複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ(参照1000突破感謝!) ( No.116 )
日時: 2015/05/08 20:42
名前: ユッケ (ID: uyTg3jXr)

子供達は寄り添い、暮らす。

誠太郎と凛人、空が作った夕食を囲み、子供達は夜を過ごす。

「こら信吾! トマトもちゃんと食べなさい」

「…うー…はーい。空姉ちゃん怖いんだもんな〜」

「何か言った?」

「いや何も!」

「どうしたアリス? お腹痛いのか?」

「ううん、考え事してただけ」

「そうか…」

「凛人兄ちゃん! お水ほしい!」

「ほい雅斗、コップ持ってろよ?」





こうして毎日楽しく騒がしく、日々を送っていた。

自分達の家族は、本当の家族はここにいる皆なのだと本気で思っていた。

親が迎えに来なくたっていい、家族と一緒に家族を守って、天使の園でずっと暮らすんだと思っていた。






ある日の深夜、凛人は聞いてしまった……。

明かりが漏れる誠太郎の部屋、彼の通話を……。

たまたまだった…深夜、1人トイレに起きた凛人は誠太郎の部屋の前で足が止まった。

彼の電話での会話が、寝ぼけた脳を覚醒させた。

「はい、手筈通りに……はい、では朝に子供達を引き渡します。はい……ぜひ実験の役に#$%○?!△□」

「!!!!?」

これ以上は聞き取れなかった。脳が拒否した。

(嘘だよ……園長先生が……俺達を……)

売ったなんて……。





凛人は静かに寝ている子供達を起こして、今聞いた真実を全員に告げる。

「園長先生が俺達を売ったんだ! 早く逃げないと!」

「凛人? 何言ってるの?」

「空! 頼むから! 信吾! 雅斗! 皆!」

「凛人寝ぼけてたんだよ。園長先生がそんなことする筈ないでしょ」

「空! 本当なんだ! 早く逃げよう!」

「凛人兄ちゃん、早く寝ようよ。俺眠たい」

「信吾!」

「空姉ちゃんの言う通り、園長先生がそんな事するわけないって」

「雅斗!」

「私達は家族よ、凛人、ここが私達の家」

「空! 空! 頼むよ…一緒に…」


誰も耳を貸さなかった……。

誠太郎の裏切り、恐怖、絶望に目の前が真っ暗になった。

気付けば1人、凛人は夜の山を駆け下りていた。

石、土、木の枝が足を切り刻んで行く……どっちに行けばいいんだろう? どうすれば山を下りられるのだろう? 山を下りて……どうするのだろう?

「うわぁぁぁあああああああああああああああああ!!!!!」

どうしようもなく辛い、悲しい、寂しい、だから叫ぶ事しか出来なかった……。