複雑・ファジー小説

第5章 サイトside ( No.35 )
日時: 2015/03/29 12:51
名前: yesod (ID: ZKCYjob2)

俺はサイト。
牛族で、スイギュウ村の村長の息子として育った。
村長である親父は強くて優しくて皆から尊敬されていた。
人間との戦争は俺が生まれる前から続いていた。親父はなにかあるたびに最前線に立ち、皆を守った。
俺も将来は親父みたいな立派な牛になりたいという夢があった。

しかし、その夢は叶えるのはできなくなってしまった。
人間との戦争は終わり、俺達獣人は負けてしまったからだ。
親父は人間に殺されてから、人間の侵攻は激しくなっていった。
7歳の俺は奴隷として売られ、家族と離ればなれになった。
売れ残ったやつらは人間の食料になったり、生き埋めにされた。
そいつらを無力で黙ってみているしかないのがつらかった。

俺は奴隷になっても自分を貫いた。
仲間を庇って鞭を打たれたり、牢屋に入れられるのは当たり前。
そんなとき、変な奴に出会った。

黒髪で黒い変な服を着た男。
黒髪なんて珍しいから最初は獣人かと思ったが、人間だった。
そいつとぶつかって荷物を落としてしまう。
なんと、そいつは俺に謝った。
さらに荷物まで運んだ。
格好だけではなく、行動まで変な奴だなと思った。
一緒にいる猫の奴隷は人間の服を着ている。歩きながら時々男と目が合うと、にこりと笑っており、男に対して怯えた様子もない。
大切に扱われているんだなと思った。同時にこの奴隷が羨ましいと感じた。
俺もこの人の奴隷だったらなと思った。
しかし、奴隷は主人を選べない。
少しでもいい主人に買われることを願うのみだ。
帰ったら荷物を運べなかった罰を受けるんだ。

第5章 サイトside ( No.36 )
日時: 2015/03/29 22:51
名前: yesod (ID: ZKCYjob2)

ピシャリ、ピシャリと激しい鞭の音が背中で響く。
俺は罰を受けていた。
荷物を落としたときに、中に入っていたご主人様の荷物を壊してしまったらしい。
とても高価なもので、ご主人様は怒り狂っていた。
鞭打ちなんてよくあること。俺はいつ終わるのかと耐えた。
主人は仁王立ちして、俺が鞭打ちされている様子を見ている。
「お前は何度失敗すれば気が済むのだ!まともに仕事ができないなら処分してしまおうか」
使えない者は処分。
人間にとって獣人は使い捨ての奴隷だという認識が当たり前だった。

「お待ちください!」

突然中庭で声が聞こえた。
声がした方に顔を向けるとあの黒髪の男だ。
背筋をピンと伸ばして、無駄がない足取りで俺に近づく。
「お前は何者だ!」
主人は男に言う。
「挨拶が遅れて失礼致しました。初めまして、私は田村聖司と申します」
男はハキハキとした口調で、頭を下げた。よく通るはっきりとした声で聞きやすい。
主人は全く動じない様子の男に戸惑っている。
「タムラ、セージとやら・・・・・・屋敷に無断で入り、何の用だ」
「緊急の事情があったとはいえ、無断で立ち入り、大変失礼致しました。
さて、ここから本題ですが、そちらの獣人を処分するとお聞きしたのですが・・・・・・。もし、そのつもりならうちに譲っていただけないでしょうか」
譲る?俺は耳を疑った。
この男の奴隷になるのか?
主人も同じことを思ったらしい。
「な、なぜ・・・・・・サイトは頭は悪く、反抗的ですよ。今まで手を焼いていたのですが」
「ん〜、一目惚れってやつですね」
そんな理由、ありか?
男と目が合うと、男は口の端をグッとあげた。
俺は男と付き合う趣味は持っていませんぜ・・・・・・

Re: リーマン、異世界を駆ける【いろいろ募集中】 ( No.37 )
日時: 2015/03/29 19:14
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

サイトさんが気は優しくて力持ちでありながら、どこかボケ要素の強いキャラで非常に魅力的ですね。セージくんは彼を仲間にすることができるのか楽しみです!

Re: リーマン、異世界を駆ける【いろいろ募集中】 ( No.38 )
日時: 2015/03/29 22:17
名前: yesod (ID: ZKCYjob2)

ええ、次回セージ君は仲間にします!
楽しい仲間になると思います
最後の一行は投稿する直前に神が下りてきて付け足しました
シリアス台無しですw

Re: リーマン、異世界を駆ける【いろいろ募集中】 ( No.39 )
日時: 2015/03/30 21:07
名前: yesod (ID: ZKCYjob2)

主人は頷いた。
「わかりました。しかし、ただでとは言いません。サイトは先ほど荷物を壊してしまったのです。
主人になるのなら弁償していただけませんかね?」
主人は壊れてしまった物を見せる。
あれは有名な職人が作った陶器の皿。宝石が埋め込まれていて、高価なものだ。
男は「わかりました」とあっさり言う。あれの価値がわかっているのだろうか?
鞄に手を突っ込むと、なんと俺が壊したものより豪華な皿が出てきた。
見事な細工で金色に輝き、宝石もこちらのほうが大きい。
これはとても高価なものだと俺でもわかる。
主人も目を見開いているが、男は皿を裏返したりして眉一つかえない。
こんなものを持っているなんて何者なんだ。
「こちらとは違うものですが、よろしいでしょうか」
「え、ええ!!もちろん」
主人は驚き過ぎて声が裏返っている。
こうして俺はこの人の奴隷になった。猫の奴隷は俺と目が合うと、にっこり笑った。

