複雑・ファジー小説
- 第20章 レイラside ( No.180 )
- 日時: 2015/06/14 22:41
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
【第20章】
ほとんどの貴族の娘は退屈な日々を過ごす。誰かわからない結婚相手のためにレッスンをこなし、時間が過ぎるのを待っている。
私も例外ではない。レディになるためのレッスンが煩わしくて仕方がない。
たまに獣人に悪戯することが楽しみだ。
「レイラお嬢様!また本でこんなくだらないことをして・・・・・・。ご主人様から怒られますよ!」
本を持って怒っているのは、ルイザ。
平均より少し低めの身長のアライグマの獣人。
銀の髪を団子にしているところが可愛いと思う。あまりにも可愛いから、時々この団子に悪戯することもある。
黒い耳と銀と黒が混じった尻尾が付いている。
アッシュバートン家の奴隷獣人である。
頭の回転が早く、子供好きで世話焼きなところから、私の世話係を担当している。
潔癖症で、汚れているものがあれば何でも洗いたがる。どうやらアライグマの習性だとか。
なぜ私が怒られているかというと、本を扉に挟んで、扉を開けたらちょうど本が頭上に落ちるよう仕掛けをしたからだ。
そして、その本はルイザの頭に当たってしまったというわけだ。
「ご主人様がお呼びです。今すぐに部屋に来てほしいのだそうです」
「私に?あなたが聞いてきてちょうだいよ」
お父様のお話なんて、どうせ小言に違いないわ。
勉学を真面目にしろとか、もっと女性らしくしろとか・・・・・・。
そんなことに時間を使うぐらいなら、お友だちとお茶会をしたほうがいいと思う。
ルイザは首をふる。
「いけません。とても大切なお話だそうですよ」
これ以上ここにいると、ルイザからも小言をいただくことになるかもしれない。
私は渋々と立ち上がった。
お父様と向かい合う。
お父様の側には蝶の獣人を侍らせている。青い羽の蝶ってすごく珍しいんだって。
私の両親は獣人が大好きで、どちらも獣人の愛人を何人も所有している。
でもこれから娘と大事な話がするのなら、少し席を外させたら?
「おお、レイラ。やっと来たか。勉学はどうだ。歌が苦手だという報告を聞いたが・・・・・・」
「大丈夫です。先生たちにしっかり指導を受けていますので」
ほら、やっぱり勉学のことだ。
お父様は少し身動ぎをする。
「レイラ、お前もそろそろ・・・・・・見合いはどうだ」
- Re: リーマン、異世界を駆ける【参照2300、ありがとー!】 ( No.181 )
- 日時: 2015/06/15 19:23
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
もう何度目の話だろう。
お父様は男の人を何人か紹介したが、今まで気に入った人がいないから、全て断った。
相性が合わない人と結婚しても楽しくない。せっかくの長い人生が台無しになってしまう。
周りの友人は結婚している人は多いけど、私は私だ。
お父様は続ける。
「どうだ、気になる人はいるのか?」
「さあ、私は考えたこともありませんので・・・・・・」
むしろ会う機会がない。
突然お見合いの話を聞いて、私は軽く混乱していた。
お父様は1冊の冊子を私に渡す。
「リードマン商会と取引している商人のようだ。菓子で急に有名になった男だ。異国の人物で風変わりな考えの持ち主らしい」
冊子を開くと、ある人物について書いてあった。
【タムラセージ】
略歴をみても、全く理解できない。異国の人だから?
肖像に描かれた顔を見ると、すぐに忘れてしまいそうな顔・・・・・・どんだけ特徴がないの?
