複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ(参照1000突破感謝!) ( No.124 )
日時: 2015/06/03 02:32
名前: ユッケ (ID: ipmOSBoH)

突然目が覚めた。

気分は最悪で、それはとても悪い夢を見ていたからだ。

みよりが自殺なんてありえない。

そもそも、あんなデタラメな予言があってたまるもんか!

昨日からちょっと不安でそんな感じの夢を見てしまっただけだ。

寝る前にホラー映画を見てしまい、夢の中で呪われた家に入って呪い殺された事がある。

不安とかそういうのはよく夢として現れるものさ。

そう自分に言い聞かせて、今日も準備をして溜り場へ!





溜り場、廃ビルの屋上。

皆いつもと変わらず遊びに来ていた。

最後にやってきたのはみよりだった。

いつも通り元気なチビうさは、僕達の元気だ。

この様子だと、能力の事は引きずっていないようだ。

いつもと変わらない日々が、ここにあると誰もが思った……。




「あれ? キミ達ここで何してるのかな?」

最後に入って来たのは、みよりの後に入って来た、細身でハンチング帽を被った中年男性だった。

場の空気が一瞬にして凍りついた。

レイラの目つきが変わり、音羽も赤菜もクミも鈴也君も喋りを止めてこちらを向いていた。

そして誰より、みよりが不安定でどうしていいのか分からないといった状況だ。

僕も正直分からない。警戒はしていた。ネットの噂がどこまで僕達に影響を及ぼすのか、そもそも尾行とか、盗撮とか、そういう事を気にしながら溜り場まで来た。

それは多分、皆そうだったのだろう。だから皆驚いているし、警戒している。

「どちらさまですか?」

僕がその中年男性に素性を尋ねてみた。

「俺は湯ノ沢 通(ユノサワ トオル)。月刊誌の記者をやってるんだ。
ああ、これ名刺ね。
ネタを捜していたら、そこのツインテールの子がこんな廃ビルに入って行くもんだから、何事かと追いかけたら、ここはキミ達の溜り場か何かかい?
いいね〜、街から忘れられた廃ビルに集う若者。俺も子供の頃は秘密基地とか作ったっけ……ああ、俺は田舎から出てきたんだ。山の中のちょっとした空間に友達と秘密基地を作ってね…………」


嘘だ。

誰もがそう思った。

おそらく、みよりの家の前からずっと尾行してきたのだろう。

よりによってみよりが狙われた…! 昨日、悩みを…心中を明かしたみよりが、よりによって!

「せ、先輩……あの! 私…わたし…ごめんなさい…気が付かなくて…」

みよりは今すぐにでも泣き出しそうだ。

もちろん、誰もみよりを責めたりなんかしない。

でも、みよりはもう責任を感じてしまっていて、それを見た湯ノ沢という雑誌記者は僕達がネットで噂の集団であると確信しただろう……。

「えい…!」

「うわっ! …っと…」

強い風は吹いていないのに、突然、湯ノ沢さんの被っているハンチング帽が飛んで転がっていく。

鈴也君が能力で動かしたようだ。この隙にみよりに耳打ちする。

「みよりが悪いわけじゃないよ。なんとかするから、安心して」

「ぅぅ…ごめんなさい……ごめんなさい」

「煙に巻きますか? ならばクミさんの出番です。お任せください」

「頼める?」

「へっへっへ、なめてもらっちゃ困るぜ、旦那」