複雑・ファジー小説
- Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照1500突破感謝!オリキャラ募集! ( No.180 )
- 日時: 2015/09/19 21:46
- 名前: ユッケ (ID: ySP8nr/s)
■ムーンライト・シャドウ■
東能力学区の裏の裏。
治安の悪い旧市街の路地裏の奥の更に奥。
彼が東能力学区に来たときは、この場所を拠点とする事が多い。
普段はこの場所に彼は居ない。
だが、だとしてもこの場所に好んで来る者はいない。
それだけ暗くて怪しい場所なのだ。
「来たか……」
吸っている煙草を地面に捨てて足で潰して火を消す。
彼は、彼女がここに来る事が分かっていた。
「ここにいたか、キリエ」
「バジリスク、予定通りだ。お前は……東雲か」
「私を知っているのね」
「お前は有名人だ。自覚した方がいい。しかし、バジリスクとつるんでいるとは思わなかったな。家出ならいい物件をご紹介しよう」
「キリエ、くだらん事を言いに来たわけではない。キサマ、何を知っている? 三好になぜあんな事を言った?」
レイラに気をつけろ……そう言ったキリエが何を知っているのか、なぜ三好にそんな事を言う必要があったのか、全てキリエの掌の上なのか……。
「この街の均衡を崩そうとしている奴らがいる。そのリーダーが俺に仲間になれと言って来た。まぁそいつの片目は今頃、どこかでネズミのご馳走になってるだろうが」
「頭の悪い奴もいたもんだな。で、その話と三好がどう繋がる?」
「今日の事は分かっていた。東雲のお嬢は予想外だが……まあ問題は無い。
そいつらを潰すのに、お前達を利用させてもらう。それだけだ」
「リーダーの目の玉をドブネズミにくれてやったんだろう? ならそのまま殺せば解決したろ?」
「俺もそう思うがね、姫の考えはどうやら違うらしい。三好 祐にかかった呪いは姫のキスで今頃解けてるさ」
「クソッ! 私達はどうやら浸かっちまってるらしい。足から頭のてっぺんまでドップリとな。人形の世界に!」
バジリスクが苛立ちを隠せず、ライターの蓋を弄りながら地面を蹴る。
東雲だけが現状を理解できずにいる。
「姫って? 人形って何? あなた達は何を知っているの?」
「知るなっ! 知ろうとするなっ! もうこれ以上関わるな! 家に戻ってシャワーを浴びてベッドの上で10を数えて眠れ!
それでいい、お前までが関わる必要はない!」
必死に、バジリスクがこんなにも必死になっている。
逆に思ってしまう……気持ちを逆撫でしてしまう。
何ガ隠サレテイルンダロウ。
「何よ! ここまで話を聞いておいて、そんな事出来るわけ……」
「すまない。ここまでの話とは、正直予想外だった。人形については知らなくていい!」
「本当にいいのか? 知りたいなら教えてやる」
影は囁き、口を挟む。
全テヲ教エテヤロウ。
其ノ代ワリ。
後ニハ、退ケナイ。
「やめろキリエ! 東雲が知る話ではない!」
「いいじゃないか、知りたがっている。俺達の姫の事を……」
「あなた達は……いったい……何を隠しているの?」
「東雲! 聞くな!」
「俺達の姫は———」
「キリエ! 見ろぉおおおおお!!!」
ライターが点火され、暗い空間に明かりが灯る。
その中に見えるのはバジリスクの眼光。
しかし、バジリスクは飛んで来た鉄パイプを胴体に喰らいうずくまってしまった。
月明かりが届いているのかも分からないような空間で、飛んでくる物を避ける事は出来ないだろう。
「千香ちゃん!!」
「少し黙っていて貰おう。次は喉だ。俺の能力ならそれが確実に出来る」
キリエが別の鉄パイプを拾って握る。
「させない!!」
東雲が氷の壁を作って千香を守ろうとする。
東雲 三代は氷を作る大能力者だ。
空気中の水分で氷を作る事が出来る。
「壁では駄目だ。守るなら、箱(シェルター)だ」
キリエは鉄パイプを無造作に投げ捨てた。
だが、鉄パイプは捨てられた方向ではなく、軌道を変えてバジリスクへと迫った!
氷の壁を、まるで認識しているように迂回して避けて、バジリスクへと……バジリスクの喉へと迫る!
それを見て一瞬の判断。
東雲はバジリスクを庇う為に覆い被さった。
目を瞑り、衝撃と痛みに備える。
しかし、いつまで経っても衝撃も痛みも襲っては来なかった。
恐る恐る目を開ける……そこには、最愛の彼が鉄パイプを捕まえて立っていた。
「三代、怪我はないか?」
東雲 凛人。彼にはもう1つ、名前がある。
「——っ!? ウルフバイト(噛み殺す狼)……!」