25歳で結婚したことがないのは珍しいわね。どうして今更お見合いなんてしようと思ったのかしら。
お父様は私の機嫌を伺うように聞く。
「どうだ?」
どちらかというと、顔は好みではない。
しかし風変わりな考えって聞いて少し興味がわいた。
「そうね。少しならお話ししようかしら」
私の返事を聞いて、お父様は喜んだ。
少しぐらいなら会ってもいいかしら。玩具にしてみて、気に入らなかったらポイで。
そして、見合い当日。
ルイザは私を見て、ギョッとする。
「お嬢様、男性の方に会うのにいくらなんでもそのメイクは・・・・・・!」
今、私の顔は真っ白な白粉を塗って、黒い絵の具で眉毛を思いきり太くした。
「あら、もっと眉毛を太くしたほうがいいかしら」
「いえ、そうではなくて・・・・・・」
彼女が何を言いたいのかわかっている。私はあえて無視をして、メイクに集中した。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【参照2300、ありがとー!】 ( No.182 )
- 日時: 2015/06/16 20:59
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
顔に頬紅を入れていると、部屋をノックする音が聞こえた。
完璧な(悪ふざけも入ってるけど)メークをした私に会わせたくないのか、ルイザが対応しようとする。
「ご主人様、お嬢様はお化粧がまだ・・・・・・」
「もう時間になるぞ。レイラ、何をしている。いい加減に・・・・・・」
私が振り向くと、お父様は目を見開いた。今のこの顔で驚くのも無理ないわよね。
「なんだ!その顔は!」
「お父様のいうとおり、バッチリメークしたわよ」
お父様が驚いたから、かなりの出来よね。これから時々こんなことしようかしら。
「その顔でセージ殿に会うつもりか。全く、母親だというのにイサドラは何をしているのだ」
イサドラは私のお母様の名前。
私の両親はあまり仲がよいとは言えない。ことあるごとに責任の押し付けあいをする。
それでも離婚しないのは世間体のため。
お互い好みの獣人と楽しくやってるからいいんじゃないの?
私は好きにできるから構わないわ。
お父様はルイザに命令する。
「ルイザ、お前がレイラのメークをやり直せ。最初から娘に任せるべきじゃなかった」
「はい。お嬢様、こちらへ・・・・・・」
私はルイザに椅子に座らされたとき、執事がお父様を呼びだした。
執事の話を聞いて、お父様の顔色がかわる。
「セージ殿が来たようだ。ルイザ、仕度が終わるまで娘を部屋から出すんじゃない」
そう言って、お父様は部屋の扉を閉じた。
ルイザは化粧直しを始める。
「さあ、お嬢様。綺麗なお顔立ちなのですから、勿体ないことはしないでくださいね」
そして、化粧道具を持つと汚れが気になったのか、布で綺麗に拭い始めている。
こんなときでもアライグマの習性がでるみたいね。
こんなことしていたら、いつまでも時間がかかってしまうわ。
まあ、わかっていたことだけど。
ルイザは化粧道具の汚れを落とすのに夢中になっていた。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【参照2300、ありがとー!】 ( No.183 )
- 日時: 2015/06/17 22:05
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
私は重い足取りでセージ殿がいる応接間へ向かう。
ルイザが慌てて後を追ってくる。
「お嬢様、お顔を上げてくださいませ。せっかくの綺麗なお顔が勿体ないですよ」
ルイザは化粧道具の汚れを落とすのに時間がかかっていた。
しかも化粧をしている間も汚れが気になったらその度に中断するから、もう化粧だけでウンザリ。
ルイザの習性を理解せずに指示をだしたお父様が悪いわ。
お父様からしたら、獣人は【夜のお相手として】相性がいいかどうかだから、それ以外はどうでもいいのよね。
それにルイザの化粧ってちょっと古臭いからちょっと嫌なのよ。
応接間からお父様が誰かと話している声が聞こえる。
「すみません、娘は用意に手間取っておりまして・・・・・・」
「いえいえ、女性とはそういうものですよ。キチンと準備をしていきたいものですよね。楽しみにお待ちしております」
落ち着いた低めの声を聞いて、心地よいと思った。きっとセージ殿の声だろう。
さっきまでの疲れが飛んで、興味がわいた。
私は早く姿を見てみたくて、ノックもせずに扉を開けた。
「レイラ、ノックもしないで部屋に入るとは・・・・・・」
そんなことよりもセージ殿はどこかしら?
彼は黒い髪だというので、すぐにわかった。
セージ殿らしき人物は私と目が合うと、軽く頭を下げ「いえいえ、構いませんよ」と言った。
彼は猫の獣人を連れていた。彼の愛人なのかしら。普通見合いの場に愛人を連れていく?
