複雑・ファジー小説
- 第17章 セージside ( No.161 )
- 日時: 2015/05/31 11:03
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
[第17章]
あのクソガミが伊藤さんを引き取ってくれた。
もしかして忘れているんじゃないかと不安になっていたんだよ。
しっかりと旅行楽しみやがって・・・・・・。
岡田係長、御愁傷・・・・・・いえ、お幸せに。
お土産にちんすこうと折り畳み式の自転車をもらった。
この世界の移動手段って馬だし。俺、馬もってないし。
以前サイトに「俺に乗ってください」って言われたけど、丁重にお断りした。
牛に乗るなんて俺、ヒンドゥー教の神様じゃないよ。
でもこの世界で自転車使ったら目立つかな。
ちんすこうはお金と一緒にフォルドさんたちにもおすそ分けしておいた。
また二日酔いだからって家に泊めたら居候になりかねない。ここで心を鬼にして、スパッと思い切り切らなければ。
別れる際にお金を多目に渡しておけば、受け取ってくれた。
たまに会うぐらいならいいんだけどな。ルチカたちも楽しそうだったし。
翌日からいつもの日常だ。
俺は自転車で庭をグルグル回っていた。
アホガキみたい?うるさい。
サイトは興味深そうに自転車をみている。
「器用っすね、全然こけないな」
「慣れたらすぐにできるよ。サイトもどう?」
「え、俺なんか大丈夫っすかね!?」
自転車をサイトに乗せてみることにした。
いきなり漕ぐのは無理なので、両足で支えて。
オロオロしてる、なんか面白いな。ちょっとサイトには小さかったかな・・・・・・。
俺が後ろで支えて、サイトに漕がしてみるのもいいかもしれない。『旦那、絶対に手を離さないでくださいね!』っていいそう。
それも楽しそうだな、俺ってドS。
そんなことを考えていたとき、自転車が音を立ててぺしゃんこに潰れた。
なんで?
サイトが重すぎたのかと考えてしまう。
「旦那ぁぁぁ!!申し訳ございませんんんん!!」
サイトは涙目で謝っている。
こんなに謝られたらかえって俺のほうが申し訳ない。
「いや、俺が乗せたんだから謝ることはないよ」
でも一回しか乗ってなかったからちょっとショックかな・・・・・・。
倒れた自転車を起き上がらせようとすると、なんと潰れた自転車はあっという間に元に戻った。
あれ?サイトも戸惑っている。
どうやら自転車は俺以外のやつが乗ると、潰れるしくみらしい。
鞄と同じ原理だな。
試しに翼にも乗せてみたら、サイトと同じように潰れた。
神は俺の所有物をちょこちょこ弄っているらしい・・・・・・。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【参照2000、ありがとー!】 ( No.162 )
- 日時: 2015/05/31 19:50
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
リリナの工事も順調に進んでいる。この調子なら、来週には完成できそうとのことだ。
奴の顔が以前よりもリラックスしているように見える。
完成したら、皆で打ち上げしよう。新しい厨房使ってみたいし。
最初はどこかいけ好かないやつだと思っていたのだが、実は単に意地を張っているだけだとわかった。
『獣人に暴力を振るうな』という難しい条件に逃げださずに承諾した。そしてやり遂げようとしている。
先日も資材の落下事故があったが、真っ先にルチカを助け、代表者として謝罪した。
建築士としての技量はわからないが、人としての礼儀をわきまえている。
大きな家柄を背負っているって大変だよな。俺も長男だからわかるわ。全く知らない人からでも変に期待されるし。
この仕事で時間かけてもいいから、のびのびと何か学んでほしい。建築士に関係ないことでもいいから。
まだ若いし、これから様々な場所で活躍してほしい。彼の背中に続く人が必ず出てくるだろう。
俺にとって気になることが1つある。
ルチカのことだ。
まあ、以前から少し気になっていたけど・・・・・・。ここ最近は無意識にルチカの姿を目で追っていることが増えた。
フォルドって奴はセシリーさんと仲がいいから、少し相談をしようかと思ったけど、多分彼は相談相手には向いてない。
端から見たら君たち夫婦だよ?
