複雑・ファジー小説

Re: 古の秘宝-LIFE≠00-【キャラ募集開始】 ( No.17 )
日時: 2015/03/14 12:06
名前: キコリ ◆yy6Pd8RHXs (ID: nWEjYf1F)

 一方その頃。病院の屋上にて、小さな騒動が起きていた。
 恐らくは久島の手先なのか、黒いスーツに身を包んだ数名の男達は皆、久島の仮面と似たようなそれを装着している。
 そんな彼らと相対しているのは、ホストという単語がピッタリと当てはまる容姿の青年。
 白で統一された清潔感溢れる服は、たとえ夜でも多少の光で目立っている。

「西園寺零夜……」

 青年は、西園寺と呼ばれた。
 呼んだのは、スーツ姿の男達に紛れて姿を現した、青いチャイナドレスを纏う女性"浅野真由美"
 右手に扇子を持つ彼女は、それを開いたり閉じたりして弄んでいる。

「……なんだい? 生憎、ここはホストクラブじゃないよ」
「フフフッ、麗しき美青年と共に呷る酒も悪くない……じゃが、妾の目的はそれではないのじゃ」

 秋なら涼風となるも、真夏の夜に吹く風はどこか生温い。
 今この時、無風の真夏に風を起こしているのは自然ではなかった。
 正体は、上空でホバリングするヘリコプターであり、西園寺と相対する者全てが乗ってきたものである。
 そんなヘリコプターが起こす風は、この場にいる全員の髪や服の裾を、忙しないことこの上なく揺らしている。

「そなたが持つ癒しの力に、妾の希望を照らす光となってもらいたいのじゃ」
「希望? というかそもそも、どこでそんな情報を手に入れたの?」
「フフフッ、順を追って話そうではないか」

 畳んだ扇子を懐へとしまいこんだ浅野は、左手側を向きながら「ほれ」と呟いた。
 それに反応したのは、彼女の最も近くにいる一人の男。
 彼は予め足元に置いてあったスーツケースを手に持ち、それを西園寺の前に置いた。

「……お金でも入ってるのかい?」

 訝しげに問う西園寺。依然として、彼の姿勢は警戒してやまない。

「惜しいのう。金というニュアンスは強ち間違ってはおらぬが、正確に言えばカードじゃな」

 もし中身が書類で満タンなら、片手で持つには難しいほど巨大なスーツケース。
 その中に入っているものがカードだと聞いて、西園寺は更なる訝しげな表情を見せた。
 形の良い眉根はすっかり歪んでおり、浅野はそれを見て苦笑を禁じえない。

「ほれほれ零夜、良い顔が台無しじゃぞ。別に妾はそなたに危害を加えるつもりは無い。ただ取引を持ちかけてきただけじゃ。そなたは妾の説明を聞き、その取引に応じるか断るかを判断すればよい……」

 浅野がそう言っている間に、男はスーツケースを開けようと努力していた。
 ただ、よほど強力なロックが何重にもかかっているのか、解除に些か時間がかかっている。
 通常の鍵によるロック。ダイヤル式のロック。暗証番号式のロック。諮問認証式のロック。それらをやっと解除できたと思ったら、今度はまた違う諮問認証式のロックが出てきた。
 そこまで解除した男は、スーツケースより一歩退き跪く。代わりにやってきたのは浅野で、彼女が諮問認証を解いた。
 やがて、やっとの思いで開いたスーツケース。中には、本当にカードが一枚だけ入っていた。
 黄金比の黒いプラスチック板に、何やら金色の文字が綴られている謎のカード。
 英語の筆記体なので西園寺には解読できなかったが、彼にはどこか見覚えのあるカードに見えた。