彼女は少し気分がよくないのか、耳が少し下を向いている。
肖像と同じく黒い髪だった。そして、黒の上着とズボンの変わった服を着ている。
「初めまして、レイラさん。田村聖司です」
彼はソフアから立ち上がって、私に頭を下げた。動作の1つ1つが丁寧だった。
肖像を見たときはさえない人だと印象があったが、実際に会えばそうじゃないと感じる。
お父様は私に耳打ちをした。
「礼儀にうるさいようだから、粗相をするなよ。彼に気に入られるようにしろ」
だったらなんで私に見合いを勧めたわけ?私よりももっといい子もいるのに。
お父様の目的はなんとなくわかっている。セージ殿は結構顔が広いらしいから、彼を利用しようとしているんだわ。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【参照2300、ありがとー!】 ( No.184 )
- 日時: 2015/06/18 21:06
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
私とセージ殿の見合いなのに、お父様はセージ殿にずっと話しかけていた。
話題はうちの自慢ばかり。
セージ殿は嫌な顔をせず、相槌をうっている。
第3者の視点から見ると、お父様が一方的に話をしているように見えた。
いつまで話続ける気なのかしら。退屈だわ。
そのとき、猫の獣人と目があった。私と目が合うと、彼女は少しビクリと体を震わせた。
なんだかオドオドしてるわね。
なによ、私を化け物かなにかだと思ったの?
セージ殿は彼女の様子に気づいたようだ。
「無理して来ることないって言ったろ?ルチカ。帰るか?」
ルチカに話しかけるセージ殿はとても穏やかだった。
彼女の返事を聞く前に、反応したのはお父様だった。
「セージ殿、困ります。どうか、娘と少しでもいいので話してください。自慢の娘です」
自慢の娘という割りにさっきまで私の話題を出さなかった癖に。
お父様があまりにも必死にお願いするものだから、ルチカは気をつかって「私は大丈夫です」と言った。
お父様はなんとかセージ殿を帰らせないよう、話題を提供する。
「ところでセージ殿、この猫の獣人はあなたの愛人ですか?」
ルチカの表情が強ばったのがこちらからみてもわかった。
セージ殿は答える。
「いえ、大切な家族なんです」
「さすがセージ殿。あなたの影響で私も考えが変わったのですよ。獣人って可愛いいですよね」
セージ殿は「ええ」と答える。おそらく可愛いといっても、違う意味だと思うけど。
そして、お父様はセージ殿と同類だと思ったのか、話題は愛人のことに移った。
お父様の愛人のことなんて、どうでもいいわ・・・・・・。
セージ殿は嫌じゃないのかしら。はっきり断ればいいのに。
私は腕を組んで、時間が過ぎるのを待っていたが、我慢の限界だ。
元々どうでもいい見合いだ。
外に出たくなってきた。
「お父様、つもるお話もあると思いますので、私は外に出て参ります」
お父様は顔をしかめた。
「レイラ、勝手なことは許さんぞ」
どっちが勝手よ?
