複雑・ファジー小説
- 第6章リーマンside ( No.45 )
- 日時: 2015/04/02 19:30
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
住む家もないのに、先にボディーガードを雇ってしまった。
一目惚れだったし、仲間が傷ついているところを放っておくなんてできないしな。
サイトの主人はどうやって使うのかわからない趣味の悪い皿を欲しいと言ってきたので、俺は喜んで交換した。
サイトと少し話すと、一緒にいると楽しそうだと思った。
それだけで充分な理由だ。
フィーリングって適当だと思われるだろうが、会社にいたときは社員採用の面接をした経験もある。
就職でも結婚でも重要な要素だと社会人になって気づいた。
昨日よりランクが高い宿を選び、部屋を3つ頼んだが、店主は空いていないと言う。
ならばベッドが3つある部屋を頼んだが、そんな部屋はないという。
こいつ、なんだかんだお上品に言ってるがただ獣人を部屋に入れたくないだけだろ。
少しの間、押し問答していたが、二人にあまり揉めている姿を見せたくないため、仕方なく店主から空いている鍵を頂いた。
寝るときベッドは使わず、3人とも床で寝た。二人に勧めてみたけど、遠慮するんだよな。
3人で川の字って就学旅行みたいだな。
明日、サイトの服と俺達の家を探そう。
ますます家を探さないといけない要素ができてしまったな。
ずっとホテル暮らしだと俺も疲れるし。
宿が高級なだけあって、食事も豪華だ。
しかし、朝から肉は重い。
それにソースが酸っぱくて油っぽいんだよ。
食べながら俺が疑問に思ったことが1つ。サイトが肉をモリモリ食っている。
おいおい、いいのか?共食いになるだろう。
「サイト、肉は大丈夫なの?」
サイトは質問の意味がわかっていないのかキョトンとしている。
「へ?俺、好き嫌いはないっすよ」
いや、そういう意味じゃない。
しかしサイトを見ている限り、あまりにもナチュラルに食べているため、特に気にすることはないだろう、と判断した。
朝食を残す俺を見て、二人は心配した。
これが普通なんだけどな。こんなに食ったら腹壊すよ。
- Re: リーマン、異世界を駆ける【いろいろ募集中】 ( No.46 )
- 日時: 2015/04/02 20:39
- 名前: 羊青 (ID: F2lwV46U)
こんばんはー羊青です!
6章......始まりましたね!
ルチカちゃんとセージさん、そしてサイトくんの活躍を楽しみにしています!
特にサイトくんは今まで辛い目に遭っていたのでセージさんのもとで幸せをつかんで貰いたいですっ......!
あ、あと関係ないですが嘘予告の「やべぇ、サイトが入らねぇ!」で地味に吹き出しました。
それではそろそろ失礼させていただきますっ!
更新陰ながら応援させていただきますー!
- Re: リーマン、異世界を駆ける【いろいろ募集中】 ( No.47 )
- 日時: 2015/04/02 23:01
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
羊青さん
こんばんは、コメントありがとうございます!
この二人はつらい人生だったのに、全然心がきれいで…
セージも幸せにしたくなると思われます
嘘予告は青鬼が元だけど
知らない人でてきたりしてるかな・・・
2,3年前のことだから
- Re: リーマン、異世界を駆ける【いろいろ募集中】 ( No.48 )
- 日時: 2015/04/03 21:26
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
そして、重要な問題が発生した。スマホのバッテリーがそろそろヤバくなる。
大切に大切に、必要なときだけケチケチと使っていたが、やはり無限ではない。
あれはこの世界のことがいろいろ載っているため、非常に重要なアイテムだ。
万が一のときの予備にバッテリーは1つある。
そこでバッテリーも無限に出せるか試してみることにした。
結果はバッテリーは手持ちの一個だけしか出なかった。
あの神が【この世にあるもの】って言っていたから、この世界にないバッテリーを出すことは不可能なのだろう。
充電器はこの世界に電気はないため、出番はないだろう。
諦めて、スマホを鞄の中に入れると、手に固いものが触れた。
取り出したのは一冊の黒い本。
一枚のメモが挟まれている。
あの神が書いたものだろう。やたらファンシーな柄だな。しかも丸文字だし。意外と乙女なのか?
『魔法を勉強すれば、なんでもできるから頑張ってね』
魔法?俺魔法使えるの?
俺はこの世界の言語は話せても、読み書きはできない。
さっき取り出した本は日本語ではないため、読むことはできなかった。
待てよ、なら辞書はないか?
