複雑・ファジー小説
- Re: 超能力者の落ちこぼれ(参照1000突破感謝!) ( No.135 )
- 日時: 2015/06/27 23:52
- 名前: ユッケ (ID: HHprIQBP)
■闇は囁き兎の涙は零れる■
宮本みよりは自分が子供であることが嫌で仕方が無かった。
昨日の夜、三好祐と木戸録の電話を聞いていたのだ。
だから、沈んでいる場合ではないと、先輩達に負担を掛ける事はできないと、明るく振舞っていた。
だが、結局は溜まっていた思いの内を吐き出して、自分が子供であるとまた思い知った。
(もう…祐先輩に顔向け出来ない……先輩にあたっちゃった)
街をひた走って、息切れして公園のベンチに座り込む。
(もう、陽が暮れそう……先輩の家には帰れないし、宮本の家は記者の人が張り込んでいるかもしれないし…)
どうしようかと悩んでいる時だった。
「みよりちゃん? みよりちゃんだよね? こんな所で何してるの?」
声の主は、湯ノ沢。
彼女達の日常を破壊した人物である。
「あ、あの……えっと……」
意外な人物の登場に言葉が出てこない。
今一番会ってはならない人物に会ってしまった。
「そんなに怖がらないで。そうだ、ちょっと待ってて」
湯ノ沢はそう言うと、公園にある自動販売機で飲み物を買ってきた。
「はい、このジュース飲めるかい? コーヒーは僕のね」
「あ、ありがとうございます」
「ところで、もう陽も暮れてきたのに何してたんだい? 補導されちゃうよ?」
湯ノ沢はコーヒーを一口飲んでから訊ねる。
「……宮本は、子供でしょうか?」
「ん? 子供だと思うよ。まぁ、僕はもうオッサンだからね。成人していても子供に見えちゃう人は沢山いるさ」
「大人ってなんなのでしょう?」
「う〜ん、みよりちゃんはまだ中学生だから、どう説明しても理解は出来ないと思うよ。定義だけで言うなら…成人しているかしていないかだけど」
「宮本は、子供な自分が嫌なんです! 大人になりたいであります!」
「そうか……なるほどね、うん! アドバイスが言えるとしたら、根拠の無い自信でもいいから自信を持つこと。
僕が新人の時に言われたんだけどね、新人に根拠の無い自信が無くてどうするんだー!って散々言われてね、それを本物の自信に出来るかどうかだよ」
「自信…でありますか?」
「そう、自信! っと、ゴメン電話だ」
湯ノ沢のポケットから携帯が鳴り始めて、彼は少しだけ離れて携帯に耳を当てた。
『俺だ。チャンスだな。これを逃せば15年のキャリアが水の泡。たった1人の中学生の為にな』
『アンタは……隠れてないで出てきたらどうだ!』
『俺が出て行ってどうする? これはお前の問題だ。せいぜい大人ってやつを見せてくれよ。家族と仕事を取るのか、赤の他人の気持ちとやらを取るのか、拝見拝聴させてもらうぜ』
一方的に電話は切れた。
家族と仕事か、赤の他人か……何を踏み台にするのか、湯ノ沢でなくても、考えずとも解っている事だ。