お互い素直になりなよ・・・・・・って俺もか。
伊藤さんはフォルドにも説教してたっぽいけど、知らないふりをしておいた。
『俺が幸せにしてやるぐらいの覚悟がないとダメなのよ』か・・・・・・。
ルチカが俺に対して好意を持っているのはなんとなくわかる。
しかし、ルチカの場合単に『年上に対する憧れ』もある。
今はお勉強していることだし、考える力をつけて視野が広がれば、選択肢も広がるだろう。
それでも俺を選ぶなら・・・・・・。
いや、まだ先の話だろう。
時が経てばきっと考え方も変わる。
- 第17章 セージside ( No.163 )
- 日時: 2015/06/01 20:00
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
最近俺の年齢のせいか、見合い話の話題をよく持ちかけられるようになった。
クレイリアでは男性は二十歳までには結婚してる人が多いからなあ。貴族たちなんてもっと早い段階で婚約者がいる。
25で彼女なしなんて、もうとっくに遅すぎると思われている。
しかし、俺が金を持っているというのを知られているせいで、どんどん紹介されていた。
まずはレイズさん。
「菓子を取り引きしてたら、得意先の何人かから『うちの娘はどうだ』って言われるんだ。
よかったら、娘たちの情報を冊子にまとめてみたんだが、目を通してくれるかい?」
と言われてやたら分厚い冊子をくれた。
どんだけ紹介されてるの?
中身はさっと目を通しただけ。
女の子の絵と身分、性格、特技が書かれていた。
どの子も綺麗だけど、大体見合い写真なんて2割増しぐらいに綺麗に書くんだろ?
次に第3部隊の皆様。
こちらは主に部隊長の娘さんを紹介される。
わざわざ他の部隊の人がやってきて「うちの娘はどうだ」という。
中には「俺と結婚してください」とプロポーズする人もいる。
俺、異性愛者だよ。
そして、皆決まってこのことを言う。
「ルチカを愛人にしないのか」
しねーよ。
なんで恋人じゃなくて愛人なんだよ。
あんな小さい子を愛人にしたら犯罪者だよ。
しかし、この世界では妻を持っていながら獣人を愛人にするのはよくあることだという。
たまに色々ぶっ飛びすぎることがあって頭が追いつかない。
このことをエリックさんに相談することにした。
「エリックさん、非常にデリケートな問題ですが、相談にのっていただきたいことがあるんです」
「何でしょう?」
あの人はミシェルとただならぬ仲のようだし、色んなことを知っている人だから、勉強になることがあるだろう。
「その・・・・・・ミシェルとの関係についてなんですが、あの子は愛人なんですか」
ミシェルをみると、こちらの話を聞いていたのか、顔を真っ赤にする。
やっぱり別室で話すほうがよかったかな。でも二人きりだとなんかありそうな気がするし。
なんか夢にでたような気がするし・・・・・・。
エリックは答えた。
「そうですね。しかし、私は彼のことを伴侶以上に大切に思っています。ミシェルが望むことならなんでも叶えてあげたいですよ」
あ、なるほど。
エリックさんは現在も独身。
名前なんて体面だけで、大事なのは中身だよな。愛人なんていうから変な先入観があるんだ。
彼は続ける。
「ルチカを愛人になさるのですか?」
「それで悩んでいたんです。俺に見合い話がよくあって・・・・・・」
エリックさんは頷いた。
「ルチカも喜ぶと思いますがね。なにか不安なのですか?」
そう。
ルチカが俺のことが好きなのはなんとなく察している。気づかないふりをしているだけだ。
愛人にして本当に幸せになるのだろうか?
