複雑・ファジー小説
- 第11章 ~ルチカside ( No.118 )
- 日時: 2015/07/08 22:47
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
[第11章 ~ルチカside]
おうちを買って、一ヶ月が過ぎた。
私だけの部屋を与えてくれた。寝るときは一人で最初は寂しかったけど、今は慣れた。
畑で野菜や果物を育てたり、料理の手伝いをして過ごしている。
料理はセージ様に教えてもらって、オムレツを作れるようになった。
セージ様はふわふわの半熟が好きみたいだから、もっと練習して上手くなりたい。
今はホットケーキの練習中。ひっくり返すのがちょっと難しいな。
エリックさんとミシェルが勉強を丁寧に教えてくれる。
エリックさんは私たち獣人を差別しない優しい人。セージ様は「ちょっと危ない人だよ」っていうけど、どこも危険を感じない。
ミシェルはとても綺麗で優しいフェネックの獣人。教えるのがとてもうまい。
私とセージ様とサイトの名前が書けるようになった。
サイトは勉強が苦手みたいだけど、全然嫌な顔をしないで教えてくれる。
ミシェルはサイトのムキムキに憧れてるんだって。私はミシェルはそのままでいいと思うんだけどな。
私たちが読めるように、絵がいっぱい書いてある本を持ってきてくれた。
「気に入った?」
「うん!絵がとっても綺麗ね」
これなら私も読めそうだ。ミシェルはニコッと笑った。
「よかった。君にこの本貸すよ。勉強に使ってね」
この本はとても高そうだ。私なんかが持っていていいのかな?
「いいの?」
「家にたくさんあるからいいよ。他の本もまた次のときに持ってくる」
「ありがとう!」
ミシェルから本を貸してもらった。
エリック様によると、私は魔法を少し使えるらしい。
字が読めたらミシェルに教えてもらうつもりだ。
「ルチカはセージ殿のことが好きなんですね」
エリックさんにそう言われたので、「はい!大好きなんです」と答えた。
エリックさんは「そうなのですか」とニコニコ笑っていた。
たくさん勉強して、セージ様のお手伝いするんだ。
セージ様はいつも忙しそうだから、役に立てたらなって思う。
軍隊の獣人とも仲良くなった。
最初は軍の獣人だったから、怖いと思ったけど、マーティとネスカと仲良くなれた。
マーティは馬の獣人でのんびりしてる。仕事のことや町のできごとを色々話してくれる。
今、マカロンがスゴく人気で神様の食べ物って言われているんだって。
ネスカは犬の獣人。『なのよ』をよく語尾につける。
今は毎日笑って過ごしている。
とっても幸せだなあって思う。
安全な場所、美味しいご飯、大切な仲間たち・・・・・・
でも、セージ様はもっと幸せにしてくれる。
今でさえもう充分すぎるほど。
なのに、心のどこかではもっと欲しいと願ってしまう。
- 第11章 ~ルチカside ( No.119 )
- 日時: 2015/05/02 13:30
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
そんなある日、セージ様が人間の子供を引き取った。
盗賊をやっていてセージ様の家に忍び込んだのに、セージ様は暖かく受け入れた。
セージ様はとても心が広い。
「仕事が見つかるまではうちで預かるつもりだよ」と言っていた。
皆がちゃんと生活できたらもっとこの国がよくなるんだって。
セージ様はこんなに先のことまで考えているんだ・・・・・・。
「戦争も起こらなくなりますか?」って聞いてみたら、「その可能性もある」って答えてくれた。
もし戦争がなかったら平和に暮らしていたけど、セージ様と出会えなかったと思う。
その子は【ツバサ】っていう名前を付けられた。
どこでも羽ばたけるようにっていう願いを込めたらしい。
ホントはセージ様の名前の一部を取ろうかと考えていたんだけどやめたんだってさ。
セージ様に名前をつけてもらえるなんて羨ましいな・・・・・・。
しかも名前にちゃんと意味を考えられていたなんて。
ツバサはセージ様とよく話している。
今は二人とも朝食のあとの掃除をしている。
「翼、そこ食べかすがまだ残ってるぞ」
「細かいな!だからその年になっても結婚できないんだよ」
「はあっ!?お前、今のセクハラだぞ」
ツバサはセージ様に敬語を使わないけど、セージ様は怒らない。
いいなあ、楽しそうだなぁ・・・・・・。
セージ様はツバサと仲良くするようにと言っていた。
ツバサは私に暴力を振るったことはない。
でも、私まだ人間が怖いよ・・・・・・。
サイトは「おつかれさん」とか「元気か?」ぐらい話す。
私も頑張って話しかけないと。
えっと・・・・・・まずは「おはよう」から言えばいいのかな?
