複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ(500参照突破感謝!) ( No.105 )
日時: 2015/04/19 15:43
名前: ユッケ (ID: 9O29kkFK)

■パワーアンドドラッグ■




東能力学区第三地区の旧市街、今では寂れた廃工場が立ち並ぶ。

その1つをアジトとしているのがデビルアクトという集団だ。

彼らは裏の世界で決して有名ではなく、チンピラの集団…という認識だろう。バジリスクからすると道端に捨ててある空き缶程度の存在。

蹴れば音を立てて転がっていくだろう。

そんな奴らに翻弄されるとはな…とバジリスクは不機嫌だった。

「ここか…」

工場の扉を勢い良く開ける。

埃とサビの臭い…反響する音。

ゲラゲラと笑っていたデビルアクトのメンバー達が、突然の来訪者に驚き、向き直る。

「おいおい! バジリスクさんじゃねぇかよ! この間は残念だったぜ」

野上 鉄次(ノガミ テツジ)。

この男はデビルアクトのリーダーであり、あの日、見えない攻撃でバジリスクを退けた張本人である。

「キサマらか…私のシマで麻薬をチリドッグみたいに売りやがって…」

「ハッハッハ、そんなに気軽じゃねぇよ。露天で売れるならもっと楽だったぜ」

「そうだな、その方がもっと早く決着が着いていただろうな」

「俺との因縁にか? アンタには一度誘われたっけな」

「ああ、それをお前は蹴った。てっきりそのまま朽ち果てると思っていたが…堕ちるとはな…クズが」

「俺はアンタとは違う方法でこの闇を生き延びただけさ、何が悪い?」

「そんな事すら分からなくなったのか…私が制裁を加えてやる、掛かって来い」

「そんなに構えるなよ。俺以外は全員無能力者でね、鉄パイプでジャグリングするのがコイツらの超能力さ」

野上の言葉に、10人程いるデビルアクトのメンバー達がゲラゲラと笑う。

「パワーでも何でも使え、自分達で売り捌いているんだろう」

「ハッハッハ! 馬鹿かよアンタ! 売って金にする分にはいいが、麻薬に手を出すとか…ハハハ! 本物の馬鹿のする事だぜ! ハハハ!」

「俺ら麻薬の恐ろしさは、よ〜く知ってるもんな! ハハハハハ!」

「あんなふうにはなりたくねぇよ、なぁ! ハハハハハ!」

「大丈夫! やめられますから! …ぷっ! んなわけねぇじゃん!」

ゲラゲラゲラゲラ!

悪魔達の醜くドス黒い笑い声が工場内に反響していく…。

次第にバジリスクの怒りに更なる炎が灯っていく…。

上村 豊和…バジリスクの仲間だった人物。パワーに手を出し、死んでしまった人物。

その無残な死体は今でも目に焼きついている。

確かに、麻薬に手を出した豊和は悪い。だが、そうした善悪だけの感情ではない。

コイツらは、パワーを売り捌き、あげく、嗤ったのだ。

麻薬に手を出す馬鹿を、麻薬を売り捌く悪魔が、大口を開けて嗤ったのだ!

バジリスクに灯った炎は爆発し、燃え盛る! 彼女は遂に怒りを剥き出しにし、吼える!

「覚悟しろキサマらぁあああああああ! 死より恐ろしい恐怖を刻み付けてやらぁああああああああ!!!」