ダメ元で手を突っ込むと、辞書が出てきた。
つまり、これで言語の勉強しながら魔法で充電しろと。
あのクソ神、なんでもかんでも事後報告だな。
魔法が使えるなら早くいえよ。いいかげんにしろ
魔法の勉強は後だ。
先に文字を学ばないとな。
この世界に学校はあるのかな?
知識があればいろいろ役に立つことがあるだろう。
ルチカもサイトも学校に行ったことがないという。
可能なら二人にも行かせてあげたいな。
- 第6章リーマンside ( No.49 )
- 日時: 2015/04/04 12:28
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
サイトの服はルチカのときと同じ店で購入した。サイトはでかいので、特注品になった。
そこはほら・・・・・・金の力で。
金額を聞いて、サイトは目を白黒させていたが、俺には痛くも痒くもない。
その後、俺は3件目の不動産屋を訪ねた。
スリーアウト!
いや、どの店の提案もストライクにもなってねーよ!
バッターいないからチェンジもできない。
ゲームセットだ。これで俺達のホテル暮らしが決まった・・・・・・
と諦めかけていたとき、サイトはこう言った。
「もしかしたらなんでも屋にあるかもしれないっすよ」
「は?そんなところに家があるわけねぇだろ」
家が見つからないイラつきで、ついサイトに荒い口調で言ってしまった。
ルチカも俺のイラつきを敏感に感じ取ったようで、少し怯えている。
俺の世界でいうなんでも屋はショッピングセンターや大きなスーパーみたいなものだろうか。
しかし不動産が売ってあるスーパーは見たことがない。
俺は半分諦めた状態でサイトへのお詫びも兼ねてなんでも屋に向かうことにした。
【リードマン商会】
サイトが紹介したなんでも屋はそのような名前だった。
3階建てのレンガ造りの立派な建物だ。看板にはロゴが彫られている。
門は閉められており、前には門番が立っていた。
おい本当にここ、店か?
安全神話に定評がある日本の基準でものを考えたらダメだろう。
歩いていたら恐喝が普通にある国だぜ?日本の非常識が日常だ。
俺は門番に声をかける。
「すみません、こちらで不動産は販売していらっしゃいますか」
門番は答える。
「申し訳ございませんが、会員の方以外はお断りしております。よろしければご用件をお伺いいたしましょうか」
会員制なのか・・・・・・。
しかし、昨日のボンクラ門番と全然対応が違う。ここの主人は躾をしっかりとしているのだろうと感じた。
なんでも屋というから、買い物があればお世話になることがあるかもしれない。
会員になれば損はないかもな。
そのとき、建物から男が現れた。
ヒョロリとした細見で茶髪のロングな髪型は1つに纏めてある。
年は中年ぐらいだろうか。
男は俺を見るとこう言った。
「やぁ、いらっしゃい。黒髪の人間なんて珍しいね。何か用があるのかい?特別に中にいれてあげよう。」
この男が会長なのか?
イメージしていた人物像より随分若く見えた。
- 第6章リーマンside ( No.50 )
- 日時: 2015/04/04 21:31
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
男はレイズ・リードマンと名乗った。
リードマン商会の会長らしい。
食べ物から家までなんでも売っている本当の意味のなんでも屋だ。
外国と貿易をしており、珍しい品物が販売されているときもあるため、とても人気がある。
リードマン商会で買い物をするには会員証が必要だという。
おそらく客の質を維持するためだろうな。
会員証を得るには、リードマンに気に入られるか、会員に紹介してもらわなければならない仕組みである。
館の中は清潔で手入れが行き届いている。
そこで働いている獣人たちは、俺を見ると「こんにちは」と挨拶をした。
服装は質素だが、街で見かけたような奴等よりはひどくない。
レイズさんとさっき会ったばかりでほとんど会話をしていないのに、人柄がよく現れていた。
俺達はある一室に通された。
部屋は華美ではないが、重厚な雰囲気がある。
ソファに座ると、白い翼を持った獣人がお茶を出してくれた。
ルチカとサイトの分にも俺と同じ物を出してくれた。
レイズさんは資料をテーブルの上に広げる。
「家を探しているみたいだね。こちらはどうだい?」
レイズさんに勧められた物件の資料を手に取り、目を通す。
とてもわかりやすくまとめられており、字が読めない俺でも大体内容がわかった。
「もう少し町に近いものはありますか?多少狭くてもいいので」
「じゃあこちらは?こちらはつい最近仕入れた物件だよ」
