複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ(500参照突破感謝!) ( No.106 )
日時: 2015/04/22 04:46
名前: ユッケ (ID: YSv.Ne/k)

「怖いね〜! この人数相手にたった一人で何が出来る?」

バジリスクがバジリスクたる所以、それは目である。

ライターの火で動物的本能を利用し、恐怖を芽生えさせ、感情を増幅させる目で恐怖を増幅させ、歯向かう敵を屈服させる!

人数など関係無い! 火を見れば恐怖し、視線を合わせば屈服する!

「なめるな! 見———っ!」

ライターを取り出した手に衝撃! 火を点ける前にライターが手から弾け飛び、カラカラと床を滑っていった。

見えない攻撃……。

衝撃によって弾かれた右手。

がら空きの胴体。

守る余裕は無かった。

「ガハッ!!」

腹部に強い衝撃を受け、くの字に曲がって飛ばされ、床を転がり蹲る。

「アンタの能力はバレてる。対策なんていくらでも出来る。そして俺は視覚で捕らえられない攻撃が出来る。見えないってんじゃ対策もし辛いだろ?」

「……コソコソ隠れてやがった…お前らしい能力だな!」

「あー、だめだめ。自分より有利な相手には、まず楽しませる事さ。
そうやって逆撫でしたって戦況は変わらないぜ? ほら、媚びてみろよ」

ライターを封じ、圧倒的有利に立った野上 鉄次は、口角をニタリと上げてバジリスクを見下ろす。

「キサマのような雑魚に媚びるほど落ちぶれてはいない!」

瞬間、左ポケットから何かを取り出す。

「無駄だ!」

左手が見えない攻撃によって弾かれてしまう!

「まさか二個目のライターがあったとは…………な、んだ……」

二個目のライターを弾き飛ばし封じたはずの野上 鉄次の顔がどんどん青ざめていく……!

この感情は…そう、恐怖である!

思考を鈍らせ、身体機能を下げ、呼吸も忘れさせる内側から忍び寄る気配!

「……なにを…した…!」

「恐怖で視野が狭くなったか、お前は火を見たのさ。二個目のライターは嘘だ。最初にお前が飛ばしたライターは、偶然にも私が飛ばされた場所だったんだ。
二個目を取り出すフリをし、逆の手でライターを点け、火を見せた」

「…ぁ…ぁぁぁあああ!!」

「火…火がぁぁぁ!」

「熱い! 火が目の前に!」

「このまま恐怖に呑まれろ!!」

野上 鉄次と数名のデビルアクトメンバーが、バジリスクの目を見て恐怖が増幅する。

目の影響を受けていない若干名のメンバーも、バジリスクの逆転と力の強さに立ち竦む!

しかし、恐怖に抗う感情、いや、性質というものが存在する。

「わぁああああああ!」

「なっ!」

予想外にも突進してきた下っ端をサッとかわし、顔面に拳をお見舞いする!

「チッ! クソッタレが!!」

臆病……恐怖に対して予想外の行動を取るこの性質は、バジリスクにとっては厄介なのだ。

ヤケになって攻撃をしてくる人間は極稀にいるだろう。

そういう臆病が、非常に厄介なのだ!

今の一瞬で視線が外れ、バジリスクの能力効果が薄らいでしまったのは、本人でなくとも気付いている。

バジリスクは再び視線を合わせようとするが、野上 鉄次は対策し、背中を向けており、視線を合わせられない!

この時にもう、野上 鉄次の反撃は始まっていた!

見えない攻撃は、自分が見てなくとも当てる事が出来るのだ!

「っ!! ガァッ!!」

バジリスクは衝撃により真横に吹っ飛び、鉄資材の山に体を叩き付けられた。

彼女には、ここまでで見えない攻撃については、おおよその概要が掴めてきた。

衝撃を生む能力で、おそらく指定した座標に衝撃を与えるのだ。

しかし、能力の概要が分かったところで、今更もう遅いのだ。

形勢は再びバジリスクが不利となった!