複雑・ファジー小説
- 14章『外伝』 ( No.138 )
- 日時: 2015/07/08 22:44
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
[14章『外伝』]
ここはどこでしょう。
辺りを見回した。
私はただのOL。
さっきまでここは私の部屋の玄関だったはず。
しかし、今はなぜか行ったことのない町にいて、なんかおかしなことになっている。
玄関に入った瞬間、ここに立っていた。扉はいつの間にか無くなっている。
私は愛用の鞄をじっと見つめて、回答がでない疑問をぐるぐると考えていた。
気がついたら見知らぬ町。
怪しいお店もあって、あまり柄が良いとはいえない。
金髪や茶髪の中世ヨーロピアンなナイスガイがいっぱい。
動物的なコスプレの人もいる。
私が目立ってしまい、注目されて人目が多いため、人が少ないところに逃げてきた。
何故か客引きが異様だったもの。日本人だから騙しやすいと思っているのかしら。
手持ちはスマホのみ。
時間は深夜0時を過ぎていた。
私、酔ってるの?
1時間ほど前、私はお付き合いしている人と食事をしていた。
相手は10歳年上の同じ課の上司。仕事を一緒に進めているうちにお互い惹かれあった。
周囲には付き合っていることを隠している。
結婚も視野にいれてるけど、私が仕事を辞めないといけないだろうなあ・・・・・・。
今の仕事はとても勉強になるからまだ続けたい。
でも両親からの結婚はまだなのプレッシャーと、彼自身も年齢的なこともあって焦っているのと・・・・・・。
あれこれ迷っていたら、逃げられてしまうかもしれない不安もある。
そろそろ引き際かなと考えながらワインを飲んでいた。
飲んでいたのはグラスワイン2杯とカクテル3杯。これぐらい大したことはない。
心配されて送ってくれたけど、普通だったし。
でも、送ってくれたのは嬉しかったな・・・・・・。
とりあえず、ここで座り込んでいてもなにもならないし。
歩こうか。
まずはここがどこか聞かないとね。
- 14章『外伝』 ( No.139 )
- 日時: 2015/05/13 19:51
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
近くに金髪王子風な人がいたので話しかけることにした。
「あの、すみません。ここはどこか教えて貰ってもいいですか」
王子(仮)は驚いた顔をしたが、爽やかな笑みを浮かべ、こう言った。
「道に迷われているのですか。よろしければ僕の家に泊まっていきませんか」
初対面の女性を誘うなんて唐突すぎるだろう。どんだけアムールなの?
外国は日本の治安とは違う。迂闊に信用するのは危険すぎる。
私はやんわり断ることにした。
「いえ、明日約束があるので・・・・・・」
明日は土曜日。家でゴロゴロする予定。
しかし今はそれどころではない。
王子(もう関わりたくない)は私の手を握ってきた。
「夜空のような美しい髪をもつあなたに一目惚れしてしまったのです。どうか一晩を共にさせてもらえますか」
いきなり愛の告白かよ。
10年前ならときめいていたかもしれないけど、残念でした。
「私には婚約者がいるので。ごめんなさい、道を思い出しましたのでここで・・・・・・」
しかし、王子(誰だよ)は手を離してくれない。逆に強くなる。
「せっかく金のなる木を捕まえたんだ。逃がしはしないよ」
私今、所持金0!
誰か助けて!
私は声をあげた。
すると、次々と男の人が駆けつけてくる。
しかし、私を助けるんじゃなくて、(糞)王子に加勢している。
倫理観どうなってるの、ここ!
「じゃじゃ馬だが、なかなかいい女じゃないか。皆でたっぷり可愛がってやろうぜ」
全く憧れない逆ハーである。
こんなところでこんなやつらにされるのは嫌!
私は叩いたり引っ掻いたりして抵抗した。
そのとき、目の前の男があらぬ方向に目を見開き、倒れた。
一体どうなってるの?
さらに私を襲った男の人たちは次々と倒れていった。
そして残ったのは、3人の男の人と1人の女の人。
「大丈夫か」
若い男の人に声をかけられる。
いきなり知らない場所にいて、たくさんの人に襲われそうになって、派手な喧嘩を見せられて、もう訳がわからなかった。
- 14章『外伝』 ( No.140 )
- 日時: 2015/05/14 20:38
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
四人は放心状態の私を酒場に連れていった。
「落ち着きましたか?」
女の人に声をかけられる。
絹のような綺麗な銀髪で雑誌に出てきそうな人だなあ。でもこの人、よく見ると犬みたいな耳と尻尾がついてるよ。
「いやぁ〜なかなか飲むね、姉ちゃん」
リーダー格の若い男の人がいう。
あんたが一番飲んでるよ。
私だってまた飲んでいるのは体に悪いだろうけど。
でも飲むよ。
こんな現実で生きるのは辛い
フォルドっていう兄ちゃんは茶髪でガチムチで、私の彼とは全く違うタイプだ。
ここは獣人という人間とは違う種類の生き物がいる世界だということを教えてもらった。
大抵の獣人は人間の奴隷になる。私も獣人だと思っていたらしい。
ちなみに他のメンバーは、モデルみたいな狼のセシリーさん。
サルにそっくりだけど、獣人じゃないサルサさん。
フォルドさんの従者のトラブルさんだ。
フォルドさんはツマミを口にしながら言った。
「ところで姉ちゃん、名前を教えて貰ってもいいかい」
「伊藤美奈子です」
「ミナコか、変わった名前だな。ところでセージって奴を知ってるかい?」
セージ?日本人っぽいわね。
でも、名前だけだとパッと思い浮かばない。フルネームなら思い浮かぶかもしれないけど・・・・・・。
「知らないわ」
「そうか。いや、同じ黒髪だからもしかしたらって思ったんだ」
フォルドさんによると、セージっていう人は異国の商人でこの町でかなり有名な金持ちらしい。
神様のお菓子と呼ばれるものを作って儲けているようだ。
もしかしたら同じ日本人かもしれない。私はフォルドさんに会わせてくれるよう頭を下げた。
しかし、反対したのはトラブルさんだ。
「フォルド、その人のことをよく知らないのに連れていって大丈夫か」
うん。普通なら警戒するよね。
しかし、フォルドさんは「困っている人を放っておけるか」と言う。
セシリーさんは「よろしくお願いします、ミナコさん」という。
トラブルさんはこれ以上は言わなかった。フォルドさんっていつもあんな感じなんだな・・・・・・。
大体力関係がわかってきたぞ。
私はセージっていう人に会えば、何かきっかけが掴めるかもしれないと思った。
「そういえばフォルド、金は大丈夫なのか」
とトラブルさん。
フォルドはハッとする。
「やべぇ、逃げるぞ」
食い逃げかよ!
この人に着いていって大丈夫なのかな・・・・・・。
私は不安になった。