複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ(参照1000突破感謝!) ( No.133 )
日時: 2015/06/20 12:42
名前: ユッケ (ID: syXU4e13)

■子供であること■




悪夢から目が覚めると、なんだか朝の香りが漂い、朝の音が聞こえて来た。

独り暮らしをしているからか、目が覚めてこんな音が聞こえてくるのはなんだか懐かしい。

目を擦りながらキッチンに目をやると、みよりがフライパンを握って、なにやら唱えていた。

「我ながら良くできているでありますよ! さながら月面に降り立ったルイ・アームストロング!」

聖者の行進か、はたまたこの素晴らしき世界か……ちなみに、月面に降り立ったアームストロング船長は、ニール・アームストロングです。

「おはよう、みより」

「うわぁ!! 祐先輩! お、おはようであります!」

「おお、目玉焼き」

「せめて朝ごはんは、宮本が作らせて頂こうと思った次第であります!」

「ありがとうみより。じゃあ僕は顔洗ってくるね」

「うい! こちらは宮本が引き受けるであります!」

みよりが元気なのは、もしかしたら空元気で、そういう風に振舞っているだけなのかもしれない。

でも、今はみよりを支えてあげよう。

独りじゃ不安だ。誰もいなくて。

独りじゃ無理だ。助けがなくて。

独りじゃない事、それを感じられる環境が大事だ。

誰かがきっと傍にいる。

同じ空間にいても、そうじゃなくても……。

「よし! 今日は何をしようか!」

顔を洗って、歯を磨いて、食卓につく。

「じゃじゃーん! 宮本だってこのくらいは朝飯前でありますよ!」

「期待と希望が胸に広がって、軽快なステップと警戒なステップを刻むよ!」

「おあがりよ!」

「いただきます!」

これは目玉焼き……なのだろう……きっと目玉焼き!

目玉焼き、フライパンに卵を落として焼くだけのシンプルな料理。

黄身と白身のコントラストは、月に例えられるほど美しい。

しかし、この目玉焼きの白身からニョキニョキと生えているコレはなんだ!

どうして生えているんだ! イカゲソが!

コレは月ではない! まさしく、大海原に突如現れた悪魔! クラーケンだ!

大海を旅する海賊こと、三好 祐は船員に通達する!

「大砲で足を狙え! 船を握られてしまったらおしまいだ!」

「船長! もうダメです! マストを折られました! 風を受けることが出来ません!」

「皆は船から脱出しろ! 僕は……やつに一太刀浴びせてくる! うぉおおおおおおおおおおおお!!!」

「「「船長ー!!」」」

「どうですかこの宮本の料理は! 感動で言葉も出ませんか…そうですか、フッフッフ」

「大海原を旅した気分になったよ……(ゲッソリ)」

「ではでは、宮本めも一口……あーん! …!? ———!?!?」

その後、この料理を作ったものは誰もいなかった…………。