そして、俺が俺自身を信じられなかった。
- 第17章 セージside ( No.164 )
- 日時: 2015/06/02 19:47
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
見合いのことなんていつでもいい。
それよりも今は目の前のことに集中しよう。
厨房の完成に向けて、俺も準備しなければならない。
新しい奴隷の買い入れだ。
生産量が増えれば、人手も必要になる。
今、4部屋空いてるから、3、4人ぐらいか?いや、部屋がデカイから仕切りを作ればなんとかなりそうだ。
そのために、俺は奴隷市場へむかうことにした。
異世界に初めてきて何もできなかったあのときのリベンジだ。
ルチカもサイトも着いていくと言い出した。
「俺のこと心配してくれるのは嬉しいが、奴隷市場だぞ」
あいつらからすれば、同じ獣人が売り飛ばされるところなんて見たくないだろう。
ルチカはこう言った。
「でも、最近奴隷市場が危ないっていうから・・・・・・」
そうだ。
第3部隊の兵士が家にちょくちょく来るので、町の情報が入ってくる。
奴隷市場がレジスタンスという集団に襲撃されるようだ。
以前、ルチカにちょっかいかけていたあのデカイ猫がいる集団だ。
ここ最近は特に増えているという。解放した獣人を仲間にして、勢力が強くなったようだ。
商人や客が襲撃され、怪我したり命を奪われることもあったという。
最近は奴隷市場が開かれる日は警備を増やすなど、厳戒態勢になっている。
そのため、奴隷市場が開かれる頻度が少なくなった。(いっそなくしてしまえばいいのに)
サイトは元々ボディーガードとして雇ったから、連れていってもいいだろう。
ルチカとツバサは留守番だ。
ルチカは不安そうな顔して着いて行きたがっていたが・・・・・・。
俺はルチカにこう言った。
「新しい奴隷たちに出すお茶と食事の準備をしてくれないか」
連れていって危険な目に合わせたくないしな。
ルチカは気配りができる。奴隷たちをリラックスさせることができればいいだろう。
ルチカは「わかりました、気を付けてくださいね」と言った。
そしてついに奴隷市場・リベンジ
周辺にはたくさんの人間がいた。
眉を寄せてシワを作る人、何を考えているのか下品な笑みを浮かべる人・・・。様々だ。
俺も奴隷を買い取る一人。奴等と変わらないだろうな。
舞台の上に商人が現れる。商人は金を鳴らす。
「さあ、皆さんお待ちかねの奴隷市場が始まるよ!
今日は8人の獣人、新しく捕らえた者や、べっぴんさんもいるよ!」
べっぴんさんという言葉で男たちの期待にする声がわずかに聞こえた。
まあ男の考えることはわかりやすいわな。
- 第17章 セージside ( No.165 )
- 日時: 2015/06/03 19:26
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
鎖を繋がれた獣人たちが階段を上がる。男が6人、女が2人というところか。
よし、全員雇ってやろう。
「さあ、まずはこのカブトムシの男から!マクディ家の炭鉱で働いておりました。年は大体40ぐらい。さあ、はった、はった!」
40代か。獣人にしてはなかなか年寄りだな。
赤に近い茶色の肌の獣人には深いシワが刻まれており、額にはカブトムシらしい立派な角を生やしていた。
手が上がったのは二人ぐらい。
年齢的なこともあってやっぱり需要があまりないみたいだな。
値段も金貨2枚にはならなかった。
俺も手をあげた。
「金貨10枚」
すると、周囲の人間はギョッとしてこちらを見る。
普通の奴隷でもだいたいの相場は金貨5枚だ。その2倍の金額を出そうとする人物なんてなかなかいないだろう。
この調子で落札していこう。
俺は馬や、ツバメなどどんな獣人でも見境なく落札していく。全員金貨10枚だ。
俺の髪の色を見て、俺のことを知っているやつは知っているだろう。
さすがに商人は顔をひきつらせて困惑している。
