複雑・ファジー小説

Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照1500突破感謝!オリキャラ募集! ( No.192 )
日時: 2015/10/11 20:39
名前: ユッケ (ID: Pi8kpTE6)

■王国の騎士■




「これどうしよ?」

「ほっときなさいよ、勝手に起きて帰るわよ」

倒れている九十九 神矢と百目鬼をどうしようか途方に暮れていたが、レイラが一蹴する。

「いったい何だったんだろ?この人たち」

「……なんか組織って言ってたわ。デビルアクトとも少なからず繋がりがあるみたいだったし、関わらない方がいいわ」

「嫌な感じだ〜」

レイラの話を聞き、今日の事を考えたら嫌な気分になった。

キリエの事、デビルアクトの事、組織の事、本当に嫌な感じだ。

僕達がとんでもない事に巻き込まれている気がしてならない。

みよりの一件も裏ではキリエが糸を引いていたみたいだし、今回も何か誰かが暗躍しているのかもしれない。

「さ、帰るわよ! あーあ、花火もっと見たかったわ〜」

「また来年……だね」

帰ろうとしたその時だった。

「面白い能力やね。リーダーが気に入りそうや」

地面から……いや、影の中から人間が生えてきたのだ!

「わああああ!!」

「うわ、キモ」

「失礼な人やな! これ僕の能力ちゃうし!」

なんだか独特の雰囲気の男の人だ。

目は細くて糸目。金髪の背の高い男性だ。

「アンタも組織とかいうのの一員なわけ?」

レイラが質問を投げかけるが、その声はとてもダルそうで、疲れているのに変な奴が現れた事でイライラが蓄積している。

「僕らは“王国”。僕らはその騎士や。キミ達にもぜひ王国に入ってもろて、騎士になってほしい思うけどね」

「わけがわかんない……」

「同感ね。帰るわよ三好」

正直、これ以上関わりたくないので適当に流してレイラと一緒に退散しようと思ったその時、影からもう1人、僕らと同じくらいの年齢の男性が現れた。

「ねえ……こいつら連れてくの?」

静かな声をしたその男性は、体に見合わないブカブカの服を着て、顔をスカーフで半分隠していて鼻の頭から上しか顔が見えていない。

影の能力はこの人の能力で間違いないだろう。

連れて行くという言葉に僕とレイラが身構える。

「ええよ、ええよ、報告だけにしとこ。めんどくさいし」

「じゃあ、回収だけにする」

そう言うと影の男は能力を発動し、倒れている九十九 神矢と百目鬼が影の中に沈んでいった。

「なんなの……こいつら」

「油断しない方がいいかも」

1人は影に人を飲み込み、もう1人は能力すら分からない。

いくら僕達が超能力者だとしても分が悪い。

「そんな構えんでもええって。僕ら能力者には優しいんよ?」

糸目の男がケラケラと笑いながら言う。

だが信用ならないのが事実だ。

今の今まで襲われていたのは僕達だったのだから。

「2番様は私達を本気で潰しにきてたけど?」

「ああ〜彼はアンタに用があるだけやからな〜。変なんに好かれて気の毒やね」

「こいつ潰していい? 人をイラつかせる才能があるわよ」

「おおお抑えて抑えて!」

今にもキレそうなレイラをなだめる。

これ以上はもう勘弁して欲しい。

「帰ろう……」

影の男が糸目に言う。

「せやね。用はもう済んだし。でもキミらにも僕らのリーダーの素晴らしさ、解ってほしいな〜」

「意味がわかんないわよ」

「僕らのリーダーはな、能力者が優位の世界を作ろうとしてんのや。キミらも経験あるんとちゃう? 迫害とか親に捨てられたとか……なあ?」

糸目が薄く笑う。

全て知っていて言っているのだと感じた。

僕は知っている。迫害も、親に捨てられた人も、知っている。

「うるさいわよ」

レイラが一歩踏み出す。

糸目の言葉を弾き返すように強く、一歩。

「私は私を信仰する! 神も仏も奇跡も信じない。誰の下にもくだらない! 私が神! 私が奇跡! 私は私を信仰するわ!」