複雑・ファジー小説
- Re: 超能力者の落ちこぼれ(参照1000突破感謝!) ( No.137 )
- 日時: 2015/07/01 03:01
- 名前: ユッケ (ID: gWH3Y7K0)
「せ、先輩! 湯ノ沢さん、もうやめてください!」
地面に転がる三好祐の体を、宮本みよりが目に涙を浮かべて、覆い被さるようにして庇う。
「もう……後戻りは出来ないんだ……! 最悪キミ達を殺してでも…記事を書く!」
「みより! うがっ!」
湯ノ沢の容赦の無い蹴りを、三好祐が宮本みよりを庇って顔面に受ける。
「先輩!!」
「そんなに先輩を助けたいなら、知っている事を全て話せばいい! さぁ、話すんだ! 誰が超能力者の落ちこぼれなんだ!」
(私……いつも先輩に助けられて、後ろに隠れて……)
初めて出会ったあの公園で…デビルアクトのアジトで…湯ノ沢に詰め寄られて…そんな時はいつも助けてくれた。前に出て庇ってくれた。
(先輩と一緒にいて、本当にお兄ちゃんが出来たみたいで)
嬉しかった。温かかった。優しかった。
(私が、今度は前に出なきゃ…!)
零れる涙が、地面に落ちて弾ける。
「みよ…り……ダメだ…言っちゃ…ダメ…」
「……私は、超能力者です……だから……」
「うん、彼は助けてあげるよ。じゃあ詳しく聞こうか、キミの事と噂の事」
「あなたを病院送りにする事なんて簡単ですっ!!!」
「え? —なっ!?」
湯ノ沢の目の前に雷光が一筋、まるで世界を縦に斬る様に降る!
それは明らかに、超能力の力だ!
「次は当てます!」
「ひっ! ま、待ってくれ! 本当に死んでしまう!」
「……もう二度と、私達に関わらないで。私達の世界に入って来ないで。もし、私達の記事が書いてあったら、どうなるか……わかりますよね?」
「か、書かない! 絶対に書かないから! 許し———」
「私達の前から消えてっ!!!」
もう一度、湯ノ沢の目の前に雷光が落ちる!
「ひぃいいいいいいいいいいいいい!!」
湯ノ沢はそのまま逃走していった。
もう二度と、彼が宮本みよりや三好祐に関わる事は無いだろう。
「先輩! 大丈夫でありますか!」
「みより……大丈夫、立てるよ。いてて…」
「私…無我夢中で…自分でも何したのかよく分からなくて」
「でも、みより。かっこよかったよ」
「……はい!!」
こうして、彼らの壊れた日常は、小さな兎の大きな勇気によって、再び戻っていく。
だが……もしそうでなかったとしたら……。
宮本みよりが、三好祐の部屋に泊まっていなければ……。
彼女は、問題を1人で解決しようと奔走し、湯ノ沢に詰め寄られ、全てを話し、後に自責の念から自殺していただろう。
そうなれば、後は夢の通りである。
最悪のエンド。
夢の事など、三好祐はもう忘れているだろう……夢というのは、そういうものだから……。