間取り図を見ると、大体8LDKぐらいか。風呂もトイレもついていて、町まで歩いて20分ほどだ。
俺の希望に一番近い。
「これをお願いします」
こうして俺達の家は決まった。
- 第6章リーマンside ( No.51 )
- 日時: 2015/04/05 11:44
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
家も決まったし、家具もここでそろえられる。
ベッドとかテーブルとか大まかに選んでいく。細かいものは後で買えばいいだろう。
なんでも1ヶ所で一括でできるのは便利だな。
おまけにリフォームも修理も請け負うという。アフターサービスもばっちりだ。
家と家具の値段は合計で金貨72枚と銀貨23枚。
あんまり金持っているところを見せると怪しまれそうなので、ローン払いをしたいのだが、それはできないようだ。
仕方ない。俺はきっちり全額払うことにした。
レイズさんは金貨と銀貨の数を数えた。
「確かに受け取ったよ。これはおまけだよ」
受け取ったのは金属製のカード。繊細な装飾画施された文字が書いてある。
レイズさんはほほ笑む。
「会員証だ。お代はいらない。
獣人を奴隷扱いしない奇特な君に興味がわいてね・・・・・・。困ったことがあったらまたおいでよ」
「ありがとうございます」
俺はレイズさんに頭を下げた。
リードマン商会の人達は礼儀正しいし、レイズさんはこの世界で見た初めてのまともな人間であるため、また来たいなと思っていた。
ここならなんでも売っているから、これからお世話になることがあるかもしれない。
俺は会員証を名刺入れにしまった。
翌日、購入した家までレイズさんに案内される。
レンガ造りの2階建て地下室と屋根裏つきの建物がこれからの俺達の家だ。実家と同じぐらいの広さだな。
庭付きで8畳ぐらいの畑が6つ、倉庫と家畜小屋が二つあった。
もちろん希望通り風呂とトイレ付きだ。
ここは貴族の荘園だったらしい。持ち主が飽きたから手放したとか。
俺は非常に気に入った。まずは部屋の掃除からだな。
- 第6章リーマンside ( No.52 )
- 日時: 2015/04/05 23:33
- 名前: yesod (ID: ZKCYjob2)
家は全体的に埃や蜘蛛の巣がかかっていたものの、丁寧に使われていたため、状態がよかった。
一人暮らしのときは1DKだったし、実家の掃除はハウスキーパーがやっててくれたからな。
こんなに掃除をしたのは、会社の大掃除以来か?
虫とかいたら嫌だし、俺は念入りに掃除をした。
レイズさんの奴隷が掃除や家具の運送を手伝ってくれるようだ。
掃除は時間がかかるし、俺とサイトだけで家具を運ぶのは大変だと思っていたので、非常に助かる。
ルチカは高いところを拭き掃除している。前の主人のときはそんな仕事してたんだってさ。
女の子が命綱なしでこんな高いところで掃除して大丈夫か?落ちないか?
下で変態さんがみていないか?
俺は器用にやるなーと思ってぼんやり見ていた。
そのとき、ルチカはバランスを崩し、足を踏み外してしまう。
あぶねぇ、労災だ、労災!
ボーッとルチカを見ていてよかった。俺は雑巾を放り投げ、ルチカの方へ走った。
両腕を広げ、なんとかルチカを受け止めることに成功する。
「セージ様っ!」
受け止められたルチカは驚いた様子で俺をみる。
「怪我はないかっ!?」
「は、はい・・・・・・」
ルチカに怪我がなくてよかった。やっぱり女の子にこんな高いところを掃除させるのはダメだ。
「ルチカ、ここはしなくていいよ。見ていてハラハラするし」
すると、ルチカはシュンと落ち込んでしまった。
耳をぺタンと伏せて、尻尾も下がり気味だ。
「ごめんなさい・・・・・・」
「気落ちするなって。こんな高いところは女の子がするなんて危ねぇし。高いところはレイズさんとこの獣人に任せようぜ」
翼持ってるやついたしな。
飛べる奴なら高いところでも大丈夫だろう。
ルチカを床に下ろした。
すると、少し離れた場所でレイズさんがクスクス笑っている。
「なんか可笑しいか?」
「いや、猫族は高いところから落ちてもうまく着地できるから平気だよ。そんなに心配することもないのに、さっきの君・・・・・・」
あ、そういえば猫ってそうだったな。
レイズさんはまだ声を震わせて笑いを堪えている。そんなに可笑しいか?
ルチカは顔を赤くして俯いている。
おいおい、俺も恥ずかしくなってきたよ。
「そうだ、ルチカ。一緒に風呂の掃除をしよう!!手伝ってくれるか」
「は、はい!」
ルチカは弾かれたように顔を上げる。
別の提案を与えて少し元気になったみたいだしよかった。
俺はルチカの手を引いて風呂場に向かった。
背後でまだレイズさん笑ってるよ・・・・・・。