見合いも私抜きで話を進めていたのに。
そんなお父様を止めたのはセージ殿。
「いえ、よければ一緒に散歩しましょうか。外を歩くのもいいですよ」
- Re: リーマン、異世界を駆ける【超→感↓激↑2500!!!】 ( No.185 )
- 日時: 2015/06/19 19:42
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
見合いが終わって、私はルイザに説教されていた。
「初対面の人に対して腕を組むなんて、おやめください。増してや相手は見合い相手なんですよ。見ていられませんでしたよ」
そんなこと言われなくてもわかってるわよ。お父様ばかり話していて退屈だったもの。
いっそお父様がセージ殿とお見合いすればいいのに。
ルイザは今度はにこやかに言う。
「セージ様って方は不思議な方ですね。でも、お優しそうな方でしたね」
確かにそうだった。
庭を散歩して、少しだけ話はできたことで、悪い人ではないとわかった。
今まで会った殿方は自分がいかにすごいか自慢話ばかり。
セージ殿との会話は趣味や日常のことなどとりとめのないこと。彼の口数は少なかったが、私はとても落ち着いた。
故郷のことはあまり話そうとしなかった。
獣人は大切な家族だと言った。私も獣人に世話されたから、似たような考え持っている。
ただし、なにかある度にルチカのことを気にかけていたけれど。
余程その子のことを気に入ってるみたいね。
普通なら愛人にするけど、彼がそうしないのは何か理由があるのかしら。
今までの男性の中では1番マシかもしれないと思っていたが、彼とルチカの間に入る自信はない。
結婚は諦めていっそ女領主として生涯を全うしようかしら。
しかし私の気持ちとは裏腹に、お父様はセージ殿を大変気に入ったようだ。
「見合いを断るだと?レイラ、いつまでも子供じゃないんだぞ。
彼は社交界のスターになるんだぞ。近いうちに陛下に会うかもしれない」
こんなこと言ってるけど、正確にいうとルチカが気に入ってるみたい。彼と仲良くなってルチカを貰おうという気だわ。
お父様はうちに来てもらうよう、セージ殿に手紙をかいた。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【超→感↓激↑2500!!!】 ( No.186 )
- 日時: 2015/06/20 13:15
- 名前: 谷川シャルロッテ (ID: WoqS4kcI)
わぁ、レイラ達が登場している…………!!!
オラワクワクしてきたぞ…………!!!
いやまぁ最初からずっとワクワクしてますけど…………!!!
それにしてもセージさん、相変わらず格好良くていらっしゃる。人を助けたり獣人の扱いに影響を与えたりスーツ流行らせたり……しかし何というか、本当に獣人に優しいのも本当にスーツが似合ってるのもほぼセージさんのみっていうのが、嬉しいような悲しいような……奴隷同士に深刻な問題が発生しなければいいんですけどねぇ。あとセージさん、その見合いはやばい。ルチカが危ういぞ。皆とりあえず頑張れ。
セージさんのご活躍とルチカちゃんの無事を願って……更新、これからも応援致します!
- Re: リーマン、異世界を駆ける【超→感↓激↑2500!!!】 ( No.187 )
- 日時: 2015/06/20 13:47
- 名前: HIRO (ID: AdHCgzqg)
ぽいスー、久々にコメントしてみた。
全部読んでるけど、コメントは面倒だから
あまりしない。
フォルドが出たときはテンションあがりましたよ。
なんと言うフリーダム
リーマンにご迷惑おかけしました。
しかしリーマンの異世界への影響がすごいな
これがホントのリーマンショック。
これからも応援してます。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【超→感↓激↑2500!!!】 ( No.188 )
- 日時: 2015/06/20 15:00
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
谷川シャルロッテさん
いらっしゃい、コメントありがとうございます!
レイラさんが私の中でかっこいい系のキャリアウーマンになっています。
最終章も考えており、たぶんレイラさんの行く末は誰も想像できないだろうと考えていますw 驚く様子を楽しみにしております。
人間に甘やかされると奴隷も付け上がってくるのですよねぇ・・・
エリックさんはもともと優しいし、
リードマン商会や軍隊は平等に扱われるから、獣人の根性もひねくれていない
性格が悪い奴が主人になると、奴隷の性格も悪くなるというか・・・
獣人同士で考えの違いで争いになるかもしれません
セージは一回断っても何度も押されると受け入れてしまうタイプだし、
ルチカはなんか魔の手が忍び寄ってるし…
これからもよろしくお願いします。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【超→感↓激↑2500!!!】 ( No.189 )
- 日時: 2015/06/20 15:06
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
HIROさん
来てくれてありがとうございます!
読んでてくれてありがとうございます。
これでフォルドさんは終わりと思ったかい?
