複雑・ファジー小説
- Re: CHAIN ( No.45 )
- 日時: 2015/04/03 17:13
- 名前: えみりあ (ID: fTO0suYI)
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アテナイ トゥルチャ
日が沈んだ頃、精鋭部隊が任務を完遂させ、たった今出港したという知らせが出回った。リディアとマーガレットが負傷しているという情報も同時に。
「リディア……」
ソティルはまた、悲しそうな目で黒海を見つめていた。
「どうして貴女は……こんな無茶を……」
そう呟き、胸元を押さえる。ソティルは、胸がはちきれそうに苦しくなった。
「自分は……まだ、貴女と共にいたいです……」
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拘束したドルキを乗せ、船はイズミルを出港した。ユリアンは、気絶しているマーガレットを、彼女の船室に運んだ。こうして二人でいると、ポトカルパチェの夜を思い出す。
マーガレットの部屋に入り、彼女をベッドに横たえた。あまり関心のできることではないが、ついつい部屋の中を見回してしまう。机の上には、海図と軍務書類が広げられ、分厚い医学書を文鎮代わりに使っている。勉強熱心な様がうかがえる。
船内に持ち込んだ私物は、女の子らしく、可愛らしいものが多い。ピンクや白などを基調に揃えられている。ビアンカの部屋とどことなく似通っていて、実家の家を思い出した。
ふと、ベッド横の棚が気になった。目覚まし時計の横に写真立てが置かれている。その写真の前には、一対の指輪。
写真の中には、中学生ぐらいの男女が、中睦まじく写っていた。片方は、マーガレット。今よりさらに幼くて、髪の毛を背中まで伸ばしている。もう片方は、目つきの悪い黒髪の少年。マーガレットの隣で、照れているように見える。
ユリアンは、おそるおそる指輪を手にとる。両方とも名前が彫られていた。片方には『マーガレット・チェンバレン』。そしてもう片方には……
「ん……」
マーガレットが寝返りを打った。目を閉じているが、口を開いていた。また、寝言を言いそうな顔だ。
「……う……ジュ……リ……アン……」
今度ははっきり聞こえた。そこでようやくユリアンも理解した。
居てもたってもいられなくなり、マーガレットの部屋を飛び出す。
あの夜、マーガレットがうわごとで呟いた名は……
———違う……俺は、ジュリアンじゃない……!
ジュリアン・モリス……もう片方の指輪に彫り込まれていた名前だった。
