複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ(500参照突破感謝!) ( No.101 )
日時: 2015/04/11 23:08
名前: ユッケ (ID: xhrme0sm)

お風呂からあがり服を着て、リビングに戻ると、音羽と小春ちゃん、鈴也君が床で眠っていた。

「あれ? 皆寝ちゃったの?」

「能力を使ってみろと五月蝿いのでな、気前よく使ってやった。今なら何をしても起きないぞ? 脱がしても、揉んでもだ」

「そんなことしません! 音羽と小春ちゃんはベッドに運んで、鈴也君はソファでいいかな」

とりあえず、布団なしの床で寝てたら風邪を引いてしまうから、三人をそっと運び布団を掛ける。

それにしてもグッスリだ。全然起きない……。

「つまらんな、それでも男か?」

「正真正銘男です! 男でもよっぽどの変態さんじゃないとそんなことしないよ!」

少なくとも音羽のように見境無くはない!

いや、待てよ…そういえばクミに“セクハラ超能力者”というあだ名で呼ばれていた事があるな……このことは黙っておこう。

「ねぇ、明日は頑張ろうね」

「…お前は、何でわざわざ闇を覗く? 私の事なんて放っておけばいい、全てを円滑に解決する偽善の無い最高の言葉がある。“他人事”だ。
なのに、お前はなぜこんな面倒な事に首を突っ込む?」

「バジリスクだって、小春ちゃんを助けたんでしょ? キミがその質問をするのかい?」

「くっ……いいから質問だけに答えろ!」

「心配だったからだよ。僕と同い年くらいの女の子が、闇の中で生きている。無理も無茶も、危険な事だってするだろう? 危険な目にも合う。だからずっと心配だったんだ」

「……」

「だから、困った時はいつでも頼って欲しい。僕達は手を繋ぎ合えると信じているから」

「……お前は、やっぱりバカだ。私とお前は住む世界が違う。そもそも協力関係も一時的なもので、お前に利用価値があると思ったからだ」

そう言って、バジリスクは余った布団をかぶって、そのまま横になった。

「今は、それでもいいよ」

僕も余りの布団を押入れから出して明かりを消して、そのまま横になった。

暗闇の中、既に眠っている三人の寝息だけが、スースーと聞こえてくる。

騒がしかった部屋に静寂が訪れる…。

(バジリスクも、もう寝たのかな?)

明日の事を考えると、なんだか眠れない。

「おい、まだ起きてるか?」

バジリスクがもぞっと動いて声を掛けてくる。

「うん、なんだか寝付けなくてね。どうしたの?」

「…………お前のメシは旨い。また食わせろ」

ああ、良かった。彼女はまだ手を繋ぎあう事を諦めていないんだ。

それが分かっただけでも充分だ。

「うん、腕によりをかけて作ってあげるね。まずは明日の朝ごはん。楽しみにしててね!」

「あぁ…楽しみだ…」

「え? ちょっ!?」

いつの間にか、バジリスクが起きていて、気付いた時にはもう、僕の上に馬乗りになっていた。

「見ろ……」

「うっ…! ……ぅ…………」

僅かな月明かりに照らされた彼女の眼が、僕を捕らえた。

ある感情が増幅していく……!

眠たい……。

「なん……で……いっ…しょ……に……」

一緒に戦おうよ! また無茶をする気でしょ! 僕は、キミが心配で!

……だめ…だ…………眠…たい……。












夜が朝に変わる頃……ほんの一瞬の間に夢を見た気がする…。

白くて小さな手が、僕の頬に触れた。

それ以上は思い出せなかった……。











ハッ! として目が覚める!

彼女は?! バジリスクは僕に能力を掛けて眠らせた!

時間は? 部屋に彼女は?

布団の中は? お風呂場は? 玄関は?

「……いない…靴も無い……」

1人で行ってしまったのか……。

「なんで……ご飯美味しいって言ってくれたじゃないか……! また食わせろって言っただろ! なんで…1人になろうとするんだよ!」

彼女は戻って行った……闇の中へ、たった1人で……。