もう一度登場しますよw22章ぐらいを予定しています。(このあたりでちょっとフォルドさんがかっこ悪くなるかもしれんけど、重要なところなんよ。許して)
セシリーさんとの関係で期待されていたところを応えることになるかもしれません。
リーマンショックwwwうまいこと言いますね
セージさんがほんとに嫌なら何も言わずに笑顔で追い返しますw
悪態ついてるけど心の中では気に入ってるみたいです。(たまにはまたこねーかなー)みたいな
- Re: リーマン、異世界を駆ける【超→感↓激↑2500!!!】 ( No.190 )
- 日時: 2015/06/20 15:08
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
セージ殿に手紙を出してから2ヶ月ほど経ったときのこと。
お父様はセージ殿に何度か手紙を出していた。
お父様は私に見合いの話題は出さなくなった。きっと私がセージ殿とお付き合いをすることを期待しているのだろう。
セージ殿は『今度機会があればもう一度伺います』というような内容の返事をだしたようだが、来る様子はない。
「ええい、セージ殿はいつ来るのだ!?」
お父様は最初はご機嫌だったが、だんだんイライラとするようになった。
ルイザは「きっとセージ様はたくさんお仕事があって、忙しいのでしょう。気長に待てばいいと思いますよ」となだめている。
確かセージ殿は『今度』といったかしら。その『今度』がいつになるのかはっきりと言っていない。
すごく分かりにくいけど、もしかして遠回しに断ったのかしら。
考えてみれば、彼はお父様と話しているときは決して否定的なことを言わなかった。
わずかでもお父様の機嫌を損なうことはなかったと思われる。
きっと身分問わず様々な人と仲良くなれたのも、彼が八方美人なところがあるからだろう。
彼が故郷にいたときは商人をやっていたというのもわかる。
社交界のスターか何か知らないが、はっきりしない男は嫌いだ。
私はもうはっきりしない彼に愛想をつかせてしまったが、お父様はますます執着していた。
「レイラ、お前からも手紙を出しなさい」
「嫌よ。私はもういいと思ってるの」
「何がもういいんだ、わがままもいい加減にしろ!ルイザ、お前が代筆しろ」
お父様は賢いルイザに命令するが、ルイザは首を横にふる。
「申し訳ありませんが、結婚相手を決めるのはレイラお嬢様だと思います」
普段は小うるさいルイザだが、なんだかんだで私の味方だ。
命令を断れば、鞭を打たれることもある。
イザとなったら私が全力でかばうつもりだが、お父様はそれどころじゃなかったようだ。
普通、女性は幼いころから婚約者がいて、15前後で結婚する。
私に婚約者がいなかったのは、両親が愛人にかまってばかりで私を放置していたからだ。
今まで親代わりにルイザたちに育てられていた。相談もルイザにしていた。
ここまで放置して、今更顔もしらない相手と見合いをしろ、結婚しろなんていうお父様にウンザリしていた。
お父様は「もういい、代わりの者に書かせる」と言った。
そういえば、セージ殿もこの歳まで独身だったのよね。
どうしてかしら、何か理由があったのかしら。
結婚もせず、何をしていたのだろう。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【超→感↓激↑2500!!!】 ( No.191 )
- 日時: 2015/06/20 19:48
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
とうとうお父様はセージ殿の館にまで使者をだした。
さすがにここまでされたらセージ殿も行かないわけにはいかなかったようだ。
「なかなかお伺いすることができず、お嬢様にも不快な思いをさせて申し訳ございません」
セージ殿は言い訳せず謝罪した。私は不快な思いなんてしてないのに。
お父様はセージ殿がやっと来てくれたから上機嫌だ。
「良いのだ。こうしてきてくれたのだから。
多忙だったのだろう。最近、色々やっているようだな。今日ぐらい羽を広げて休みなさい」
セージ殿の近くにはルチカがいる。お父様はルチカに視線が釘付けだった。
ルチカはお父様の視線から隠れるように、セージ殿の背後に移動した。
お父様は私の印象について聞いていたが、セージ殿は「1度だけでは決められないので・・・・・・」と言葉を濁した。
本心はどうなのよ?
リードマンや他の人に何度も頼まれたから仕方なくじゃない?
