複雑・ファジー小説
- Re: CHAIN ( No.39 )
- 日時: 2015/03/24 00:46
- 名前: えみりあ (ID: 1SUNyTaV)
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数日後 トルコ イズミル
エーゲ海に面し、大規模な施設を兼ね備えた都市。付近には古代遺跡も散立し、古くから港湾都市として栄えていた。
この地に敵将を捕えるべく上陸したのは、精鋭6人……と一匹?
「サッくん、かわいい〜」
「もふもふしてます〜」
両側からマーガレットとリディアに抱きしめられ、白い毛皮の狼はくすぐったそうに、そして若干幸せそうに、目を細めた。
円卓会議によると、サクは最も感覚が優れた軍人と評価されているらしい。理由は単純に、完全な人間ではないからである。
サクの身体には、ツンドラオオカミの遺伝子が組み込まれている。ホルモン注射をすることにより、そのバランスが乱れ、白銀の狼の姿になることができる。人間として未成年のサクは、狼の姿ではまだ幼獣である。この見た目も、サクがユトランド軍……特に女性に人気のある理由の一つだ。
他の男性陣は、うらやましそうな目で三人を見つめていた。
「マーガレット嬢、リディア嬢!これでは、サク殿が動けぬではないか!」
見かねたエリカが、とうとう大声を張り上げた。腹の底から出したような声で、二人に注意している。
「エリカ。ごもっともな意見だ、よく分かった。だからもうちょっと声のトーンを下げてくれ……」
どなり散らすエリカに、マクシムは必死な表情で頼み込む。
ここはもう、敵の陣地だ。下手に動けば、ハチの巣にされる。
「む、これは失礼致した!あい分かったぞ、マクシム殿!」
「言ってるそばから……」
どうやら、彼女は地声がでかいようだ。マクシムは、これ以上話しかけると、かえって危険だと判断した。そっと彼女から離れ、ユリアンのもとによる。
「……なんだか、小学生の引率になった気分だ……」
「……しょうがない。今回は平均年齢が低すぎる……」
二人は苦笑を隠せず、そろって肩を落とした。
