複雑・ファジー小説

Re: 【風の吹く街:更新】カタテマ【短編集】 ( No.27 )
日時: 2015/06/24 23:20
名前: R ◆0UYtC6THMk (ID: J9PmynZN)

今思えば僕はその時初めてスイレンをまじまじと見たんだと思う。
今でも廊下をだるそうに踏み潰していく彼の背中を見てデイダラボッチみたいだと思った事を覚えてるよ。
スイレンは僕の学年の中で一二を争うくらい背が高いんだ。
しかもガタイが悪いわけじゃないんだけど細身だから尚更デイダラボッチ感が出てたんだよね。

スイレンの後をつけて辿りついた先は屋上だった。
でも、うちの学校の屋上は出入りが完全に禁じられてたんだよ。
何年か前に物騒な事件を起こした人がいたみたいでね。
勿論屋上のドアは鍵がかけられてたよ。蹴破って入ろうものなら音で誰かに気づかれる可能性もあるだろうしね。
するとスイレンはおもむろにポケットに手を突っ込んで何かを取り出し始めたんだ。
遠目からだったけどはっきりとわかったよ。あれは鍵だ。
思った通りスイレンはドアを開けてその向こうへと入っていったよ。

僕は迷ったね。このまま帰っても良かったんだけど僕の好奇心は自分が思っているよりも強かったみたいだ。
僕は屋上がどういう作りになってるのかよくわからなかったけど一応スイレンに気づかれないよう、なるべく音を立てず、するりと屋上へと足を踏み入れた。