複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ(参照1000突破感謝!) ( No.115 )
日時: 2015/05/06 23:55
名前: ユッケ (ID: bG4Eh4U7)

第四章
■天使の園■





これは、僕達が東雲先輩から聞いた凛人さんの話だ。

東雲家に拾われ、能力犯罪特務捜査官になって、先輩と結婚するまでの話……。














—————10年前—————

凛人10歳の頃……。

孤児院【天使の園】



山の中にひっそりと佇む白い教会からは子供達の元気な声が聞こえてくる。建物は二つ、祈りを捧げる礼拝堂と、身寄りの無い子供達が暮らす家【天使の園】に分かれている。

そこには10名ほどの身寄りの無い子供達が暮らしていて、凛人…才葉 凛人(サイバ リヒト)も天使の園で暮らす男の子だった。

「ん…しょっと! うわ、でっかいジャガイモだ」

天使の園裏側にある農園で、凛人は野菜を収穫していた。ジャガイモやニンジン、タマネギ、ナス、レタスなど多数の野菜を育てて自給自足の役に立てている。

孤児院に集まる善意のお金は確かにあるが、子供達がその日を暮らしていく為には少しでも切り詰めなければいけなかった。

「凛人、私も一緒にお野菜の収穫手伝うね」

「うん、一緒に収穫しよう」

手伝いを申し出たその少女は橘 空(タチバナ ソラ)。

年齢は10歳、同い年ゆえに凛人とはとても仲の良い女の子である。天使の園の同居者は凛人と空が一番の年長者で、二人はよく協力し年下の子達の面倒を見ている。

「二人とも偉いね、収穫してくれているのかい」

「「園長先生!」」

眼鏡に少しばかりの白いあごひげが特徴のこの男性が、天使の園の園長、澄由 誠太郎(スミヨシ セイタロウ)である。

「今日は日差しが強いからね、日陰で休みながら作業するんだよ」

「「はーい!」」

とても優しく、子供達の為にその人生を捧げている。

いつだったか、天使の園の礼拝堂前に赤ん坊が捨てられていた……今もこの園にいるその少女の名前は式宮 アリス(シキミヤ アリス)。

誠太郎が彼女を拾った時、彼女は酷く衰弱しており、3日3晩寝ずに懸命の看病をした。山から病院は遠く、お金も無い……だが誠太郎には少しばかりの医学、栄養学の知識があり、そのかいあってか彼女は命を取り留めた。

彼は身寄りの無い子供達を、とても懸命に守り、育てているのだ。

「凛人、私ね、大きくなったら園長先生みたいに身寄りの無い子供達を助ける仕事がしたい」

「そうか……俺は、皆が家族と暮らせる世の中を作りたい。…能力開発なんて無くなっちゃえばいいのにな」

天使の園で暮らしている子供達は皆が無能力者で、捨てられた原因がそこにあると考えている子達も多い。

才能、能力、求められる者と捨てられる者、能力発現の精度は2年前から上がった。確かに上がったのだが、そこにまだ平等はなく、10年後の未来にも同じような状況が生まれている。