複雑・ファジー小説
- 第4章 〜リーマンside ( No.24 )
- 日時: 2015/03/23 20:55
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
気がついたら真っ白な世界だった。
辺りを見回しても、何もない。
ここはどこなんだ?
俺はボンヤリ考えた。
「やっと気がついた」
変声期の最中のような独特の声が聞こえて、振り向いた。
細身で年齢不詳の男が立っている。男は眉間にシワを少し寄せている。
「君ねぇ、あの鞄を持っていて、家も護衛も持たないってどういうつもり?自分の立場わかっているでしょう?」
なんのことだかさっぱりだ。
なんで訳のわからない場所で初対面の男に説教されているんだろう。
俺が何も答えていないと、男ははっとした顔をした。
「あ、ごめんね。君に何も説明していなかったね」
初めからそこにあったかのように、木製の椅子が二つ出現する。
男はそこに座る。つられて俺も座る。
頭の中では座ってはいけない、こいつのペースに巻き込まれると警戒していたが、体が勝手に動いてしまっていた。
男は自己紹介をした。
「はじめまして。僕は神です」
は?
頭がついていけない。
面接で何人か顔を合わせたことがあるが、いきなり自己紹介で【神です】というやつは中2でもいない。
俺の反応は想定内のようで、男はヘラヘラ笑っている。
とりあえず、俺をこのおかしな世界に送ったのはこいつって認識でおk?殴っていい?
こいつのせいで1000万の利益がパーになったんだよな?
「うん、いきなり言っても信じてくれないだろうね。
まあいいや。
それよりさっき、襲われて鞄取られたでしょ」
思い出した。
昼間、ルチカと一緒に服を買いに行った。いつまでも下着みたいな服を着せるわけにはいかないし、この世界にいるには俺も服が必要だった。
そのあと、俺の鞄を奪おうとごろつきに襲われて、乱闘した。
まあ、親戚に元陸軍の軍人がいて小さい頃から戦争ごっこで鍛えていたし。
学生のころは格闘技なんてやっていた(段はもっていない)から、殴りあいの喧嘩には自信があった。
「ああ、でも鞄は取り返した。なんか蛇とか入ってたんだけど」
泥棒から奪われたとき、サラリーマンの鞄に入っているはずがない蛇が出てきた。
男はにやりとする。
「その鞄はね、この世にあるもの全てが入っているんだよ」
彼の言ったことを理解するまで時間が少しかかった。
しかし、そんな俺の様子を楽しんでいるように見えた
- Re: リーマン、異世界を駆ける【いろいろ募集中】 ( No.25 )
- 日時: 2015/03/24 22:24
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
確かにスマホを見てみると、所持金は9が数えきれないほど並んでいた他に、たくさんのアイテムがずらりと画面を埋め尽くしていた。
読むのもだるいので、放置していたが。
男は説明をする。
「この鞄にはこの世にあるあらゆるものが入っている。しかも、君にしか使えないんだよ」
「そうなんだ」
だからルチカは鞄から何も出すことが出来なかったし、ごろつきの場合は蛇がでたのか。
「さらにお金は無限に入ってるよ。君が10回人生で遊んで暮らしてもお釣りが来る。
だからさ、もっと派手に使っていいんだよ」
「そっか、いくら使っても減らないからもしかして偽物じゃないかと思っていたんだ」
ならばこれからは遠慮なく使わせてもらおう。
使い道はわからないけど。
「うん、本物だから安心して自由に使ってね。」と男は微笑んでいる。
誰もが宝くじが当たったらどうするかと妄想するが、俺は今そのような状況になってしまった。
奴隷を手当たり次第買うということもできるが、俺が世話しきれないし。
あんまり大金を使うとトラブルが起こりそうだし。
いざ大金を手にしても意外と使い道が無さそうだなー・・・・・・
・・・・・・ってどうしてこうなったんだ、俺の鞄。ただのブランドものの鞄だよな。
これ、なんていう二十二世紀のロボット?しかも俺専用?
