複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ(参照1000突破感謝!) ( No.122 )
日時: 2015/05/30 01:54
名前: ユッケ (ID: aU0XF0c4)

日が落ちるまで溜り場で遊んで、今日も同じように家路につく。

音羽とは途中まで帰り道が一緒だから並んで帰る。

「祐はもう超能力の事、平気?」

そう言って音羽が心配そうに僕の横顔を覗く。

「う〜ん、使う時はやっぱりフラッシュバックしちゃうかな。前より抵抗は無くなったけど、それでも乱用はしたくない」

「そっか…そうだよね。私ね、超能力者ってきっと便利で凄い能力が使えて、何不自由なく生活が出来るんだろうなって、そう思ってたの。随分も前の話だけどね」

超能力…そう聞くとやっぱり何でも出来そうな気がする。

能力者の中でも最も貴重で上級種に位置する事から誤解もされやすい。

まるで王様、まるで神様、人間以上だと錯覚する。

超能力者であっても誤解する。昔の僕のように、超能力に溺れて行く。

「でも、今は違うの。皆何かを抱えてるんだなって、超能力者も能力者も無能力者も、同じなんだなって少し思えてきた」

ヒトである以上、それは変わらない。

そんな事を忘れてしまうのがこの世界なのだ。

能力なんてものが無かった時代、そんな時代でも差別や迫害はあっただろう。

ヒトが能力を手に入れて、進化したはずのこの時代。

今現在、差別や迫害は酷くなっている。

「僕達だけでも、忘れちゃいけないんだ。みよりも悩んでる。レイラだって一番に拘ってずっと努力してる」

「皆と一緒にこうして出会えて、考え方も変わったよ。一番の要因は、祐に出会った事だけどね」

僕が、僕達が変わるキッカケ、全ての始まり……。

音羽が僕を見つけたこと。

そこから全てが変わったのだ。

でも、なんだっけ? 何が僕と音羽を出会わせたのだろうか?

(もしもーし! 聞こえる?)

「うわぁああああああ!!」

僕が急に大声でビックリするものだから、怖がりの音羽がビクゥッ!と体を硬直させてしまった。

突然耳に…いや、脳内に響いた声は音羽でも自分のものでもなく…。

(うん、感度良好。三好君、久しぶり〜)

(木戸先輩ですか!? いきなり通信(モバイル)しないでください!)

木戸 録先輩。あだ名はロック。彼の能力は携帯端末そのもので、モバイルと呼んでいる。

通信と検索が能力で、僕の事を超能力者であると見破った張本人である。

凛人さんとも仲が良く、僕達が凛人さんの話を聞いた時に久し振りに再会、皆とも面識がある。

(ちょっと気になる情報を見つけたものでね〜、ネットの掲示板で、パワーの取引を行っていたデビルアクトを壊滅させた能力者集団がいるって噂になっててさ、顔は映ってないけど写真もあったよ。
もちろん消してやったけどね〜)

(あの現場を目撃した人がいたって事ですね。参ったな…)

(それだけならまだ良かったんだけどね。どうもデビルアクトを壊滅させたメンバーの中に、“超能力者の落ちこぼれ”がいるって尾ヒレまで付いちゃっててさ、三好君と、もう1人宮本ちゃん…だっけ? 警戒してた方がいいかもね)

(分かりました。みよりには僕から伝えておきます。ありがとうございます)

(また何かヤバそうなのがあったら通信するよ〜。じゃ!)

そう言って通信が切れた。

通信が聞こえていなかった音羽にも状況を説明し、みよりにも連絡を入れた。

「わっかりました! ご忠告感謝であります!」

「うん、何かあったら連絡ちょうだい。すぐ行くから」

みよりに連絡を入れたあとは、他の皆にも注意を促しておいた。

ネットにあった写真は消したみたいだけど、あんなものは完全抹消はまず不可能だろう。

誰かがコピーして転載してしまえばそれでアウトだ。

そして誰かが僕達のプライベートを覗いて壊す事もありえる。

とにかく、皆には注意をしてもらうように連絡した。

僕と音羽も、あと少しの帰り道を注意して帰った。

その家路はとても遠く感じるものだった。