複雑・ファジー小説
- Re: Endless Dream-A New Story- ( No.2 )
- 日時: 2015/02/21 22:20
- 名前: gazy (ID: nWEjYf1F)
ほんのりとした暖かみと、ふわふわした布が全身を包んでいる。
特徴的なこの2つの感覚だけで、今自分は布団の中にいるんだなと分かった。
——朝日が、閉め切られたカーテンの隙間から、冬独特の冷気と共に僅かに漏れている。
「んーっ」
布団に潜り込んだまま、うんと伸びをする。続いてその勢いで、枕元のスマホに手を伸ばして電源をつけた。
12月31日、日曜午前8時——電源を入れて最初に映るロック画面で、今日の日付と現在の時刻が表示される。
今日はお休みの日——というより冬休みの真っ只中だから、この時間ならまだ寝てても誰も文句は言わないはず。
特に予定もないし、宿題も片付いてるし、休み明けの課題考査もどうせ悪い点数にはならないだろうし。
——ガチャ。
「あら」
「?」
すると、不意に部屋の扉が開いた。
入ってきたのは、どこか大人っぽいお色気が印象的な雨宮里美さん。
——実際に大人だけども。
「早いのね」
「ううん。まだ寝るつもりだった」
「ふふっ、そう?」
——実は僕こと"天城浩太"は、頼るべき身寄りのいない孤児という立場にある。
元々身内や親戚が全く居ない独りぼっちなので、つい最近まで児童養護施設に預けられていたのだ。
両親がどんな人だったのかは顔と共に忘れて覚えてないから、何で僕に親戚も他の肉親もいないのかは知らない。幼い頃、そのうち迎えに来るなんて言いながら僕を施設に預けたっきり、結局は迎えに来てくれなかったのだから。
で、部屋に入ってきた雨宮さんは個人的なシェアハウスを経営している人で、そんな児童養護施設にいた僕を引き取ってくれた恩人とも言うべき存在なのだ。
雨宮さんのお陰で僕はやっと、少しかけ離れていても普通といえる生活が出来るようになったのだ。
本当に雨宮さんには感謝してもしきれない。
「でもそろそろ起きたら? もう他のみんなも起きてるわよ」
「んー、じゃあそうする。おはよー」
「はい、おはよう」
丁度良い感じに温い布団が恋しかったけど、みんな起きてるのなら僕も起きなきゃ気が済まない。
1つ欠伸をして、僕は枕を抱えて部屋を出た。