チートすぎるだろう。
「なあ、なんで俺の鞄にそんなものが入っているんだ?」
すると、神は切ない微笑みを浮かべて答えた。
「それに入っているのは前世の君の持ち物なんだよ。」
前世?前世なんてあったのか。
スピリチュアルが大好きな人間なら、食いつきそうな話だな。
俺が生まれる前はどうだったのかと質問しようとした。
神はパン、と手を叩く。
「・・・はい、タイムリミット。世界中の富を持っている君はこれからも狙われるだろうね。だからちゃんと家と護衛を持つんだよ」
そして強制的に夢から覚めた。
昨日の泊まった部屋の風景だ。
なあ、神ってあんな自分勝手でいい加減なのか?
- 第4章 〜リーマンside ( No.26 )
- 日時: 2015/03/25 21:21
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
目が覚めたら、部屋に朝日が差し込んでいる。
ああ、風呂に入れないのが辛い。
2日連続で風呂に入っていない。
宿に風呂はあることはあるのだが、混浴だった。
皆普通に入ってるし。隠さないし。
シャイな日本人、女性の裸を見るわけにもみせるわけにもいかない。
顔を洗う程度で我慢していたが、限界が近い。
俺、毎日風呂に入らないと落ち着かないんだよ。
ふと体に布団がかかっていたことに気がついた。
それはルチカがかけてくれたのだとわかった。
ルチカは俺の隣で体を丸めてスースー寝息をたてながら眠っている。
昨日、殴られた跡は腫れてなくてよかったな。
ベッドで寝てろって言ったのに。
ありがとうな、ルチカ。
俺はルチカに布団をかけてやる。
ルチカが呟いた。
「お母様・・・・・・」
こんなに小さいのに、母親と引き離されて辛かっただろう、我慢していただろうな。
ルチカの耳がピクリと動く。
目をゆっくり開けた。
「セージ様・・・・・・」
青い瞳が俺を見る。
「おはよう、ルチカ。朝御飯取ってくるから、顔あらっといて」
「私も行きます」
むくりと起き上がる。置いていかれるのが辛かったんだろうな。
まだ眠たそう目だな、待っていてもいいのに。
かわいいやつめ。
俺は鞄をもち、朝食を取りに行くために部屋をでた。
部屋から帰ると、宿の主人が部屋を漁っていたのが見えた。
念のために鞄を持っていっといてよかった。
俺と目が合うと、主人はごまかし笑いをする。
うん、スマイル0円!!
俺はそいつを叩き出した。
飯を取りに行くために少しの間だけ部屋を空けたら、宿の主人に部屋に入られた。
油断も隙もないな。平和ボケの日本の基準でものを考えたらダメだな。
これは本当に家が必要だ。セキュリティ万全な家。
後は護衛か。いくら喧嘩が強くても、一人では限界があるよな。
お金はいくらでもある。
しかし、どちらも慎重に選択をしなければならない買い物だ。
そして焦ってはいけないが、迅速に行動しなければならない。
とりあえず、あの宿はないな。
他の宿も安全とは限らないが。
そうだ、ルチカに伝えなければならないことがある。
「ルチカ。食事しながらでいいから、聞いて欲しいことがある」
ルチカはパンを皿に置いて、耳をこちらに向ける。
「この鞄は俺にしか使えないようだ。ルチカは触らないでほしい」
ルチカはコクコクと頷いた。
まあ、いきなり重くなったり、蛇が出てきたりしたらたまらないだろうしな。
まずは家だ。
風呂とトイレがついていて、セキュリティがしっかりしている家。
あと、ルチカの個室も必要だな。護衛も一緒に暮らすなら、それなりの部屋数がいる。
食事が終わったら俺はスマホで不動産屋を探した。
街には三件見つけた。
この世界のことがわかるなんて、まさかあの神とやらは俺のスマホを勝手にいじったのだろうか?