そんなセージ殿にお父様は言った。
「そうですか、では今日はどうなさいますか?娘と散歩しますか?」
「ええ、また皆様も一緒に行きましょう」
ルチカを連れていこうとするセージ殿をお父様は制止した。
「セージ殿。今日は娘と二人きりで行ってください。
たまには獣人抜きでもいいではありませんか」
セージ殿はルチカに目を向けたが、ルチカは「私は大丈夫ですから、行ってらっしゃいませ」と言った。
二人きりで庭を歩く。
彼は人間だろうと獣人だろうと関係なくすれ違えば必ず挨拶する。
獣人は驚いた様子だった。挨拶されることに慣れていないのだろう。これは仕方ないところもある。
しかし、人間のほうは無言で軽く頭を下げただけだった。
全く、恥ずかしくなるわ。
セージ殿は私の歩くペースに合わせてくれる。
「レイラお嬢様のご両親は獣人が本当に大好きなんですね。珍しい獣人がたくさんいますね。レイラお嬢様はどんな獣人がお好きですか?」
両親が競うように獣人を集めているから私も同一視されるのは仕方ないけど、むっとした。
「両親と一緒にしないで頂戴。私には愛人はいないし、これからも作る気はないわ」
するとセージ殿は「それは失礼しました」と言った。
- 第20章 レイラside ( No.192 )
- 日時: 2015/06/21 10:44
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
そろそろ聞いてみてもいいかもしれない。
どうせ断るつもりだし。
「ねぇ、あなた本当に見合いする気あるの?」
「ええ。この国のことを何も知らない私がお嬢様とお見合いできるなんて恐縮です」
上っ面の世辞なんてどうでもいい。
今まで見合いを断ったり断られたりしていたのは、見合い相手よりも獣人や子供にべったりだったらしい。
きっとセージ殿のそのような様子に愛想を尽かせたのだろう。
しかし、セージ殿の様子がどこか不自然に感じた。ルチカに構いながら私をチラチラと見ていた。
この男は何か隠しているような気がする。
「まさか私を試してるの?」
すると、セージ殿の笑顔の仮面が剥がれ落ちたような気がした。
そのあとすぐにゲラゲラと笑いだした。
「あはは、バレたか!君、なかなか賢いな」
試してたの!?なんて汚い男!
今までのセージ殿の印象がガラリと変わった。どちらかというとこっちが本性なのだろう。
セージ殿は言う。
「試す真似してごめんね。見破ったのは君が初めてだよ」
「なんでそんなことしたのよ」
「本当のことを言うとね、君が・・・・・・」
そのとき、ルイザが血相を変えて駆け込んできた。
「セージ様、お嬢様!」
「ルイザ、ちょっと待って!今、小説よりも面白いかもしれない話が聞けるかもしれないのよ!」
「それどころではありません!セージ様、ルチカちゃんが危険です!」
セージ殿の顔がピクリと反応する。
迂闊だった。
お父様が私たちを二人きりにしておいた意図に気づくべきだった。
「レイラお嬢様、少し失礼します」
と言ってセージ殿は私を置いて立ち去ろうとする。どこに行くつもりなの?
冷静じゃなくなってるのね。
私はセージ殿を引き留めた。
「やみくもに探すつもり?心当たりがあるわ。着いてきて」
私はセージ殿の腕を引っ張った。
女性が男性の腕を引っ張るなんて、もってのほかだけど、そんなこと言ってられない。
目指すのはお父様の私室。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【超→感↓激↑2500!!!】 ( No.193 )
- 日時: 2015/06/21 14:11
- 名前: 谷川シャルロッテ (ID: WoqS4kcI)
る、る、ルチカちゃーーん! ちくしょーーエロ親父め、ルチカちゃんに手を出すなーー!! 日本ではお前のことをロリコンっていうんだぞーーー!!!
