複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照1500突破感謝!オリキャラ募集! ( No.162 )
日時: 2015/08/21 00:29
名前: ユッケ (ID: 7POxSCHv)

■感情の種■



三好 祐はその場に倒れ、その事に気付いた皆が彼のところへと駆け寄る。

「祐! どうしたの?!」

「先輩! 先輩!!」

「…息はしてるわ」

「誰だテメー! 祐に何しやがった!」

「キハハハハハハ! 彼には僕の能力で“恐怖の種”を埋め込んだのさ。そして、彼の中にある恐怖に“連鎖”して種が根を伸ばしたのさ」

帽子を深々と被り直しながら、不適な笑みを浮かべて少年は笑う。

まだ続いている花火の明かりが怪しく少年を照らした。

「きさまッ!」

「ぶッ殺す!!」

喧嘩っ早い七咲 千香と、いつの間にか入れ替わったミクが少年に殴りかかろうとするが、冷静なレイラと東雲 三代、そして御影 鈴也がそれを制す。

「気持ちは分かりますが、落ち着いてください!」

「反撃されるなんて分かっててここにいる筈よ。まだ何かあるわ」

「キヒヒヒ、埋め込んだ種はいつでも好きなタイミングで芽吹かせることが出来る。恐怖の感情が一気に爆発したら……彼、どうなるかなぁ?」

「クッ、質の悪い能力ね」

「彼はただの人質。本命は、キミだよ。レイラ」

「私に何の用なの? 祐を解放するなら聞いてあげなくもないわよ」

「おいおい、そりゃ頭が悪いんじゃねぇのか? エリート超能力者のレイラさんよぉ」

「アンタ……!」

侵入者は2人居た。

三好 祐に能力を使った少年と、暗がりから出て来たもう1人の男。

レイラはその男を知っていた……なぜなら、同じ高校の生徒だからだ。

中央能力学区、第2位の男。

「九十九 神矢(ツクモ コウヤ)だ。レイラ以外は初めましてだな」

この男、九十九 神矢は第2位であるが、それは成績上の話である。

成績だけならレイラの方が上だ。だが、彼の能力は人智を超えたまさしく“超能力”である! そう、彼は超能力者だ! だからこそ、簡単には手が出せない!

「私に何の用なの? さっさと答えなさい!」

楽しい時間を邪魔され、三好 祐を人質に取られ、次第にイライラが募っていくレイラ。

(違うな…もっとだ…)

「レイラ! その男を解放してほしければ、従うことだ。俺のところへ来い、案内はそいつにさせる」

九十九はそう言って少年を指差す。

「キヒヒ、案内するのはレイラだけだよ。人質がいる事、忘れないでね? キハハハハハハ!」

「百目鬼(ドメキ)、後は頼んだぜ」

そう言って少年百目鬼に後を任せて、九十九はビルの階段を降りていった。

「私達に出来るのは待つ事と三好さんを守る事です。こっちは任せて、銀髪ロシアンは行ってきて下さい」

いつの間にか人格が戻っているクミが、それぞれの役割を意識させるべく絶妙に口を挟んだ。

「プラチナブロンドよ。任せたわよ一乗寺、皆」

クミの意思を汲み取ったレイラが、更に一押しする。言われなくても1人で行くつもりだったが、言葉にすることに意味がある。

もう誰も「自分も行く!」とは言えない。三代が凛人を頼る事もだ。

「……分かったわ。危ないと思ったら逃げるのよ。年長の私が何も出来ないのは悔しいけど、三好君は絶対に守ってみせるわ」

「レイラ、無理すんなよ」

「レイラちゃん……」

「心配無いわ。私はエリート超能力者よ。出来ない事なんてないわ。じゃ、行ってくるわ」

そしてレイラは百目鬼の後に続いて階段を降りていった。

「……小春、行くぞ」

「はいッス!」

「ちょっと待てよ千香! 気持ちは分かるけど、祐は人質に取られてるんだぞ!」

「勘違いするな。ヤツについていくつもりはない。薄ら笑いのムカツクあのガキは恐怖を埋め込み、連鎖させたと言った。その“連鎖した恐怖”に心当たりがある。
そいつを確かめに行くだけだ。“アイツ”は何か知っている可能性がある」

「アイツって…誰だよ?」

「鷹東 キリエ。この世界で最も出逢ってはいけない人物だ」