あの小バカにしたような顔が思い浮かぶ。
まあ、情報は大切だ。むかつくが神に感謝。
地図をメモに写したら、俺は宿をチェックアウトした。
もうこの宿には用はない。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【いろいろ募集中】 ( No.27 )
- 日時: 2015/03/25 22:28
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
序盤のルチカちゃんが非常に可哀相で思わず涙腺崩壊してしまいました。重いテーマながらも適度にギャグも挟まれており、スラスラ読み進めることができます。最高に楽しい物語で、続きがとっても楽しみです!
- Re: リーマン、異世界を駆ける【いろいろ募集中】 ( No.28 )
- 日時: 2015/03/25 22:54
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
モンブランさん
うれしい感想・・・!ありがとうございます
いろんな人に支えられているのだなって思いました
セージとの出会いでルチカをはじめとする登場人物の人生も大きく変えていきます
感想をもらったりするとストーリーもちょっと変わることがあったりするかも
うん、もうちょっと重い話にする予定だったの…w
- Re: リーマン、異世界を駆ける【いろいろ募集中】 ( No.29 )
- 日時: 2015/03/26 21:03
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
一件目の不動産屋。
どうやら個人で風呂とトイレを持つ家はかなり裕福なのだそうだ。
庶民は風呂は公衆浴場(混浴・しかも毎日ではない)。トイレは壺だ。
「3DKぐらいでいいんですよ。広い家は掃除が面倒ですし」
「は?スリィ・・・・・・?」
「5畳ほどのダイニングキッチンと部屋が3つついてる家です」
不動産屋の店長はキョトンとしている。3LDKは通じないか。
「なるほど・・・・・・では、こちらはいかがですか?」
店長に勧められた物件は街からかなり遠い。地図を見ると周囲は真っ白で何もない。
「街までどれぐらいかかりますか?」
「馬車で3日ですよ。いい物件でしょう。こちらは350年の歴史がある・・・・・・」
店長の話を半分以上聞き流す。
なにがなるほどなんだ。アクセスくそ悪いじゃないか。
歴史なんてどうでもいいんだよ。セキュリティだよ。
有名人が住んでたとか知らねえよ。風呂とトイレが必要なんだよ。
俺の希望聞いてたか?無視しやがって・・・・・・。
俺が謎の金持ちだという噂は各方面に広まっており、店長は俺の希望を無視して高価な物件を次々と紹介した。
営業失格だな。相手は要望を形にしているとは限らない。
客自身が気づいていない要望にいち早く気づくのも仕事の1つなのに・・・・・・
結局、俺の理想の不動産が見つからず、一件目を後にした。
「セージ様・・・落ち込まないで」
ルチカが上目使いで見てくる。
うわ、可愛い。あの不快な営業の後の癒しだよ。
「大丈夫だよ。ここで決まるとは思っていないから。あと二件あるし」
まあ、家なんて一生ものの買い物だし、そんなに簡単に決まるわけがない。
高価な物件は周囲が山や林が多く、街へのアクセスが悪かった。
また、広大な畑と小作人というオプションつきだ。
自分の世話で手一杯なのに、使用人の世話までできないぞ。
おまけに街から遠いと、買い物や病気で医者にかかるとき、非常に不便になる。
街中に屋敷はあっても、風呂かトイレがなかったりしたため、パス。
異世界で家選びって難しいな。
もう午後になる。
ルチカと昼飯食べたら、もう一件不動産屋に行くつもりだ。
