複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ(500参照突破感謝!) ( No.112 )
日時: 2015/04/27 22:35
名前: ユッケ (ID: vF93p2vY)

恐怖に押し潰され、動かなくなった鉄次。

これで終わったのだと思うと、なんだか疲れがドッとやってくる。

それはバジリスクも同じな様で、またフラフラと倒れそうになるのを、僕と小春ちゃんと赤菜で支える。

「姉御…大丈夫ッスか? ご無事で何よりッス」

「心配をかけたな…」

おそらくバジリスクが小春ちゃんを置いて行った理由を、小春ちゃん自身解っているのだろう。

だから、彼女はこれ以上は何も言わず、その小さな体でバジリスクを支えた。

今はこれぐらいしか出来ないけど、きっといつか…という想いが、彼女の表情から伝わってくる。

「祐、本当に撃たれてない? 大丈夫?」

音羽が凄く心配そうに、僕の体をベタベタと触る。

「くすぐったいよ〜、大丈夫、撃たれてはないから」

「本当、最後にとんでもないモノ隠してやがったわね…迂闊だったわ」

レイラの言う通り、迂闊だった。

銃や刃物の可能性を考えずに無計画にアジトに突っ込んでいた。

みよりや赤菜、他の皆も危険に晒してしまった。

「どうせ、皆を危険に晒してしまった…とか考えているのでしょう? この“放っとけない中毒”め……」

「うわぁ! 読まれた!?」

「あなたの性格を考えれば解る事です。でもそれは、そこの“蛇ヤンキー”と同じ考え方ですよきっと」

「…………」

そうか、バジリスクも同じ気持ちで…僕達を巻き込みたくなくて、1人で解決しようと思ったのか…他人が傷付くのは嫌で、自分が傷付くなら良いとか、そういうのは本当……独り善がりのエゴイズムだったんだ…。

「先輩、宮本は何も出来ないですけど、先輩の味方ですよ」

「そうですよ、手を差し伸べてくれたのは三好さんじゃないですか!」

「祐は1人で背負い過ぎだっての!」

本当にそうだ…皆味方で、手を取り合って、1人じゃ出来ない事を皆でやって!

超能力者なんてただの肩書き、僕達は皆完璧じゃなくて、1人1人が欠片で、ピースで、チカラなんだ!

「皆の優しさとか信頼とか、眩しくて暖かくて、くすぐったかったりするけど、この陽だまりの世界を僕達が僕達で守っていこう!
闇とか、階級とか、パワーとか、そんなモノには壊させない!
全部蹴散らしてやるんだ! だから……」

スッと、手を差し伸べる。

バジリスクも、小春ちゃんも、僕達の陽だまりに連れて行く。

「姉御…行きましょうッス」

「ふん…本当にお前達は、バカだ……」

手を重ねて、想いを重ねて、離さないように強く握る。

「そうだ! バジリスクってやっぱり呼び難いし、そろそろ本名教えてよ!」

「なっ! ふ、ふざけるなっ! 好きに呼べと言ったろう! だから、本名じゃなくても———」

「では、ペッタンコヤンキーと呼びましょう。略してペタヤン」

ここぞとばかりにクミさんキターーー!

いや、今回ばかりは頼もしい! 押せ押せクミさん! いっぞいっぞクミさん!

「キサマッ! どこを見て言っている!」

「胸は〜小さめ〜♪ Aの〜(アタシの〜)A〜(証〜)♪」

「もう白状するしかねぇって」

「ぐぬぅ…!」

暫く唸って…彼女がようやく諦める。

彼女の過去を考えると、本名を言いたくない理由は想像がつく、でも、僕達の気持ちは同じで、闇の中で必死に生きていた彼女をバジリスクとしてでなく、本当の仲間として名前を呼びたかった。

そこは伝わっているようで、彼女は少し恥ずかしそうに顔をほんのりと赤くして言った。

「七咲 千香(ナナサキ チカ)だ…」

東能力学区の裏側の超大物……漆黒の少女……蛇眼の少女……バジリスク……千香ちゃん……。

皆が口を押さえて肩を震わせて笑いを堪えている…。

「ぷっ…!」

はいレイラアウトー、笑っちゃった〜。

「わ、笑うな!」

「あはははははは! だって可愛いから!」

「だ、だよな…はははははは! ナナちゃんでいくか、千香ちゃんでいくか、迷ったんだけど、どっちも可愛いんだよな! はははははは!」

「姉御…可愛い…ッス…あははははは!」

「く…勝手にしろ!」

「あははは、今日はパーッとパーティーでもしようよ! ご飯作ってあげるから、ね? 千香ちゃん!」

「ちゃんを付けるな!」

こうして、陽だまりの中に新しい仲間が増えた。

僕達はやっと、互いに手を繋ぎ始めたのかもしれない。

階級も光も闇も越えて……僕達はこの手を繋ぐんだ!