複雑・ファジー小説
- Re: Subterranean Logos【オリキャラ募集中】 ( No.27 )
- 日時: 2015/08/31 23:44
- 名前: noisy ◆.wq9m2y9k. (ID: sFi8OMZI)
- 参照: https://www.youtube.com/watch?v=UQDEUzu7BzI
2nd.Pretty Hate Machine
一体のオートマタは、宛ら狂人のように高笑いながらミニガンを放つ。加熱された銃身は赤く光り、地下の暗がりを照らしていた。その赤い光りに誘い出されるように、這い寄るノスフェラトゥ達は片っ端から身体の彼方此方に風穴を開けられて、真っ青な血液と内蔵を撒き散らす。その死骸の上を進む、ハルカリの後ろから後続のオートマタ達が駆け寄り、それぞれの得物を手に鉛の弾を撃つ。ハルカリが仕損じたノスフェラトゥを撃ち殺し、、まだ息があるノスフェラトゥの頭蓋を踏み砕きながら進む彼らは、宛ら地獄の軍団長とその僕といった様子か、どちらが危険な存在なのか真剣に頭を悩ましかねなかった。
「こんな奴等があなた方の護衛任務に就くが宜しいか」
引き攣った表情を浮かべたクレメンタインは、NGOの人間に語る。映像の中で高笑いをしていたハルカリは、彼女の隣で何故か誇らしげな表情をしている。呆れたと言わんばかりのギルバートやレスターの視線に、気付く様子もなく所謂「ドヤ顔」をし続けるハルカリを肘で突きながら、グラナーテは補足を入れる。
「普段は良い奴なんだけどねー。ただ、ちょっとミニガン持つと人が変わるっていうか」
「え、平常運行ですよ。こ——」
余計なハルカリの一言をクレメンタインの肘鉄が遮る。思ったより自分へのダメージが大きかったのか、引き攣った笑顔を浮かべながら、ハルカリの顔面で止まった肘を振りぬいた。
「人間に害を成す事はないです。皆さん知っての通り、オートマタは人間に対する攻勢意識が芽生えないように作られてますので」
「え、フルート人間嫌いじゃな——」
「ちょっと黙ってようか」
ハルカリの頭を掴みながら語るグラナーテ。いつになく彼らが必死なのには理由があった。ノスフェラトゥの影響で孤立した都市へと医療支援行うため、NGOが第14アガルタ警備部へと護衛を依頼してきたのだ。普段であればそれを断るのだが、彼らは国籍関係なく何処へでも飛んで行くため、名を馳せている。彼らの護衛実績が出来れば、第14アガルタの広告となる。それは即ち、地上のアガルタ本部へのアピールとなり、護衛費として予算を多く得られる可能性があるのだ。それで私腹を肥やす訳ではないが、不足した装備の購入などに当てる費用が増える。従って、自分たちの命を守る事へと繋がる。科長達の狙いはそれなのだが、ハルカリが先程から余計な事を口走るのだった。
「ホントに大丈夫なんですか…? 」
NGOの人間が問う。確かにこの様子では不安にもなるだろう。
「えぇ、問題はありませんよ。うちのエリートですから。なぁ、レスター」
「あ、あぁ。俺等が束になっても敵わないんだ。連れて行く価値はあると思う」
「どうか、うちの者を頼みます」
最後に口を開いたギルバートは人相も相まってどうにも堅気の人間が使うような言葉に感じられなく、余計な影響が出ないかとクレメンタインは顔を顰めそうになったが、自分も人の事は言えないと笑顔を保ったまま、言葉を紡いだ。
「私が以前所属していたRAMCでも第四世代及び第三世代オートマタの運用実績はありましたが、やはりこの様な妙な自我を持った個体は居りました。ですが、人間に銃を向けたりと危害を加えるようなことは一切無かったですよ」
「…であれば、問題ないという事で宜しいですか」
「えぇ、太鼓判を着かせて頂きます」
「……なら、私は一旦地上へと戻らせて頂きます。後日、手配書を発送しますので、届きましたら至急処理して頂いて、護衛を派遣して下さい。その…、良い方をお待ちしておりますので」
そう言ってNGOの人間は席を立つ。やや言葉の端々に不安の影がチラついたが、仕方ない話だろう。
「ターナ。見送りを頼んだ」
「あ、あぁ。はい。どうぞ、此方へ」
ミッターナハツゾンネが何時になく、丁寧な口調でNGOの人間を先導し、会議室から立ち去る。ドアが閉まるその時までクレメンタインは笑顔を絶やさずに居たが、ドアが閉まるや否や溜息をついて、強張った頬に手を当てていた。
「笑い慣れん…」
「傑作だよなぁ。あんな笑ってんの何年ぶりだ」
「ビジネススマイルだ…。そんなに笑う奴があるかぁ!」
肩を震わせ笑っているギルバートの脇腹をド突くクレメンタインを他所に、グラナーテはハルカリの横で煙草に火を付ける。緊張が解れたのか、だらしなく煙草を咥えたまま気だるげにハルカリを見つめると呆けた笑みを向けていた。
「行く前にちゃんと整備しとくね。筋電素子もアッシーで交換しとく? 」
「えぇ、お願いします。所で二科から人を借りる事は出来るんでしょうか? 」
「良いよ。カケハシ連れて行って。簡単な整備なら出来るからさ」
「ありがとうございます。五科長、一科長、三科長も。人員を借りたいのですが、宜しいでしょうか」
「あぁ、問題ないぞ」
「うちからはアサシグレの奴を出してやる。役立つはずだ」
「…三科からはネーベルだけだな。人間はちょっと出したくない」
ゲラゲラと騒がしかった科長達はハルカリの問いに我に返ったのか、各々の返答を繰り出す。快諾を得られた事にハルカリは気分が良かったのか、やや浮ついた声で礼を述べた。