複雑・ファジー小説
- Re: 【リリアの目:更新】カタテマ【短編集】 ( No.13 )
- 日時: 2015/03/27 01:37
- 名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)
「だったらさっさとやっちまおう。あんまり長居してちゃ足が着くかもしれねぇ」
そう言っておじさんはズボンの後ろポケットからナイフを取り出しました。
ナイフの側面に映っているのは酷く怯えた表情のリリアです。
「あんまり小屋を汚さないようにしてくださいよ。なるべく証拠は残さないほうがいいですから。最低限の刺し傷だけ残して目をくり抜きましょう。あとは崖から落として事故を装う。村には年寄りしかいないのでこれだけすれば充分だと思います」
青年が冷たい目でリリアを見下ろします。その目は何人も殺してきたような濁った目をしていました。
おそらくこの人たちはそうやって生きてきたのでしょう。
「よし、じゃあやっちまうぞ」
鋭く光るナイフの切っ先がリリアに向けられます。
それからおじさんは何のためらいもなくリリアの心臓を貫きました。
リリアは叫ぶこともできず、ただ涙を流して死んでいきました。
虚しく死んでいったのに、相変わらずリリアの目は綺麗な紅色でした。
* * * *
「……こんなもんでいいだろ」
おじさんはナイフに付いた血を拭いながら言いました。
「ええ。目をくり抜くこともできましたし、行きましょうか」
青年は瓶に入ったリリアの目をじっくりと眺めます。
がちゃっ。
山小屋の扉が開く音に二人は警戒しました。
ドアがゆっくりと開きます。
ドアの向こうには木漏れ日に照らされたリリアが立っていました。
「え?……」
青年もおじさんも瞳孔を開いてそこにいるモノを刮目します。
リリアの体には傷一つなく瞼の裏にはしっかりと紅色の目が二つありました。
「そんな……だって目はここにっ」
青年はもう一度瓶の中身をよく見てみました。
確かにそれはそこにあります。
ゴキッゴキッ。
二人の視界はそこで暗転しました。
* * * *
「ただいま、おばあさん」
「おかエりなさイ、リリア。オソかったわネ」
「なかなか目当ての花が見つからなくて。ほらったった二輪しか見つからなかったわ」
リリアがおばあさんに花を手渡しました。
その花はリリアの目と同じように綺麗な紅色をしていました。
この花が枯れたのは四十年ほど先のはなしになるそうです。
完