複雑・ファジー小説

Re: 古の秘宝-LIFE≠00- ( No.6 )
日時: 2015/03/08 18:50
名前: キコリ ◆yy6Pd8RHXs (ID: nWEjYf1F)
参照: このページのお話が一部、何時ぞやの自分と激しくデジャヴな件w

 目が覚めたとき、そこは病院だった。
 特徴的な薬の臭いで目を覚ましたものの、目蓋を含め全身が重い。
 まるで鉄の衣服——いわば鎧を着ているかのように。

「目、覚めた?」

 ベッドで仰向けになっていると、右手側から女性の声が聞こえた。
 恐らくは看護婦なのだろうと思い右を見れば、予想通り桃色のナース服に身を包んだ女性の姿が視界に映る。
 しかし、焦点が合わない。ぼんやりとしか、女性の姿を捉えることはできない。
 ただ無駄に胸が大きいことと、笑っていることしか認識できずに居る。
 そんな豊満な胸の持ち主は、右手の指を3本立てて見せた。

「これ、何本に見えるかな?」
「……?」

 しかし、ベッドの上で呆けている少年には、3本立っている筈の指が6本に見えてしまったらしい。

「……何で指、6本もあるの……」
「あら。こりゃダメね」

 看護婦は苦笑と共に屈めていた上体を起こし、カルテを手にとって何やらボールペンを走らせた。
 まるで速記者のような手の動きだが、書かれていく文字一つ一つは、芸術的と思えるほどに整っている。

「……」

 少年はボンヤリと、看護婦の手の動きを眺めていた。
 到底自分には真似できない動き方である。
 どんなに簡単な文字を書くにしても、残像が見えるほど素早い看護婦の手の動きにはとてもついていけない。
 カルテの向こう側で、どのような字が書かれているのかは知らないわけだが。

 ふと手の動きが止まる。
 看護婦が、少年の瞳をじっと見返していたのだ。

「どうしたの?」
「……」

 気付けば焦点も合うようになってきた。
 身体が重いことに変わりはないが、先ほどと比べて、幾らか意識がはっきりしていることが自分でも分かる。

「姉ちゃんの指、3本だった?」
「意識がはっきりしてきたみたいだね。そう、私の指は3本だったよ」

 またカルテへと視線を戻し、相変わらずの速さでボールペンを走らせる。

 少年は周囲を見回した。
 ベッドが自分の寝ているもの1つしかないところを見ると、ここは特別病室の類なのだろう。
 しかし、病室の割には無駄に広い。目算でも8畳間くらいはありそうな、とても広い部屋である。
 床は絨毯、カーテンは紫、壁紙は水色と、部屋のインテリアもまるで他人の自宅のようである。
 所々医療キットらしきものが置いてあるが、病院独特の白が、ベッドのシーツ以外に一切見当たらないのだ。

「はい、これ」

 気付けば看護婦は、また少年のほうへと向き直っていた。
 先ほどまで持っていたカルテはどこへやら、右手に握られているのは謎の鍵が一つだけである。

「これ、多分君の持ち物だと思うから、大事にしておくこと」
「……」

 少年は鍵——の先に見える、看護婦の胸に目が行っていた。
 ベッドの上にいる少年と目線を合わせるべく、看護婦が身体を屈めるのだが、その際に余計に胸が強調されるのである。
 年齢は13歳といえど、やはり少年も男なのだろう。

 ——すると、少年の目線に気がついた看護婦は、僅かに頬を赤らめながら悪戯な笑みを浮かべて見せた。

「そんなに私のおっぱいに興味があるの?」
「……うぇえ!?」

 我に返った少年は一気に頬を真っ赤に染め、看護婦から鍵を引っ手繰り、目線を180度反対側に向けた。

「な、何でもねぇ! ほら、鍵なら俺が預かったから!」


 ————この時渡された鍵を勢いで受け取ったことを、後程少年は酷く後悔するのであった。