュース知ってる?」
「あー、夜道歩いていた人が誰かに殺されたって話?」
「そうそうっ」
「あのニュース怖いよなー、夜も怖くて歩けないぜ」
「はは、どうせ酔っぱらいか何かだろー?」
鈴木は女子の話を耳にして、興味深そうにそちらへ耳を傾けた。
周りの男子やいつの間にか作られたグループがその話を聞き、まるで伝染病のようにその話題について話し始める。
 一方鈴木の方は、皆のその話を夢中になって聞いていた。
彼はまるで何か面白い情報を手に入れるかのように嬉しそうにして聞き入っている。
そんな鈴木を見て、後ろの席の少女は興味を惹かれてずっと監察していた。