複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照1500突破感謝!オリキャラ募集! ( No.174 )
日時: 2015/09/11 23:46
名前: ユッケ (ID: PGRsk35G)

レイラが超能力者だと判明してから、一週間が経過した。

その間、レイラはホテルにほぼ軟禁状態であった。

日本を観光する事も出来ずいた為、入れ替わり立ち替わり外出する両親を羨ましく思う他なかった。

お昼ごはんを母様と食べていると、父様が帰ってきた。

「おかえりなさい。どうだったの?」

「全ての手配は済ませた。後は学校だ。顔を見せておく必要がある」

「そう……じゃあ私の番ね。レイラ、お昼を食べ終えたら日本の学校へ行くわよ」

それを聞いてレイラは目を輝かせた。

普通ならありえない。異国に来て学校を見て観光などありえない。加えて世界的に有名な学校というわけでもない。

普通なら何かがおかしいと思う。しかし、レイラは胸を躍らせた。

(日本の学校! どんなところかしら? きっと素晴らしいところだわ!)

早く学校へ行きたい! 早く学校を見たい! そう思いレイラは早めにお昼ご飯を飲み込むのであった。









学校へはまたタクシーで移動した。

それだけでもレイラは嬉しい。

日本の景色を、タクシーの窓に張り付いて見る。

ホテルから見ていた景色とはまた違う!

新鮮でたまらなかった!

「うわーーー! スゴーーーイ!」

「レイラ、マナーをわきまえなさい」

「…はい、すみません。お母様」

お客が急に静かになって不安になったのか、運転手が話しかける。

「日本は初めてですか? アー、For the first time did you come to Japan?」

「…………」

「……」

オリガは完全に無視、レイラは外が気になってそれどころではない。

「あっはははは……すみません」

それ以降、目的地に着くまで運転手が喋る事は無かった。








着いた場所は日本のとある小学校。

しかし異様な学校だった。

小学校なのに大学の敷地より広いと一目でわかった。

ここは中央能力学区1番の学校! 小中高大学が1つの敷地内にあり、エスカレーター式の名門校なのだ!

小中高大学それぞれの校舎にそれぞれのグラウンド!

この異様な姿は、まるで要塞のようであった。

やがて連れて行かれたのは、小学校校舎の一等豪華な部屋だった。

「彼女がレイラちゃんですかな? レオンチェフ婦人」

その部屋のいかにも高級そうなソファチェアに座っている初老の男性が、尋ねる。

「ええ、そうですわ。公ノ義(コウノギ)校長」

「ロシアの超能力者……思い出しますな……彼の事、原初を」

「原初が学生時代、担任を務めていらっしゃったとお伺いしております」

「確かにそうでした。3年間、彼を見守っていた。そんな私が、今度は彼女を見守る事になろうとは……」

「娘には最高の超能力教育をお願い致しますわ」

「ええ、もちろんです。二度と、彼のような人間には育てない。その為に私はこの学校の校長にまで登り詰めたのですから……」

「では、私と娘はこれにて……」

「はい、お待ちしておりますよ。レイラちゃん」

レイラは日本語が分からない。

母様とこの男性が何を話していたかなど、知る由も無かった。

だが、そんな謎はすぐに解けた。

なぜ? なぜなら……レイラとオリガが帰った先がロシアでも、ホテルでもなく、先ほどの学校からそう遠くないセキュリティマンションの一室だったからだ。

「お…父様……お…母様……?」

「仕送りはする。家賃も問題は無い。お前は単身日本で暮らし、あの学校に通い、超能力者として才能を磨け」

「お父様…! 私はまだ小学生! 四年生です!」

「充分だ。お前がロシアに帰って来られるのは、日本で超能力者として活躍し、レオンチェフ再興の為に充分な業績を上げてからだ」

「……!!」

「レオンチェフの為に、日本の教育をしかと受けよ」

「お母様……私は……」

「レイラ、あなたはレオンチェフ最後の希望の星。それを胸に刻みなさい。そして帰ってきなさい。1番になって」

それだけ言うと、両親は部屋を出て行った。

日本円諭吉の束と、家具家電、部屋の鍵、娘を置いて……。

部屋のドアが閉まる。

夕闇に覆われ真っ暗な部屋の中で1人、声を殺して泣いた。

1人暮らしには広すぎる部屋。

泣いて、泣いて、泣いて、泣いて———

レイラは…………

「1番になる……っ!」

誓った————