複雑・ファジー小説

Re: 【風の吹く街:更新】カタテマ【短編集】 ( No.26 )
日時: 2015/05/28 01:19
名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)

正直言ってこの街に来たばかりのスイレンのことは、よく覚えていない。
この街の学校に通っていればわかるだろうけど編入生なんて珍しいものじゃないんだ。
あぁ、また編入生か、ぐらいにしか思わないね。
どちらかというと卒業していく人の方が気になるんだ。
まぁ卒業ってものがどういうことかはわかるよね。
昨日一緒に授業を受けてた人間が急にいなくなるっていうのは少なからず寂しい気持ちになるからね。
手に入れたものより失ったものの方が確実に心に残るんだよ。

まぁスイレンは人気者ではなかったよね。
特に男子受けは悪かったよ。
基本的にドライな性格で素っ気ないんだけど女子いわくそれがクールでかっこいいらしい。
それが気に食わないらしくてスイレンはいつも一人でいたよ。

それから僕とスイレンは何の接触もしないまま一ヶ月が過ぎた。
丁度、四限目終了のチャイムが鳴って昼休みに入ったときスイレンは文庫本片手にどこかに行こうとしてたんだよ。
よく考えたら天気のいい日は毎日教室から出ていってる。
ふと僕はそれを見て、疑問に思ったんだ。

いつもどこにいってるんだろう。

初めは他のクラスの人と昼食でも取るのかなと思ったけど違うよね。
だってスイレンが誰かといるのなんて見たことないんだ。
となると何をしているのか……。
彼の行動が普段は眠っている僕の好奇心を呼び起こしてしまったんだ。

そして僕はスイレンのあとをつけることにしたんだ。