複雑・ファジー小説
- Re: 可能性の魔法使い ( No.3 )
- 日時: 2015/03/28 04:08
- 名前: 瑠璃玉 ◆ECj0tBy1Xg (ID: 3JtB6P.q)
第零講 : 魔法使いの弟子
「うっわー、なーんじゃこりゃ……えらい豊胸されたなァおい」
近衛隊初代隊長、ロータス・ブラウ。
多分、その辺の中学生でも知っている有名な女だ。中学生どもは大体、彼女のことを勇敢な英雄か、或いは有能な宰相の才を持った武人だと教えられている。その捉え方は別に間違いじゃない。俺から見ても、ロータスという女は文武に長けた素晴らしい兵だった。
だが、彼女を語るに、文と武だけでは足りないものがある。
「おう、何ブツブツ言ってんだ」
「ぁあ、ロイ……」
「湿気た顔すんなよ、ロータスのあの馬鹿みたいな明るさを見習えよ」
「辛気臭い俺にゃ無理だよそんなもん。魔法は見習えてもアレだけは無理。脳みそが疲れる」
「ジジィかあんたは」
「年齢的にはとっくにジジィだよ。俺もう六五〇回目の誕生日過ぎたんだぞ」
一つ、ロータスは武の他に魔法も使っていたこと。
「聞きたいんだけど、何で師匠の銅像なわけ? 豊胸までして、センス疑うぞ俺」
「ついこないだ町長がおったてた奴。この銅像が建ってから街の様子変だなぁ」
「何が?」
「何がって、分かってんだろお前なら。力脈のさ、流れが変わった気がするんだよ、最近」
「……なぁる、確かに。町長様、最近政敵多いって聞くしな」
「町長様? まあそりゃ、町長様ならこんな像すぐ建てられそうだけどサ」
二つ、俺という弟子がいたこと。
「何にしろ、このままじゃまた俺みたいなのが出来ちまうな」
「ははっ、そうなったらあんたが人柱だな! いや鳥柱か」
「貝柱か何かかよ俺は。つか、縁起でもねーこと言うなよ! そういうのフラグっつーんだよ!」
「ロータスも「大丈夫大丈夫!」っつって死亡フラグ立てまくった挙句自分が人柱だもんな!」
「おい師匠を茶化すんじゃねぇよ! 力脈に突っ込んでぶっ殺すぞ!?」
三つ、ロータスの命と魂が、今もこの街を護っていること。
「何で物騒な所だけ師匠に似てるんだ」
「俺はこの世の中のどんな拷問より力脈に突っ込まれる方が苦しいと思う」
「だから何であんたそういう怖いこと言っちゃうのマジで!」
四つ、そんなロータスが取った弟子は、俺だけってこと。
俺はジャック・ドゥ。隣で五月蝿いのはロイ・フロウ。
“可能性の暴走”に巻き込まれ、多次元を認識し構築する力を持ってしまった、元平凡な二羽の鳥にして——人が極められる力の頂点を見た人間、ロータス・ブラウの直弟子と、その孫弟子。
俺達は『世界の底』を視通し、源泉の力を汲み操る魔法使い。
「ロイ、お前のトコの若手ちょっと融通してくれよ。俺一人じゃ時間が足りん」
「あのなァ……カラスだろあんた? カラスがハヤブサに命令するとか」
「ええい変な所で師匠に噛み付くんじゃない弟子の分際でっ! いいから貸せっつーのーっ!」
可能性の魔法使いとは、俺達のことだ。
To be continued...
※別にシリアスじゃない