複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ(参照1000突破感謝!) ( No.117 )
日時: 2015/05/11 21:11
名前: ユッケ (ID: .HsHtyLH)

■東雲 凛人■




凛人は真夜中の山道をひた走る。

(街に行けば…! 警察に言えば皆助かる!)

その一心で、赤く血の滲む足を動かし、山の中暗闇の中を走る!

しかし、光の届かない山の中で、方向感覚も分からず走っていても街に辿り着くことも、1つの星の光を見つける事すらも出来なかった。

悪魔の意思か、運命の意向か、はたまた呪われたこの世界の深い呪いか…。

朝日が昇ろうとする頃に、彼は山の中、冷たい土と草と枯れ枝の上に力無く倒れてしまった……。

(……ぁ…もう……ダメだ……空…)

10歳の少年が、山道をひたすらに何時間も走り続けて、平気なわけが無かった。

心臓は裂けそうなほど痛い、足は痛みを越して痺れに変わり、呼吸をする度に肺が苦しい。

才場 凛人は……才場 凛人の身体は、自らを守る為に眠った。











「お父様! こっち!」

「これはいかん! 早く救急車を! この子は私が背負って降りる!」










「…………」

「あ、目が覚めたのね。良かった…」

凛人が目を覚ますと、そこは真っ白な世界だった。

それが病院の天井だと、少女の覗き込む顔を見ても分からなかった。

凛人は病院なんて行った事がない。天使の園で育ったから……。

「お医者の先生を呼んだからね。もう安心よ」

「先生? 先生……園長…先…生!!!!?」

全てが蘇って来る! 悲しみも、苦しみも、恐怖も、絶望も、裏切りも、そして使命感も……!!!

「うわぁあああああああああああああああ!!! ああああああ!!! うわああああああああああああああああああ!!!!!!」

暴れまわる! 動かない足を無理やり引きずってベッドから出る! 腕に刺さっていた点滴の針も抜けてしまい、血が出る腕を振り回し暴れる!

出口へ! 暴れるように身体を引きずる!

「空ぁあああああああ!!! 空ぁああああああああ!!!」

「ダメよ! 動いちゃダメ!」

暴れまわる凛人を少女が抑える。

「うわぁああああああああ!! 離せえええええええ!!! 空が!! 空があああああああああ!!!!!」

「何事かね!?」

慌てて病室に入ってきた医者にも抑えられ、凛人はただ泣く事しか出来なくなった。

凛人が落ち着くまで抑えるしか、この場にいる者に出来る事は無かった。