複雑・ファジー小説
- Re: CHAIN ( No.37 )
- 日時: 2015/08/28 22:35
- 名前: えみりあ (ID: TeOl6ZPi)
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コペンハーゲン ユトランド軍本部
アーノルドの部屋に集められていたのは、この国きっての精鋭たち。ユトランド四強と恐れられている4人である。
「……という訳なんだけど、次の任務、誰か行きたい人?」
アーノルドは茶目っけたっぷりに聞いた。素直に手を上げる者は居なかったが。
「US認定者がだめなら、俺はいけませんよね?」
「目標は殺せないんだろ。だったら俺の専門外だ」
「すみません。その日、病院の予約入れてて……(嘘)」
「…………」
アーノルドは深くため息をついた。
「……じゃ、悪いけど、サッくん。頼めるかな?」
アーノルドは苦笑いでサクの方を向く。ヴィルヘルムはいいとして、あとの二人はあからさまに面倒くさそうな顔をしていた。とても頼める状態ではない。サクは無表情のまま首を縦に振った。
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「シルビアちゃん、ラウル君」
バレンシア ヒスパニア軍本部
トーンの高い声でシルビアたちを呼びとめたのは、ヒスパニア軍将軍 セレドニオ・ドローレス。中年男性のはずだが、女性のような細身で、身長もシルビアより低い。ブルネットの髪は女性のショートカットぐらいの長さで、癖がある。前髪は中央で大きく分けられ、その下からのぞく眼は、まつ毛の長い女性らしい眼をしていた。
「次の任務はね、捕縛任務なのよ。今回はどっちが行くか、決まっているかしら?」
ついでに口調も女々しい。しかし彼は、妻子持ちのれっきとした男……のはずである。
「……今回のアルビオン代表は誰ですか?」
セレドニオに聞き返したのは、眼鏡をかけた青年。美しく切れ長な目をしているが、眼鏡のおかげでその鋭い眼光がおさえられている。背はシルビアよりさらに高く、モデルのような体型をしている。髪はぺたっとした赤毛で、シルビア同様、右前の横髪をグレーに染めている。
「もう。ラウル君ったら、毎回それね。今回のアルビオン代表はマーガレットちゃんよ……」
セレドニオが言うが早いか……
「シルビア、今回こそ、僕が任務に行かせてもらうよ!」
彼女に向って宣戦布告をしていた。
「あら、ラウル。私に勝とうなんて100年早いわよ」
バチバチと火花の散る音がする。見かねたセレドニオが仲裁に入った。
「まあまあシルビアちゃん。2回も任務に行ってきたんだし、そろそろラウル君に代わってあげたらどうかしら?それに、マーガレットちゃんとラウル君のコンビは、捕縛に関しては天下一よ?」
「でも、将軍……」
「ありがとうございます、将軍!」
ラウルはもうすでにその気になっている。セレドニオがシルビアにウィンクを送ると、シルビアも観念したように溜息をついた。
「じゃあ、頼んだわね。ラウル君」
「はい、喜んで!」
ラウルは満面の笑みで答えた。二人は知っている。ラウルの笑顔の理由は、ヒスパニア代表に抜擢されたからだけではないことを……
