複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ ( No.17 )
日時: 2015/02/20 14:55
名前: ユッケ (ID: WdWwmA38)

(じゃあ、そっちは任せた! 僕と三代目は別の案件を調べなきゃだから、頑張ってね〜)

(え! ちょっと…!)

一方的に切れた。別案件ってなんだよ? それに、何を調べてこんな廃ビルを捜したんだ? この中に慎也さんがいるなんて、もし脅されてるのだとしたら中には10数人の人間がいたっておかしくない。

それを僕達に任せるって……安全ってことでいいのか?

「……行こう、千年さん」

「う、うん……」

僕達はゆっくりと廃ビルに侵入する。一階には何もない。ただ広い空間が広がっていただけ。

階段を上って二階……ここも一階と同じ、空間だけが広がっていて他に部屋があるようには見えない。

三階……ゆっくりと階段を上っていく、音を立てないように…中腹あたりで唐突に、空き缶を思いっきり蹴飛ばした音がした!

「きゃあああああ!!」

千年さんが悲鳴を上げる。いきなり大きな音がしたから仕方ない、だけどマズイ! 気付かれた!

「誰だ!」

暗闇に響いたのはなんと女の子の声。でも、間違いなく慎也さんの声じゃない!

「逃げよう!」

千年さんの手を掴んで階段を走って降りる!しかし相手はすぐに追いついてきた!

「止まれ!」

「止まれと言われて止まる人はいないよ!」

そうは言ったが、気配がだんだん近付いてくる…! 距離を詰められている!

一階まで降りた。あとはこのビルの出口まで…!

「チェックメイトだっ!」

僕達を黒い風が追い越す。出口に立ちはだかる死神は、僕達を睨みつける少女だった。

少女は僕達と変わらないくらいの年齢に見えた。しかし、漆黒というのが相応しいほど黒いダメージコートと放つ空気と鋭い威圧感のある眼は、僕達を凍りつかせた。

「質問にだけ答えろ。お前達、ここで何をしている」

嘘を言っても状況が悪くなるだろう。ここは正直に答えよう。

「人捜しだよ」

「誰を捜している?」

「……」

「言えないか? なら…」

「千年 慎也。私のお兄ちゃん」

慎也さんの名前を言ったほうがいいのか、僕が迷っていると千年さんが変わりに答えてくれた。

「そうか、奴には妹がいたのか…お前を人質に取れば、奴も姿を見せるかもしれんな」

「お兄ちゃんについて何か知ってるの? どこにいるの? 教えて!」

「それは私が一番知りたいんだよ!!」

廃ビルに響く冷たい声と千年さんの小さな悲鳴。

「せめて、何で慎也さんを捜しているのかだけでも、教えてくれないかな?」

「きさま…取引ができる立場だと思っているのか?」

「教えて! お兄ちゃんは一体何に巻き込まれているの?」

「うるさいっ! お前を使って奴を炙り出す!」

漆黒の少女は突然千年さんに殴りかかってきた!

「ぐあっ!」

千年さんを庇った僕は顔面にパンチを貰った。口の中を切ったのだろう、血の味が広がる。

「三好君!」

「下がって、彼女の狙いは千年さんだよ!」

「フン…殴り返さないのか? 遠慮はいらないぞ」

「誰がそんなこと…!」

「チッ! 興が醒めた……女一人殴れんやつがここに来るとはな……これ以上は手を引け、奴は私が始末する。きさまのような臆病者なら、私が喰わなくても勝手に喰われる……」

漆黒の少女はそのまま廃ビルを出て、闇の中へと消えていった。

「大丈夫? 三好君!」

「へいきだよ、また…何も出来なかったけど」

「ううん、庇ってくれた、ありがとう」

「さぁ、ここを出よう。先輩達にも連絡しなきゃ」