……ただしセージさんは格好良くて優しくて両思いだからもっとルチカちゃんとルチキーな時間をルチキングルチキングしていいんですよと言ってあげたいです(真顔)
いやぁ……セージさんが言いかけた話も気になるし、レイラのこれからにも興味津々ですが、まぁ見事にそれらへの意識を軽々と超えてきやがりましたロリコン親父そこへ直れ成敗してくれるわ。
あんまり短期間に複数回コメントするのもアレかと思ったんですが……ね。ルチカちゃん後ろーー! となってつい、ね。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【超→感↓激↑2500!!!】 ( No.194 )
- 日時: 2015/06/21 14:54
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
コメントはいくらでもくれてもいいですよw
コメントとカロリーは人間にとって必要ですのでw
レイラ編は今日の夜に終わります。
ですので、今日の夜に判明します
改めて下書き見たけど、セージがかなりヤンキーです。
そして、やってることが汚い
セージとルチカは一応両想いですが、
犯罪だから!とセージの方が手を引いてる感じです
- 第20章 レイラside ( No.195 )
- 日時: 2015/06/21 19:56
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
見張りを無理矢理押し退けて足を進めた。
お父様の部屋から予想通り声が聞こえた。
「いやっ、やめてください!」
「暴れても無駄だ、もう君は逃げられないんだよ。
異国の者か知らないが、こんなに可愛らしい獣人を愛人にしないなんて間抜けだな」
セージ殿は扉をあけた。
ルチカは複数の獣人に押さえられており、衣服が乱されていた。
お父様が気づくよりも、セージ殿の動きが早かった。
勢いよく走りだし、跳躍してお父様の顔に飛び蹴りした。
商人とは思えない程あまりにも鮮やかな動きに驚いたけど、私にもやるべきことがある。
「あなたたち、その子を離してあげなさい」
ルチカを押さえていた獣人は唖然とした表情でセージ殿を見ている。お父様の命令だから仕方ないところもあるけど、私は「早くしなさい!」と語気を強めた。
一人の獣人がセージ殿に飛びかかろうとしたけれど、セージ殿は鋭い視線で牽制した。
「動くなよ。てめえの主人の首をへし折られたくなければな」
ほんとにこの人商人なの?
そして、セージ殿はお父様を見下ろした。
「悪かったですね、間抜けで」
「違う、この獣人が私に手をあげて・・・・・・」
「ルチカは人見知りなんですよ。後で話は聞きますが、僕はルチカを信用します。家族ですから」
その声には抑揚がなかった。
セージ殿は続ける。
「僕はね、お父さん・・・・・・
獣人は今まで奴隷にするのが当たり前だという国の方針については僕はどうこう言いません。
でもね、前にも言いましたが、僕にとって獣人は家族です。
一緒に暮らすなら、大事な家族を傷つけるような人は僕は困ります。ルチカを傷つけたことは僕は許せません」
お父様の顔からみるみる生気が抜けていく。
はっきりと言っていないが、断ったことを理解したのだろう。
そのあと、セージ殿は私に「お父様を傷つけてしまい、申し訳ありません」と謝罪した。
まあ、彼も私の家族を傷つけたからね。きっともう話は進展しないでしょ。(私は見ていてすっきりしたからよかったんだけど)
「あ、そうそう。さっきの話いいかけていた話なんだけど・・・・・・」
セージ殿は私に説明をした。
結婚する気はあったのだという。機会があれば、らしいが。
獣人を差別する人間は多いから、そのような人間を妻にして一緒に暮らすと問題があるだろうと考えていた。
そこでセージ殿は私が獣人に対してどう思っているのか知るために、今まで数々の相手に試していたという。
わざと見合いの場に獣人を連れてきて、必要以上に獣人にかまい、どう反応するか観察していたようだ。その穏やかな表情で、私たちの行動を1つ1つ、隅々まで・・・・・・
少しでも不快そうな反応を見せたら即不合格にした。
私が乗り気じゃないのをわかっていただろうし、お父様がルチカに襲いかかったのが決定的だったのだろう。
他人を使うなんて、なんて狡猾な奴なんだろう。
おそらく彼が望む条件で相手は現れないだろう。
「まあ、結婚は重要なことだし、本人が決めたらいいんじゃねーの?するしないもさ」
なんだか彼の考えが私に似ているかもしれないと思った。
私たちがもっと違う出会いをしていたら、もしかしたら・・・・・・
こう思っているということは、私、失恋したかもね。
別にいいわよ、あなたみたいな汚い男。後で悔しがらせてあげるから。