複雑・ファジー小説

第12章 サイトside ( No.127 )
日時: 2015/05/06 11:50
名前: yesod (ID: ZKCYjob2)

季節は初夏になり、星座も少しずつ変わる。

掃除や買い物が終わると、後は各自で思い思いに過ごすから、暇でしようがなかった。
なので、庭にある畑を手入れすることにした。
育てていたジオラとタルシェが収穫できた。
ジオラは一年中収穫できる便利な野菜で、タルシェは丈夫で育てやすい。
旦那に見せると「おぉー、すげー」と誉めてくれた。
旦那は勉強も家事もなんでもできる。ただ、少し弱くて虫が苦手なんだけど。
旦那はゴキブリを見ると、人が変わったかのように暴れだす。あの姿は旦那だとは思えない。
ルチカはすばしっこいから、あいつがいつも捕まえている。
旦那にとって虫は軍隊よりも怖いようだが、そこだけは理解できない。

旦那が軍に捕まったときはどうしようかと思ったけど、数日後無事に帰ってきた。
その後、俺たちは勉強を教えてもらうことになる。
ミシェルっていうフェネックの獣人が勉強を教える。
俺は頭が悪い。
ペンさえ持てない。器用じゃないからイライラする。
ルチカはもう自分の名前を書けるようになった。つい最近仲間に加わったツバサは絵を描いたりしている。
俺だけ置いていかれている。
まあいいや、勉強ができなくても。
旦那も「得意なことはどんどんやれ」って言ってたし。

そんなとき、ミシェルからあるものをもらった。
ペンに何かが巻かれてあり、太くなってやがる。
「サイト。ペン、持ちにくかったでしょ。こうすれば、持ちやすいんじゃないかな」
確かに。手にしっくりくる。
これなら俺も文字がかける。
ミシェルはちっちゃくて細いが、優しい心を持っている。
そして俺に憧れているらしい。
でかくて強いからだと。
「よし、ミシェルは俺に勉強を教えて俺が体を鍛えてやろう」
「ホントに!?やったぁ!・・・・・・あ、でも手加減してね」
俺たち友達だもんな。苦手なところは助け合えばいい。
しかし、それはエリックさんに止められる。旦那も反対。
何でだ?
そのときは俺もミシェルも少し落ち込んだ。

Re: リーマン、異世界を駆ける【おかげさまで参照1500】 ( No.128 )
日時: 2015/05/06 12:07
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

たぶんエリックとセージがミシェルを鍛えるのに反対なのはムキムキになってほしくないからでは……

Re: リーマン、異世界を駆ける【おかげさまで参照1500】 ( No.129 )
日時: 2015/05/06 12:41
名前: yesod (ID: ZKCYjob2)

ええ、エリックさんはミシェルをムキムキになってほしくないと思っているから反対しています。
セージさんも「ミシェルはそのままがいいし、ならないほうがいいだろう」とか「サイトが鍛えるってのが心配」とかエリックさんの好みを知っているからなどいろいろあるのです。

サイトは全然気づいていない一面でした

Re: リーマン、異世界を駆ける【おかげさまで参照1500】 ( No.130 )
日時: 2015/05/06 20:02
名前: yesod (ID: ZKCYjob2)

今日は『しょにんきゅー』の日らしい。
『きゅーりょー』を初めてもらう日のことをいうらしい。
奴隷が金をもらうなんて初めてのことで、俺もルチカも戸惑っている。
旦那に「明後日、広場行くから、それまでに欲しいもの考えておけよ」と言われた。
欲しいもの、と言われてもなぁ・・・・・・。
ルチカは旦那ともっと一緒にいたいと言ったようだ。

俺もそうだ。

風呂も寝るときも皆で一緒に行動したい。

そして、いよいよ『しょにんきゅー』の日になった。

「サイト君。畑の手入れ、いつもありがとう。助かってます。これからも宜しくお願いします」
旦那はそう言って、俺に紙でできた袋を渡した。
中には銀貨が3枚入っている。俺からすればかなりの大金だ。
しかし金よりも、感謝の言葉を言ってくれたことが嬉しかった。
俺は料理をすれば道具を壊すし、洗濯をすれば服を破く。つい最近は旦那の家具を壊してしまった。
ボディーガードの仕事もちゃんと出来ていない。
できることといえば、畑仕事ぐらいしかない。
それでも旦那は感謝していた。
俺のような頭の悪い奴でも、役に立てたと思えた。
旦那は常に大きな問題と戦っている。
俺はこれからも旦那を守りたいと思っている。

翌日。
俺たちは旦那に広場に連れられた。
「これから15分・・・・・・いや、3つの鐘がなったら、あの像に集まること。
それから一人で行動するのは危険だから、広場から出るなよ。
それまで各自自由行動、以上!解散!」
そういって旦那はどこかへ行ってしまった。
買い物って何買えばいいんだ?
ツバサは自由に行動するし、ルチカは旦那に着いていってる。
俺はどうすればいいんだろう・・・・・・?

そのとき、誰かが俺の腕を優しくつかんだ。
「お兄さん、一人なの?危なくない?」
金髪で、細い女。
マントで体や顔を隠しているが、腕に羽が生えているのが隙間から見える。
その人はニコッと笑って俺を見上げた。

Re: リーマン、異世界を駆ける【おかげさまで参照1500】 ( No.131 )
日時: 2015/05/08 19:28
名前: yesod (ID: ZKCYjob2)

その獣人の女はメルトといった。彼女は甘い声でいう。
「あなたも逃げてきたの?」
「いや、俺は自由行動だ」
獣人は単独で行動するのはまずない。まあ、旦那が特殊なんだ。
メルトは「ふぅん」と言って、顔を近づけた。
「ねぇ、お金持ってる?私おなかへっちゃって・・・・・・」
メルトから花のような臭いがする。
今は銀貨を3枚持っている。
彼女はおなかをへらして困っているようだ。
初めての給料を困っている人に使ってもいいだろうと思った。

俺はメルトに食べ物を買ってやった。
パンに木の実が入っているやつ。メルトが「これが食べたいなぁ」と言ったからだ。
メルトはパンを頬張る。
「おいしい〜。ありがとう、サイトって優しいのね」
そして「これはお礼ね」と言って、パンをちぎって口の中に入れる。
パンはほのかに甘い。
メルトは俺の手を握った。
「あなたのご主人様は優しいのね、羨ましいわ」
「変わってるけどな」
「私も雇ってくれるようお願いしようかしら。私、自信はあるわよ・・・・・・」
なんの自信だ?
メルトはマントをはだけ、胸の谷間を見せる。
そして、俺に体を寄せてきた。
「よかったら試してみる?」
何がなんだかわからんが、俺の本能が危ないと言っている。
しかし、逃げられない。

どうすればいい?

そのとき、旦那が近くを偶然通りかかった。手にはコップを2つ持っている。
旦那は俺を見つけると、こう言った。
「こら、サイト!初任給を女遊びに使うなんて感心しないなあ。そういうのは成人してからだぞ」
旦那!?女遊びってこういうことなんですか!?
初任給で使ってはいけないことがあるんですか!?
旦那に怒られた。
しかし、そのおかげでメルトが俺から少し離れてくれた。
「あの人があなたのご主人様?」
「ああ」
「素敵な人ね。あ、もうすぐ3つの鐘がなっちゃうから戻らなきゃ。じゃあね、パンありがとう」
そういってメルトは去っていった。
助かった。変な女だな。
あ、そういえば旦那は3つの鐘が鳴ったら像の前に集合って言ってたな。
俺もそろそろ戻らないと。