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複雑・ファジー小説
- Re: 【カコノヒト:更新】カタテマ【短編集】 ( No.18 )
- 日時: 2015/05/21 01:15
- 名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)
ウサギの田中君参
「田中君何そのお弁当。いや、お弁当というか」
代わり映えのしない屋上の景色。田中君の手元には違和感の塊。
「人参だよ。僕の主食は基本これだよ」
「いや、あんた昨日までコンビニパン貪ってたでしょ。別に何食べても田中君の勝手だけど、せめて人参切るくらいはしなよ。生を丸かじりはどうかと思います」
田中君はウサギの被り物の口に人参を突っ込むとカリカリと音を立てて囓った。
被り物をしてても大抵のものは食べれるそうだ。
「それじゃあただの野菜スティックじゃないか。お、その唐揚げ美味しそうだね」
「ウサギが鶏肉食べるんですか。食物連鎖、おい食物連鎖」
そんなホラーなウサギは嫌だ。少なくとも私は認めない。
「相変わらず連れないなぁ。雑食なウサギがいたっていいだろう」
「田中君はそもそも種が違うから。田中君は愛玩動物です。可愛がってあげよう」
「お、おう……。何か照れるね」
「ウサギのクセに一丁前に何言ってるの。そろそろ教室戻るね!あ、この唐揚げあげる!」
私はあえて振り返ることもせずその場を走り去った。
「あっ……変な子だなぁ」
顔が熱い。きっと春の陽気のせいだ。
そう自分に言い聞かせて、私は階段を駆け下りた。
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