複雑・ファジー小説

Re: 古の秘宝-LIFE≠00- ( No.5 )
日時: 2015/03/08 14:09
名前: キコリ ◆yy6Pd8RHXs (ID: nWEjYf1F)

 喫茶店を後にした二人は、当ても無く都会の真ん中をうろついていた。

 景気が回復した今、都会の喧騒は一昔前と比べて更に騒がしくなっていた。
 その活気はまるで衰える様子を見せず、逆に日に日に仕事人間が増えているかのようで、経済だけでなく活気のよさも右肩上がりと言ったところである。
 ましてや裏路地やビルとビルの間でさえ、携帯電話やファイルを片手に、仕事で彼方此方行き交うビジネスマンやオフィスレディーで溢れかえっているのだ。
 さらに行き交う人の殆どがスーツに身を包んでいるため、淑女宛ら上品な衣装を纏う香織と、家事をするにあたって便利そうな侍女の衣装を纏う姫野にとっては、忙しなく行き来する仕事人間が歩く周囲より若干浮いているために居心地が非常に悪い。
 度々目線がこちらに寄越され、物珍しそうな目で見られたかと思えば別の方向から同じような目線が突き刺さったり。
 落ち着ける場所と言えば、先ほどの喫茶店みたいな場所以外に一切無いのである。

「凄いっすね、皆さん」

 ただ、素直に感心できるだけの余裕はあるらしい。

「……えぇ。まるで、人口が半分減ったなんて嘘のようだわ」

 ふと、独り言交じりに零した言葉に嘘はない。
 それほどにまで、都会は喧騒としていてやまないのだから。
 きっと田舎は、こことは逆で更に過疎化しているのかもしれないけど——そう思うと、少し切なくなる香織だった。

「こーして見てると、みんなほんと危機感ないっすよね。誰が超能力者で、誰がいつどのようにして襲い掛かってくるかも分からないのに。みんな自分の将来ばかり考えて、目の前にある危険を忘れる——嘆かわしいっす」
「そうね。現に私達が超能力者ですもの……あら?」
「んー? どうしたんすか?」

 裏路地を歩くこと数分。
 香織は遠くに見える公園の中に出来た、少し規模の大きい人だかりに目が留まった。

「何事かしら?」
「なんか、真ん中で男の子が倒れてるみたいっすよ」
「貴方よく見えるわね……あんなにゲームやっておいて」
「視力の良さは自分の誇りですから」

 えっへんと言わんばかりに胸を張る姫野に対し、香織は完全なる呆れ顔である。

「そんなことで胸を張らないで頂戴。ただでさえ小さいというのに」
「よ、余計なお世話……っていうか、自分より小さいお嬢にだけは言われたくないっす! そんなことより、ちょっと様子を確かめに行きましょうよ」
「そうね。あんまり危ないことに首を突っ込むのは気が引けるけど、もしかしたら例の事件が関係しているのかもしれない」

 二人は歩く足を速め、さっさと公園の傍まで歩み寄った。