複雑・ファジー小説
- Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照1500突破感謝!オリキャラ募集! ( No.183 )
- 日時: 2015/09/26 03:43
- 名前: ユッケ (ID: ySP8nr/s)
「まさか凛人お兄ちゃんがいるなんて……キリエが苦戦するのも無理ないか……」
「まったく、嫌になるよ」
キリエが煙草に火を点け、煙を吐くのと同時に溜息を吐く。
「アリス! 皆はどうなったんだ! 園長先生は? 空……空は!」
凛人はアリスに聞きたい事が山程ある。
あの後どうなったのか、皆が無事なのか、園長はどこにいるのか、あの状況をどうやって脱出したのか。
「答えてくれアリス!! 頼むアリス!! アリ———」
「うるさいなぁ……」
アリスがそう呟いた。凛人の耳にもその言葉は届いた。
酷く冷たい感じの、苛立ちと無関心が刃となって突き刺さる感じ。
いや、実際斬られたのかもしれない。
凛人はキリエを殴れなかった時のように吹き飛び、胸をXの字に斬られて、血を噴き出しながら地面に転がった。
「っ!? グハッ!!!」
「凛人!!!」
三代が急いで駆け寄り守るように抱き、支える。
「だい……じょぅ……ぶ……そんなに、深く……ない」
傷は確かに浅かった。
しかし、血がドクドクと流れ凛人の体と三代の手を真っ赤に染め上げる。
「わかった! わかったから! もう喋らないで! 動かないで! 血が……こんなに!」
どうすればいいのか分からない。
止血をしようにもこんな路地裏ではまともな治療は全く出来ない。
「次は殺すからね。行きましょうキリエ」
冷たい一言を放ち、そのまま闇に消えて行く少女。
少女の後姿を誰も追えなかった。
今、自分達が生きている事が幸運なのだと感じたからだ。
その少女を追う事が出来るのは、キリエだけだ。
「バジリスク、三好 祐はもう逃れられない。この抗争に必ず巻き込まれる。せいぜい頑張る事だ。この街もろとも殺されないようにな」
キリエも消えて行く……闇の中へと……。
結局、キリエを捕らえる事は出来なかった。
バジリスクは思った。闇は、想像以上に深く大きく口を開け、ギラギラと牙が怪しく光っている。
なるようにしかならない。
運命の通りに、進む時間の通りに、三好 祐を含む“勢力”は飲み込まれていくしかないのだと。
「凛人を助けなきゃ!」
血で染まる赤い手で、凛人の着ている服を脱がし、自分の着ている服で、彼の傷口を押さえるように胴に巻き付け縛る。下着があらわになろうが関係ない。
これで止血になるかどうかは怪しいが、三代は1%にでも賭ける。
大切な人を救う為なら何でもする。
「救急車は呼んでおいた。ここまでは入れないだろうから、移動させねばならん」
千香が三代の肩に手を置く。
「ええ、ありがとう。凛人を運ぶの手伝ってくれる?」
「ああ、慎重に運ぼう」
女の子2人で凛人を運ぶのは少々手こずる。
引き締っている凛人の体は、日々の鍛錬の賜物である筋肉で見た目以上に重い。
やっとの思い、2人掛かりで凛人を支えて路地裏から脱出する。
その頃には、救急車のサイレンが聞こえて来て、赤色灯が3人の顔を照らしていた。