複雑・ファジー小説

Re: 【ペットボトルロケット:更新】カタテマ【短編集】 ( No.35 )
日時: 2017/05/04 01:15
名前: R (ID: WT.yDbwD)

【ペットボトルロケット】

少年達の夢が詰まったロケット。
一から自分達で作り上げたそれは、今思えばなんて不格好なモノだっただろう。

遠く、遠く、遥か彼方。
人の手では触れられないモノにさえ、届くような気がしていた。

夢だとか、希望だとか。
眩しいくらいにキラキラしたモノだけが彼らの瞳に映っていた。
綺麗なものだけを映した少年達の瞳は、ビー玉のような輝きを放つ。

ロケットだけでなく、吸い込まれそうな青空や少年達の全てが詰め込まれた街並み、川面、汗に反射する太陽の光、そして少年達自身。

全てがこの時間を果てしなく明るい光のカーテンの様に包み込む。

ただ少年達は知らなかった。
彼らはあまりにも無知で、だからこそ、輝きだけを放っていた。

少年がポンプを押す。
水圧と、期待と、鼓動が高まり、高鳴る。

さん、にー、いちっ。

カウントダウンが響き渡る。
息を呑み、少年達の周りから音が消える。

破裂音。

破壊音。

静寂。

ペットボトルで作られた拙いロケットは、空中で見事に分離した。

少年達は足元に転がる残骸を何も言わずに見つめていた。