複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ(参照1000突破感謝!) ( No.119 )
日時: 2015/05/20 01:53
名前: ユッケ (ID: ID28wqen)

それから数日後、兵藤が素性と調査の結果を言いに病室を訪れた。

兵藤の口から伝えられた結果は、良いものではなかった。

「天使の園という施設は発見できたが、中には誰もいなかった。部屋の所々に暴れた形跡が見られる。今は園長澄由 誠太郎を重要参考人として指名手配している」

こうして凛人の希望は絶たれてしまった。

もしかしたら全て悪い夢だったのではないかと、園長先生の言ったことを聞き間違えていたのではないかと、そう思う事で希望を持っていた凛人は、また涙とともに崩れるのだった。





凛人が悲しみから再起出来たのは、辛い真実を知らせてしまった責任を感じた兵藤と、三代をはじめとする東雲の人間の懸命の慰めによってのことだ。

少しずつにでも笑顔が戻っていったが、凛人は決して天使の園や空達の事を忘れたわけではなかった。

一度だけ、凛人は三代と一緒に、もう誰もいない天使の園に入った。

礼拝堂も、子供部屋も、畑も荒れていて、それだけで涙が止まらなくなった。

それでも凛人は前を向いて生きる事を選んだ。

身寄りが無く、行く当てもない凛人を東雲家は引き取り、育てる事にした。養子にはせず、才場 凛人として育てた。

そしてその頃から、凛人は能力に目覚め始めていた。

能力に目覚めた凛人は、兵藤の指導の下警察になる事を決意する。

兵藤も、親のように厳しく凛人を鍛えた。









そして、時が過ぎ、凛人18歳。三代16歳。

初めは三代が一方的に好意を寄せているだけであったが、凛人も次第に、東雲家三代目として立ち振る舞う三代の姿に惹かれていった。

数年間彼氏彼女として付き合い、二人は結婚を果たす。

そして婿養子に入った凛人は、東雲 凛人となり、現在に至る。







「なぁ三代、俺…今だから分かる。当時能力の開発が一番進んでいた日本で、能力開発を受けた上身寄りの無い孤児が何の実験の為に売られたかが…今は分かる…」

「ええ、技術を盗む為の海外での人体実験、その被験者…」

「空達が生きてるのか死んでしまっているのか分からないけどさ、俺はいつかきっと、見つける! まだ見つかっていない園長先生も見つけてみせる!」

「あなたなら出来るわ。私が支える。だから大丈夫よ」