「お、お客様〜・・・・・・。もしかしてこの調子で全員落札するおつもりですか。他のお客様もいらっしゃいますので・・・・・・」
「じゃあここから先の獣人は金貨一人15枚な」
俺もむちゃくちゃだと思っている。しかし、全員雇うならこれぐらいの意気込みがないとだめだ。
悲壮な顔をしている目の前の奴らが誰かわからない人間に買い取られるところを見たくない。
周囲の誰もが獣人一人に15枚も出せる人はいなかった。
このまま俺の一人勝ちだろう。
金髪の鳥の女性を見たとき、サイトの表情が変わった。
俺はサイトに訪ねることにした。
「サイト、知り合い?」
「初任給の日に町で会ったんですよ。なんか変な女でした」
変な女って人聞き悪いな。女性をそんな風にいうんじゃない。
そういえば、あのときサイトは女性に絡まれていたな。あの人だったのか。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【参照2000、ありがとー!】 ( No.166 )
- 日時: 2015/06/04 19:48
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
俺のせいで奴隷市場は半ば強制的に途中で終了となった。
周りの人間は、嫉妬と羨望が混じった視線で俺を見ている。
ざまあみろ。
商人は震える手で契約書を渡した。一度にこんなに買いあげるやつなんていないだろうからな。
契約書には獣人たちの種族やだいたいの年齢や経歴が書いてあった。
興味ないからざっと読んだだけだ。
獣人たちは鎖に繋がれたままだ。あるものは怯え、あるものは諦めたような表情をして下を向いている。
当たり前ってわかってるけど、俺が悪者になったみたいだな。
俺も手探りでやってるから、こいつらを幸せにできるかわからない。でも、彼らためにベストを尽くすつもりだ。
その中に他の獣人とは違って一人だけ俺をまっすぐ見ているやつがいる。
サイトの知り合いだったよな。まだ彼女の名前も知らない。
「メルトよ。ま、優しくしておくれよ。お兄さん」
名前を訪ねようとしたら、彼女の方から名乗ってきた。金髪はよく見ると、角度によっていろんな色が混じって見える。
彼女の契約書を見ると、前職が娼婦だったらしい。
胸元が大胆に開いた真っ赤なワンピースはボロボロで、彼女の顔には怪我があった。
「よろしくな・・・・・・ちょっと失礼」
俺はメルトさんの顔に触れた。治療の魔法が役に立ってよかった。
メルトのさんの顔の傷が消えていった。
「へぇ、驚いた。あんた魔法使いだったんだね。よろしければお礼に今夜とびきり・・・・・・」
「間に合ってます」
この先、R18的なことをいうと予想したから止めておいた。
下心で治したつもりはないし、女性の顔に傷があったのが気になっただけだ。
なのにメルトはサイトに「あんたの主人、大丈夫なの?性欲とかないの?」と聞いてくる。
うるさいな。心配される筋合いはねーよ。
サイトも「女が苦手みたいなんだ」ってでたらめいうな。
このあと、お仕置きとしてサイトに鉄拳を食らわせた。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【参照2000、ありがとー!】 ( No.167 )
- 日時: 2015/06/05 19:59
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
俺は獣人たちを連れていこうとしたとき、外で揉めている声が聞こえた。
周りの喧騒で何を争っているのかわからなかったが、少ししたらハッキリと聞こえた。
「ここはお前たちが入る場所ではない・・・・・・ぐわっ」
まさか例のテロ集団か?
複数の慌ただしい足音が近づいてくる。
現れたのはおよそ数人の獣人。獣化している者を合わせたら、10人ぐらいになるか。
ルチカにちょっかいをかけていた猫の獣人もいた。
猫の獣人はいう。
「同士たちよ、安心せよ。今からお前たちを解放する!