そのあと、宿を探しだな。
いい部屋は早めに確保しなければならない。
ベッドが1つだけの部屋なんてもう嫌だぞ。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【いろいろ募集中】 ( No.30 )
- 日時: 2015/03/26 21:33
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
セージくんはこんなにたくさんお金があるのですから家を建てた方が早いのではないかと思いました(笑)
- Re: リーマン、異世界を駆ける【いろいろ募集中】 ( No.31 )
- 日時: 2015/03/27 21:05
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
確かに!自分の家が中古だからその発想がなくて(それ、言い訳www
家建てるのって結構時間かかるので、一刻も早く家を買いたかったのです
調べてみると、40坪で半年
まず設計でセージさんがものっそいわがまま言いそうです。
3.27追記
モンブランさんのお言葉で今日の物語が少し追加されました。
- 第4章 〜リーマンside ( No.32 )
- 日時: 2015/03/27 21:07
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
二件目も同じような結果だった。
この世界の営業はどうなっているんだ。間違っているだろ。自分の利益を優先しすぎだ。
まあ、向こうからしたら、難儀な客が来たなって思われているだろうけど。
最悪見つからなかった場合、ホテルに住む方法もある。
店長が盗みにはいるようなあんな安い宿じゃなくて、風呂とトイレつきの宿。
もしくは一から家を建築する。これは時間かかるけど自分好みにカスタマイズ可能だ。ただし、当分はホテル暮らしだ。
金で安全と快適を買う。これが真理だ。
あの神も言ってるんだし、金持ってるんだからじゃんじゃん使わないとな
いい宿は早めに探さないと、空いている部屋が無くなってしまう。俺は宿を探すため、スマホを見ながら歩いた。
「わっ!?」
うつむきながら歩いていたため、何かとぶつかった。歩きスマホは危険だよな。
俺がぶつかった奴は荷物を大量に持っていたらしく、バタバタと落ちてきた。
「大丈夫っすか!?」
見上げると黒人・・・・・・いや、獣人だ。
でかい。でかいな。2メートルはありそう。
褐色の肌に髪質が固そうな黒髪の牛の獣人。
体格はがっしりしていて筋肉質だ。
牛の獣人はしゃがんで俺を心配そうに見ている。
「いや、俺が歩きスマホしてたから悪いんです。そちらもお怪我はありませんか?」
「え?あぁ・・・・・・はい」
こいつといい、なんで獣人を気遣ったらキョトンとした顔をするんだろうなあ。
「何をやっているんだ!」
牛の背後を歩いていた人間は彼に鞭を打った。
ピシャリと音をたてる。
「うっ・・・・・・」
牛は顔を歪ませ、呻く。しかし、人間に対して抗議もしない。
人間は牛に繋がれている鎖を引っ張った。
「さあ、早く拾え!行くぞ!」
この牛の獣人、首輪と足枷がされている。こんな状態で荷物は運びにくいだろう。
俺はスマホを鞄にしまい、立ち上がった。
「そんなにたくさんの荷物を運ぶのは大変でしょう、俺も手伝いますよ」
人間は俺のほうを見る。
「いえ、あなたに奴隷の仕事をさせるわけには・・・・・・」
「俺のせいで彼の仕事を邪魔してしまったんです。せめてお詫びだけでもさせてください」
俺はその辺に転がっている荷物を1つ拾う。結構重いな。
それをあいつは5つも重ねて運んでいたんだ。危険すぎる。
いや、牛の使い方間違っていないか・・・・・・?リヤカー使ったほうがよくない?