それから?うーん・・・・・・。
セージ様は「じゃあ俺2階掃除するから」と言って、階段をあがっていっちゃった。
ツバサはそのまま床を拭いている。
どうしよう・・・・・・。セージ様が近くにいたら挨拶できるかもしれないのに。
でも、セージ様がいなくても頑張らないと。
「ツ、ツバサ」
ツバサに声をかけると、振り向いた。
体が震えてしまう。ツバサは顔をしかめる。
「なんだ?」
私がもたもたしてるからイライラさせちゃってる・・・・・・。
早く言わなきゃ。
「お、おはよぅ・・・・・・」
すると、ツバサはキョトンとした顔をした。
「ん。あぁ、おはよう」
やった!!挨拶できた!
ちょっとだけどお話しできたよ!
でも挨拶だけはちょっと気まずいよね。『手伝おうか?』って言ってみようかな。
「あの、て・てぇっ・て・・・・・・」
声が上手く出せない。
「なんだよ。用があるなら早くしろよ」
「天気いいね!」
違うこと言っちゃった・・・・・・。
困ったときは天気の話をしろってセージ様の言葉思い出しちゃった。
ツバサは頷く。
「そうだな」
そして、視線を落として再び床を拭き始めた。
私は恥ずかしくなってその場を逃げてしまった。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【おかげさまで参照1500】 ( No.120 )
- 日時: 2015/05/02 20:10
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
挨拶だけでもできてよかった。
声をかけてわかったことだけど、ツバサはそんなに怖くない。
今度、ちゃんと『手伝おうか?』って言えたらいいな。仲良くできるかな?
いつかはセージ様みたいにいっぱい楽しいお話できたらなぁ・・・・・・。
セージ様のところにいくと、階段のところで座り込んでいた。
休憩かな?
「セージ様、どうしたのですか?」
セージ様は顔をあげる。
なんかいつもと様子が違う。
「あぁ、なんか体が気持ち悪いんだ・・・・・・。さっきまでなんともなかったのに」
大変!
私たちはできないことが多すぎる。それをセージ様が全てやってしまう。
きっといつも頑張っているから、疲れているんだ。
「大丈夫ですか!?掃除は私がやりますから、セージ様は休んでください!」
セージ様は力なく頷く。
「わかった、そうする。ありがとう」
なんだか声の調子もおかしい。
フラフラと立ち上がって少し歩いて・・・・・・
倒れてしまった
「セージ様っ!?」
私は駆け寄る。
セージ様は口を押さえて苦しそうな顔をしている。
口を押さえたまま立ち上がって、私に何もいわないでトイレに一目散に走り去った。
セージ様と入れ替わるようにツバサが駆け寄ってきた。
「どうしたんだっ!?」
「セージ様が・・・・・・倒れたの」
「えっ、さっきまで普通だったよ」
トイレからセージ様の苦しそうな呻き声と水音が聞こえた。
どうしたんだろう・・・・・・。
しばらくして、セージ様はトイレから出てきた。
「わりぃ・・・・・・。
なんか俺、あたったぽいわ。トイレは綺麗にしたけど、なるべく使わないでくれ
それと、お前らも体調が悪くなったら言ってくれ」
その声はさっきより弱々しくなっている。
顔色も悪くなってるし・・・・・・。
ツバサは明るく言う。
「俺たちはセージと違って丈夫だから大丈夫だって。セージは今日は自分の部屋に行って休んでろよ」
「うん、今日はそうする。明日、エリックさんが来るからそのときに魔法でなおしてもらうよ」
そういってセージ様は自分の部屋に入っていった。
いつもセージ様に助けられているんだもん。
今日は私たちが助けなきゃ。
- 第11章 ~ルチカside ( No.121 )
- 日時: 2015/05/03 11:35
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
私はセージ様が倒れたことをサイトに報告した。
サイトは畑で草むしりをしているところだった。
「旦那が倒れたのか!?本当か、それは」