愚かな市場はもう終わりだ。人間たちは今すぐここから立ち去れ!」
真っ先に逃げたのは主催した商人だ。お前が逃げてどうするんだよ。
憲兵たちが戦闘しているが、獣化した獣人は人間より強くなるらしく、相手にするのは大変そうだ。
俺はパニックになっているお客さんを憲兵が待機しているところへ誘導した。
「ええい、私を守れ!私のために死ぬのは名誉あることだぞ!」
こんなときでも人間は態度がでかいな。
この人は自分を護衛している獣人に鞭うって命令しているが、そんなんだと従わないのは当たり前だ。
獣人たちは主人を捨てて、レジスタンスに加わった。
サイトも手伝ってもらうつもりだったが、サイトがお客さんに触れると、お客さんがさらにパニックになってしまった。
サイトをレジスタンスの一員と勘違いしたんだろうな。
逆効果になるので、俺のボディーガードに専念してもらった。
そのとき、猫の獣人は俺と対峙する。目が合うとエメラルドの瞳が俺を睨み付ける。
「よう、また会ったな。今度は奴隷をたくさん買ったのか。彼らを解放させてもらう」
俺は猫の獣人を睨むだけで返事をしなかった。
猫の獣人はサイトのほうに向く。
「そこの獣人。この人間から離れろ。解放してやるよ」
解放とは獣人にとって魅力的な言葉だろう。
しかし、サイトは拳を構えた。
「必要ない。俺は旦那の護衛だ。ここを離れない」
サイト、嬉しい言葉をありがとう。今まで頑張った甲斐があったよ。
猫の獣人は「そうか」と言うと、獣化を始めた。サイトも獣化する。
「旦那、ここは俺に任せて旦那も安全な場所へ逃げてください」
「おう、わかった」
サイトが心配だが、ここは彼を信用して任せよう。
俺はまだ近くにいる人間たちを避難させることにした。
レジスタンスたちは俺が買っていった獣人の鎖をとり、解放していく。
俺は獣人たちのことまで気が回らなくて、何人か奪われてしまった。しかし、逃げた獣人を追いかけたりはしなかった。
彼らが選んだ道だ。強制はしない。
- 第17章 セージside ( No.168 )
- 日時: 2015/06/06 10:56
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
残った人間を憲兵の近くまで誘導したので、俺はサイトのところまで向かう。
鞄から木刀を取り出して。
(これを見ると、以前翼を救出したときの恥ずかしい戦いを思い出すんだよな)
サイトは数人の獣人を相手にしていた。獣人たちはサイトの力に敵わず、少し距離をとっているものもいた。
猫の獣人はサイトの背中に食らいついていた。サイトは暴れて振り落とそうとしている。
これは手伝わないとな。
俺は猫の獣人に向かって木刀を振り回した。すると、猫の獣人はサイトから離れた。
サイトは俺を見て、ブルルと鼻を鳴らす。
俺が来てビックリしてるんだろうな。心配だったんだよ。
猫の獣人は姿勢を低くして、威嚇する。
俺は木刀を握りなおした。
そのとき、猫の獣人の仲間が彼に話しかける。
「ライカ、ここはあらかた終わった!」
ライカという猫の獣人は頷くと、獣化を解除する。
「そうか、ご苦労。撤収するぞ!」
レジスタンスの仲間たちは次々と市場から離れた。
ライカは俺に向かってこういう。
「ルチカも解放させる。いつまでもお前の都合であいつを縛らせないからな」
こう言い残して。
ルチカを連れていかなくてよかったと改めて思った。
俺の都合でというが、お前だって大概自分勝手だぞ。最終的に決めるのはルチカだ。
彼らが去ったあとの市場は凄惨な状況だった。怪我人もいた。
俺は憲兵たちの手伝いで被害状況の確認と怪我人の応急措置をした。
憲兵たちは俺の手際よさと冷静さに驚いていたが・・・・・・。お前らもうちょっとてきぱきやろうよ。
日本人の特性と教育の決め細やかさに感謝した。
俺が購入した獣人たちは大半がレジスタンスの連中に【解放】されていた。
残ったのは、メルトとカブトムシの獣人と犬の獣人だった。
「大丈夫だった?」
メルトはサイトに寄り添っている。
サイトは「大したことはない」と言っていたが、背中から出血していたので、治療の魔法をかけてやった。
3人の中で特に犬の獣人は怯えた目で俺を見ている。そんなに怖いならあいつらに着いていけばよかったのに。
多分、こいつら3人は自分の意思で残ったんだろうな。
俺も、こいつらの期待に応えないとな。