男は俺の首輪と足枷を外す。
獣化したら能力があがるから、普段から獣化防止のために首輪や足枷がつけられている。
俺は力があるから特注品だ。
しかし、この男は俺を買った途端、首輪を外しだした。
逃げたらどうするんだ?襲うこともあるかもしれないんだぞ?
男は何を考えているのか、お構い無しにガチャガチャと音をたてて首輪が外されていった。
「よろしくな、サイト」
これが俺と今の主人の出会いだった。

【セージ】と名乗った男は、俺を奴隷にするつもりはなく、好きに呼んでもいいと言った。
ルチカという猫の奴隷は【セージ様】と呼んでいる。
だから俺は【旦那】と呼ぶことにした。すると、旦那は「渋い映画にいるみたい」と笑った。
よくわからないけど、喜んでいるんだよな?

Re: リーマン、異世界を駆ける【いろいろ募集中】 ( No.40 )
日時: 2015/03/31 20:57
名前: yesod (ID: ZKCYjob2)

旦那の素性はわからない。
理由はわからないが、二日前にここにやってきたらしく、金があるだけで家は持っていない。
家を探していたところらしく、条件に合う物件がないと言っていた。

今、宿の受付にいる。
旦那は部屋を取りたいようだが、部屋が空いていないようだった。
店主と少し何か揉めていたようだが、旦那の方が折れて部屋の鍵を受け取っていた。
何を揉めていたのか俺達に詳しくは教えてくれなかった。
「ごめんな、またベッドが1つの部屋になってしまった」
人間が獣人に謝ることなんてない。
なんで謝るんだ?
奴隷は床で寝るのが当たり前なのに。
「謝ることはないっすよ、俺達は床で寝ますから」と言うと、旦那は複雑な顔をした。
奴隷が主人と同じ部屋に入れることさえ、あり得ない待遇だ。

旦那は部屋に風呂とトイレが付いていたのが嬉しかったらしい。
ずっと風呂に入りたかったのだとか。
風呂なんて入ったことがない。奴隷になる前でも池で水浴びしていた程度だ。
ルチカ、俺、旦那の順番に風呂に入ることになった。

旦那はルチカに風呂の入り方を教えた後、部屋に戻った。
鞭を打たれたときにできた傷に薬を塗るらしい。
鞄から薬を出した。この鞄はこの世界にあるものはなんでも出せると言っていた。便利なものだな。
旦那は俺のシャツを脱がして背中をみると、絶句していた。
染みないように丁寧な手つきで塗ってくれた。

第5章 サイトside ( No.41 )
日時: 2015/04/01 20:59
名前: yesod (ID: ZKCYjob2)

空はもう夜。星が綺麗な夜だ。
薬を塗り終わると、俺は窓を開けて空をみた。
俺は星を眺めるのが好きだ。
「星、好きなの?」
「はい」
人間のガキからたまたま盗み聞きした星座の話が頭から離れない。
見上げたら別世界が広がっていると思うと、つい見上げてしまう。
旦那は「ならちょうどいいかな」と鞄から素材がわからない板のようなものを取り出した。
【タブレット】というものらしい。
旦那はタブレットで絵を見せてくれた。
一面の星空、月、そして青いボールのようなものだ。見たことがない光景だった。
「これは宇宙。サイトが見てる星空はこんな空間だな」
信じられない。俺が知りたかった世界がこの板を通して見える。
あの青いボールが俺達が住んでいる星だと説明された。
水は落ちないのか?地面がこんなに平らなのに、丸い星の上に立っているなんて思えなかった。

旦那はこの宇宙に関係のある仕事をしていたらしい。ロケットや衛星を作るための部品を売っていたのだとか。
夜空のような髪と瞳を持つ旦那は知らないことをいろんなことをたくさん知っている。
些細な疑問でも旦那は知っている限りのことを答えてくれた。
わかりやすく説明してくれ、俺は夢中になって聞いていた。

旦那はルチカが風呂から上がってきたら髪を拭いてやったり、風呂の掃除したり、やることが奴隷じゃないか。
俺は旦那とどんな日常を送るか明日が楽しみだった。

第6章入るその前に ( No.42 )
日時: 2015/04/01 22:57
名前: yesod (ID: ZKCYjob2)

【嘘予告】
レイズ・リードマンに屋敷を紹介してもらい、
ようやくマイホームを手に入れたセージ

しかし、その屋敷はブルーベリー色の裸の巨人のすみかだった…

セージ「よくもだましたな!リードマン!!」
逃げる3人。追いかける青い鬼。

とりあえずタケ部屋にあるタンスに隠れよう
セージ「やべえ、サイトが入らねぇ!ルチカ、押せ!」
ルチカ「はい!」
サイト「旦那、俺のことはいいから逃げてください!」

ガチャリ

扉が開かれた。
ホラー&サスペンスの6章 お楽しみに!!