この荷物は俺の力では普通に運ぶのはほぼ不可能。
なので俺は鞄の力を借りることにした。
台車があれば、楽になるだろう。台車よ出てこい。
すると手に固いものが触れる。
あったよ・・・・・・台車が。
ほんとになんでもあるんだな。
それを掴み、引っ張り出す。
台車は折り畳み式だが大きくて、鞄が潰れるのではないかと心配になった。
鞄より大きなものをだすのは不可能だな。壊したら大変なことになるし。
幸い鞄が丈夫だったお陰で潰れることなく済んだ。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【いろいろ募集中】 ( No.33 )
- 日時: 2015/03/28 11:37
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
台車に荷物を3つ乗せる。
「すまねぇな。荷物運びは俺のオハコっすから気にしないでください」
牛の獣人は言ったが、俺は「いいっすよ、そうしないと俺の気が済まないから」と押しきった。
全部乗せてもいいけど、こいつは自分を責めるだろうし、あの人間が嫌そうな顔するからな。
「ルチカは俺の前を歩いて、通行人にぶつからないようにしてくれるか」
「はい」
俺達は前に進んだ。
懐かしいなあ、デパートでアルバイトやってたときを思い出すよ。
台車を運ぶときこうするんだよ。
恐れ入ります、台車通りますってな。
思わず口に出してしまう。
それにしてもあの牛の獣人、こんなに重い物をよく運べたな。
なんか強そうだし。
こういうやつボディーガードに欲しいな。
ちょっと話したらいいやつそうだし。
くれないかな。いや、まずはそいつらのためにちゃんとした家が必要だな。
あれこれ考えているうちに目的地に着いたようだ。
なかなかでかい屋敷だなあ。
「ありがとよ。助かったぜ」
牛の獣人は言う。俺に対してスゲーフランクだな。
敬語使われるより、そっちのほうが俺にとっていいけど。
俺たちは牛の獣人と別れ、屋敷を離れた。
さて、ホテルを探そうか。
そう思って、振り向いたとき、ルチカの様子がおかしい。
足取りが重く、表情を固くして、うつむいている。
「どうした、ルチカ。気分悪くなったか」
俺が声をかけると、ルチカはハッと顔を上げる。
「なんでもありません、私は大丈夫です。ご心配おかけしてすみません」
首を振って安心させようと笑顔を作る。
なんでもないわけないだろ。目が笑っていないぞ。
営業を舐めるなよ。
思っていることがバレバレだ。
あの牛の獣人が気になるのだろ。
確かに俺が荷物に手を出したせいで罰を受けているかもしれない。
獣人は理不尽なことで罰を受けるのは学んだ。
俺のせいで罰を受けるのは気分が悪い。
俺も気になっていたんだよ。
「あ。俺、忘れ物したみたい。ルチカ、悪いな、着いていってくれる?」
すると、ルチカの顔がパッと明るくなる。わかりやすいな。
俺はさっきまで歩いていた方向とは逆に、屋敷まで向かった。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【いろいろ募集中】 ( No.34 )
- 日時: 2015/03/28 19:58
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
ルチカは猫だから耳がいい。
あの牛の獣人を探すにはルチカが頼りだ。
屋敷には門番が二人立っている。
首輪を着けているから、あれも獣人だろうな。
俺は営業スマイルを浮かべる。
「すみません、ちょっとよろしいでしょうか?先ほどの牛の獣人にお伝えしたいことがございまして、お伺いすることはできませんか?」
二人はお互い目を合わせる。
獣人と話がしたいという人間なんて珍しいだろうな。
そして、片方が口を開いた。
「わかりました。案内致します」
あれっ!?思ったより簡単に入れちゃったよ。
門番の意味ねぇじゃん!
普通なら『申し訳ございませんが、主人の許可がなければ入ることができません』って言われると思って、色々言うことを考えたんだけどな。
とにかく梯子用意して不法侵入する必要がなくなってよかった。
緊急性があっても生きているうちは親に顔向けできないことはできるだけしたくない。
「サイトは恐らく中庭にいると思いますよ。中庭はここを右に曲がります」
そう言って、門を開けてくれた。
おいおい、中を案内してくれないのかよ。俺達が泥棒で違う部屋とかに行ったらどうするんだよ。
この世界の門番がザルでよかった。ありがとう、門番。
あの獣人は、サイトっていうんだな。早く話したいな。
ルチカの体がビクリと震える。なにか聞こえたのか。
「セージ様・・・・・・」
「わかってる。早く行こう」
ルチカの様子からサイトの身によくないことが起こっているようだな。
俺は足を早めた。