「うん。今日は寝てるって・・・・・・」
セージ様が自分の部屋に入って、出てくることはない。時々苦しそうな声が聞こえるぐらいだ。
今日食べた朝御飯を吐いてしまった。水さえ飲んでも吐いてしまうほどだ。
『多分寝たら楽になると思う』と言っていた。だから今もきっとベッドで横になっているはず。
みんな同じ病気になってるかもしれないから、サイトの体の調子が悪くないか聞いてくれって、セージ様に言われていた。
「自分より俺たちの心配するのかよ・・・・・・」
サイトのいう通り。
私たちはなんともない。
むしろセージ様のことが心配。
もっと私たちに頼ってもいいのに、何も言わない。
皆黙ってしまう。
そのとき、ツバサは明るくしようとするように言う。
「人の心配してる余裕があるなら、あいつのいう通り大丈夫だろ。また明日になればピンピンしてるさ」
そうだったらいいな・・・・・・。
私はお昼ご飯にスープを作った。
隣にセージ様はいないけど、頑張って作った。
セージ様がいないから、なんとなく静かだ。気になってセージ様が座る場所をつい見てしまう。
「セージ様の様子を見に行っていいと思う?」
サイトは言った。
「旦那のとこにいくのか。スープ持っていけば?何か食べたほうがいいだろう」
確かにセージ様は水さえ口に入れていない。
セージ様は食べられるかな?
水も吐いちゃうぐらいだから食べられないかも・・・・・・
ちょっと顔をみるぐらいならいいよね。
セージ様の部屋の扉を叩いたけど、返事はなかった。
「セージ様、お邪魔します」
私は小さい声でそう言ってから、そっと扉を開けた。
セージ様は布団にくるまって眠っていた。
足音を立てないように近づくと、寝顔が見えた。
熱がないか額に手を当ててみる。
ちょっと熱くなってる?
寝たら治るっていうけど、ほんとうにそうなのかな・・・・・・
さっきみたときより弱々しくなっているような気がする。
- 第11章 ~ルチカside ( No.122 )
- 日時: 2015/05/03 20:06
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
広間に戻ると、サイトもツバサも待っていてくれた。
「どうだ?」
サイトに聞かれて、答えた。
「寝てたけど、熱が出てきたみたい・・・・・・」
人間の平熱なんてわからない。
でも、今のセージ様を見るといつもの調子じゃないってわかる。
「おいおい、大丈夫なのかよ」
楽観的な態度だったツバサまで不安そうな顔をする。
明日、エリックさんが来てくれる。でもそれまでセージ様は大丈夫なのかな。
レイズさんのところなら薬が売ってるよね。
セージ様をみていたら、明日までに少しでも楽になってほしかった。
「レイズさんところにいって薬、買わない?」
二人は私をみる。
先に口を開いたのはツバサ。
「でも俺たちだけで外に出るのは危険だぞ」
以前に『何があるかわからないから外に出るなよ』とセージ様に言われていた。
私たちが外出するときは、必ずセージ様が着いてきていた。
「でも!明日、セージ様死んじゃうかもしれない・・・・・・」
今のセージ様を見て、大丈夫とは思えなかった。
何も食べられず、熱に浮かされているのをただみているだけなんて出来るわけがない。
セージ様はたくさん与えてくれたけど、私はまだセージ様になにも出来ていない。
ここでサイトが口を開いた。
「なら、俺がいこう。お前らは旦那をみていろ」
「はっ!?お前、方向音痴だろ。大丈夫かよ」
「星をみていたら大体の方角はわかる」
「夜しか使えねーよ、それ!」
確かにサイトは右と左もよくわかっていない。彼を町に行かせるのは不安だった。
ツバサはしっかりしているけど、私よりも年下。町には危険があるから、何かあったら大変。
それに誰かがセージ様の様子を見なければならない。
言い合いをしても結論は出なかった。
みんな、セージ様を助けたいけど町にいくことは出来なかった。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【おかげさまで参照1500】 ( No.123 )
