複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ(500参照突破感謝!) ( No.102 )
日時: 2015/04/11 16:44
名前: ユッケ (ID: tSCp5ots)

■人形の世界■





三好 祐の部屋を出たバジリスクは、とある場所に向かっていた。

その場所とは、自分のアジトである。

ではなぜ、自分のアジトに向かっているのか、それは待ち合わせをしている相手がそこにいるからだ。

千年 音羽、双葉 小春、御影 鈴也に能力をかけて眠らせ、三好 祐が風呂からあがるほんの数分の間にかかって来た一本の電話。

電話の相手は、時間と場所だけを指定して勝手に電話を切ってしまった。

ライターの蓋を弄る……心底ムカツク野郎だと彼女は思った。

今もライターの蓋を弄りながら歩いている。

暗闇の中には、靴の音とライターの蓋が開閉される音が響いている。

アジトの前まで来て、嫌な気配が彼女を刺す。

「時間通りだ、バジリスク。真面目な奴は好きだぜ」

アジトの前でソファに足を組んで深々と座っている男が言う。

男が座っているのは、いつも彼女が使っているもので、本来はアジトの中にあるはずなのだが、男は外で、座っている。

「お前に好かれようとは思っていない……いつからここにいた? わざわざ外にソファを運ぶのか? お前は……」

「俺は暇なんだ。良く言えば余裕がある。このソファだってちょっとした余興だよ。俺が座ろうと思えば勝手に座られに来て、俺が立ち上がれば元の場所に戻っていく」

男が立ち上がると、ソファは勝手に動いてアジトの中へと消えた行った。

「それがお前の能力か? 見ただけでは分からんな」

「見せたのは時間通りに来たご褒美だ。それとも苺の乗った馬鹿でかいケーキが良かったか?」

「なめるなっ! 見ろ……!」

ライターに火を付け、男に能力を使う。

しかし、男は恐怖しない。

「冗談だ、そんなにキレるなよ。仕事の話だ。明日……いや、今日か…今日中に片付けろよ? 東をお前に纏めさせているのは彼女の指示だからだ。
それが無ければもうとっくに殺してる」

「チッ! 人形め……」

バジリスクは、ライターをポケットにしまいながら、悪態をつく。

「俺もお前も、その人形という差し手の駒に過ぎない。忘れるなよ?」

「……ゾッとする……心配しなくてもお前に殺される気は無い。今日でケリをつけてやる…お前の手を煩わせたりはしないさ、キリエ」

「よろしく頼むぜ、俺は暇がいい」

キリエは不適に笑みを浮かべて、立ち去っていくバジリスクの背中に、そう呟いた。

「これでアイツがもっと早く動く。姫がお待ちだぜ? さぁ、早く来い……」