複雑・ファジー小説
- Re: CHAIN ( No.1 )
- 日時: 2015/03/25 02:17
- 名前: えみりあ (ID: oBSlWdE9)
第1話:WHY FIGHT
犯罪組織『アダーラ』
もともと国ではなかったそれは、27世紀ごろに出現し、発足から数十年で確実に支配地域を広げ、周辺諸国との領地をめぐる攻防戦が繰り広げられた。
そして、彼らにより、最も打撃を受けたのは、あろうもことか先進地域ヨーロッパだった。
混乱に見舞われた諸国は7つの大国に吸収され、7カ国は軍事同盟『WFU』を締結。『アダーラ』に対抗する世界最強の組織となった。
早期収束を見込まれたこの戦争は、その予想に反し、200年に渡り続いていた。
+ + +
「カルタゴより、マクシム・ブラディです」
その部屋にあったのは、円卓とそれを取り囲む7人の人影、中央には立体映像が浮かび上がっている。マクシムと名乗ったのは、その立体映像だった。がっしりとした体の上に、黄色を基調とした軍服をまとい、その姿は獅子を容易に連想させる。
「定刻通りの報告だな。全員上陸したのか?」
7人のうちの一人が口を開いた。荘厳な面持ち、左目の戦傷、そして上質なマントの下にはマクシムと同じ軍服を着用しているのがわかる。
ここにいるのは、7カ国各軍の将軍。ルテティア将軍 グェンダル・ドゥパイエは、この青年が自分の直接の部下であるために、他国を差し置き、自国を中心に話を進めようとしている。
「は、各名別々のルートでカルタゴに上陸しましたが、アルビオンのみ合流が遅れております」
マクシムの言葉にわずかばかり顔を歪めたのは、アルビオン将軍 リチャード・ローパー。7将軍の中では最も若く、ブロンドの髪も、瑠璃色の瞳も、女性ならば誰でも目を奪われるほどに美しい。しかし、その若さゆえに、後ろ指を指されることは少なくなかった。
「やっぱり、本作戦におけるアルビオンの選出は適切でなかったのではないですかね?」
「その通りでしてよ。今回の作戦は『アダーラ』チュニジア支部長官の暗殺。確実に任務を成功させられるよう、混乱を避けるため、各国から選りすぐりの兵士を1名ずつ集めた少数精鋭部隊を結成しようというのに」
「確か、アルビオン代表はまだ未成年だったな。まったく、精鋭の選出は慎重に……」
矢継ぎ早に、リチャードへの非難が寄せられた。みな、己が国の名声のため、周りを蹴落とすことに必死なのだ。
しかし……
「お待ちなさい。そうアルビオン一国を責め立てなさるな、諸卿」
それを打ち切らせる者がいた。気分を害されたグェンダルは顔をしかめる。
「……何か考えがあるのか、ノルトマルク将軍?」