- 日時: 2015/05/04 09:08
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
獣人が怪我や病気したとき、ご主人様は放置するか処分する。
医者に見てもらえないし、薬もない。そんなとき、私たちはサマリという草を探すしかなかった。
サマリは怪我や病気、なんでも効くとされていた。
そんなにたくさん生えていないから、少し探さないといけないけど。
セージ様に効くかはわからないけど、とにかく助けたかった。
私とツバサが探しにいくことにして、サイトは留守番でセージ様の様子をみることにした。
少し離れたところにある野原で探していた。
「これか?」
ツバサは1本の草を見せる。
サマリの特徴は根元が少し紫色をしている。私は頷いた。
「うん、そう。それを10本ぐらい見つけてほしいの」
「マジかよ、頑張ろうぜ」
ツバサは土まみれになって頑張っている。口は悪いし、セージ様に文句ばかりいうけど、本当はいい人だ。
私、人間だからって怖がってばかりだったなあ・・・・・・。
セージ様はツバサの性格をすぐに見抜いたんだ。
頑張ってたくさん見つけて、セージ様を元気にしないと。
あ、私も1本みっけ。
そのとき、足音が聞こえてきた。
人間たちの足音だ。
私は獣化して草むらに隠れた。
話し声が聞こえた。
「あーあ、金もうけできる話ないかな」
「真面目に考えろよ・・・・・・」
息を潜めて、草むらから覗くと、二人の男の人とサルみたいな獣人と狼の女の人がいた。
なんか武器持ってるし、危ないよね・・・・・・。
狼の女の人はこっちを見る。気づかれちゃったかな。
「あら、どうしましたの?そんなところに隠れて」
見つかっちゃった!私は身を低くして草むらに潜る。
「大丈夫。あなたの敵ではありませんよ」っていうけど、知らない人とお話しちゃダメってセージ様が言ってたんだもん。
他の3人にも気づかれちゃったみたい・・・・・・。
「猫の獣人なのか?獣化なんて珍しいな」
知らない人が四人・・・・・・。
動かないでいると、サルの獣人にひょいと捕まれた。
腕が長いからあっさり捕まってしまった。
怖くて鳴き声をあげてしまう。
このまま何かされちゃうの?私
- 第11章 ~ルチカside ( No.124 )
- 日時: 2015/05/04 19:50
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
私の声を聞いて、ツバサがかけつけてくれた。
「なにやってるんだ!ルチカを離せ、サル!」
すると、ガッシリした男の人が笑いだした。
「サルだってよ、ストレートだな。おいガキ。サルサは人間だ」
「えっ」
ツバサはビックリした顔をする。私もビックリした。
名前もサルサって・・・・・・。
狼の人は眉を寄せる。
「サルサ、離してあげて。この子が怖がっているわ」
サルサっていう人はちぇっと言いながら、私を解放した。
「ごめんなさいね、悪い人じゃないのよ」
狼の獣人は苦笑した。
この四人は旅の一行らしい。
底抜けに明るいリーダーのフォルドさん。
白い狼のセシリーさん。
サルにそっくりだけど、人間のサルベグサさん(略してサルサ)
こざっぱりとした服装で目立たないトラブルさん。
どうして旅をしているかわからないけど、みんな個性的だなあ。
獣人を差別しないから、悪い人たちじゃないってわかった。
セージ様みたいな人が他にもいたんだ・・・・・・。
「ところでこんなところで何をしていたんだ?」
フォルドさんに聞かれる。
ツバサが答えた。
「家に病気のやつがいるからサマリの草を探していたんだ。」
「そうか。それは大変だな。俺たちも協力する。皆、探すぞ」
フォルドさんは早速探し始める。彼の呼び掛けに反対したのは、トラブルさんだった。
「フォルド様、今はそんなことをしている場合ではありません!我々も急がなければ」
「病気のやつを放って置くなんてできねぇだろ。早く進みたいなら、お前もさっさと探せ」
トラブルさんは「無茶苦茶だ・・・・・・」と言って、一緒に探してくれた。フォルドさんって強引な人なのかな?
セシリーさんが匂いで探してくれたから、たくさん集まった。
「ありがとうございます」
私は頭を下げた。この人たちがいなかったら、こんなに集まらなかったと思う。
フォルドさんはニッと笑って白い歯を見せる。
「いいっての。早くセージって奴が元気になったらいいな。今度そいつの家に遊びに行かせてくれよ」
フォルドさんは土まみれになっている。他の皆もだ。
そのとき、また足音が聞こえる。セシリーさんも気づいたようだ。
「フォルド、憲兵が近くにいるみたいよ」
「それは大変だ。お前らも逃げるか?」
私は首を横に振った。
だってセージ様が待っているんだもの。
フォルドさんは頷いた。
「そうか、また会おうな」
そういって、ここを立ち去っていった。
憲兵さんは知っている人だった。
セージ様の家に時々来る人だった。
彼は私たちを見つけると、こう言った。
「君たち早く戻りなさい。セージ殿がかなり怒っているぞ」
セージ様が・・・・・・?
- Re: リーマン、異世界を駆ける【おかげさまで参照1500】 ( No.125 )
- 日時: 2015/05/05 11:57
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
憲兵さんに連れられて、家に戻ると、セージ様は起きていて、むすっとした顔でベッドに座っていた。
「あれほど勝手に外に出るなって言っただろう。何かあったらどうするんだ」
セージ様に怒られて凄く悲しかった。
「だって・・・・・・ごめんなさい」
私は謝った。セージ様に捨てられたら生きていけない。
憲兵さんたちはたまたま近くに職務があったようなので、ついでにセージ様の家に訪問したらしい。
そのとき、セージ様は起きて私たちがいなくなっていて大騒ぎしたようだ。
そして、憲兵さんたちは手分けして私を探しに来てくれた人と町に行ってお医者さんを呼んでくれた。
お医者さんによると、テミナという食べ物が原因だったらしい。私たちは食べても平気だったけど、セージ様には毒になるみたい。
命に別状はないけど、もう食べちゃダメなんだって。
顔色も少し良いし、眠って体調が良くなったみたいでよかった。
「これ、薬か?」
セージ様はサマリを摘まむ。
「はい。人間に効くかわかりませんが・・・・・・」
「そっか。たくさん採ったな、ありがとう」
あれ?もう怒っていないの?
私はホッとした。
ホッとしたら涙が出てきて・・・・・・
セージ様に頭を撫でられた。
「心配かけてごめんな、これ飲んで元気になるから待ってろよ」
大きくて柔らかい手が暖かい。
私はもっとセージ様のために頑張らなきゃと思った。
エリックさんに回復の魔法をかけてもらったのもあって、2日後にはもう家を掃除できるようになっていた。
ある日、セージ様はいう。
「そろそろ皆に給料だそうって思ってるから、何欲しいか考えておけよ」
給料って何?
セージ様によると、私たちが自由に使えるお金なんだって。
お金をもつなんて初めてだ。
何が欲しいかってすぐに思い浮かばない。今も充分だから。
「セージ様ともっと一緒にいたいです。それとたまに頭も撫でてほしい・・・・・・。」
お金よりも食べ物よりも、セージ様が側にいてくれたら何もいらない。
私がそういうと、セージ様は顔を真っ赤にしながら「ルチカは欲がないなあ」と言った。